物件が建つ山の手の高級住宅街 “市谷砂土原” の魅力とは?

2022.09.09

1987年に建てられた、総戸数57戸、地下2階付き地上8階建てのマンションクレストコート砂土原。市ヶ谷や神楽坂からほど近い “市谷砂土原” という閑静な住宅地にあるこの建物は、かつては外国人向けの高級賃貸マンションとして、いまは高級分譲レジデンスとして存在しています。

重厚感と気品漂うこの建物の一部屋を、現在BEARS社が鋭意リノベーション中。ヴィンテージ感たっぷりのこの物件が、いったいどのように変化していくのか。その様子を全4回に渡ってレポート。

1回目は、マンションが建つ “市谷砂土原エリア” の魅力を解説します。江戸から続く東京の粋と、高級住宅地ならではの穏やかな雰囲気、そして外国文化が共存する街の空気を感じてください。


最寄りは「市ヶ谷」駅

新宿区の東側に位置し、防衛省の裏手にあたる “市谷砂土原” 。最寄り駅であるJR・地下鉄「市ヶ谷」近辺は、オフィスビルや都市型の大学キャンパスが多く、ビジネスマンや学生が多数闊歩。“市ヶ谷” という地名の由来については、かつてこのあたりに市が多く立っていたから、あるいは坂や谷が多い山手台地の中の “第一の谷(一谷)” があったから……など、諸説あるそう。

駅の目の前には外濠と広い空が広がり、開放的な雰囲気が気持ちいい!  ちなみに東京メトロの「市ヶ谷」駅は新宿区にありますが、JRと都営地下鉄の駅は千代田区に位置しています。駅を出て外堀を渡り、車が行き交う外濠通りへ。道沿いを左にしばらく進むと靖国通りとの交差点に差し掛かり、そのまま靖国通りを進むと、かつての尾張徳川家状屋敷跡にそびえ立つ、日本の中央省庁のひとつ、「防衛省」のビルが見えてきます。

上・法政大学や日本大学、中央大学などのキャンパスが入った高層ビルや、オフィスビルが多数。またお堀にある釣り堀「市ヶ谷フィッシングセンター」は、都会のオアシス的な存在として愛されています。/下・明治7年に陸軍士官学校が置かれ、戦中は陸軍省に。戦後、自衛隊の駐屯地を経て2000年に防衛庁(当時)が六本木から移転し、現在は「防衛省」に。三島由紀夫ら楯の会の事件が起きたのはこの場所。

数多くの坂、その由来を知れば街をもっと好きになる

現在リノベーション中の物件クレストコート砂土原が位置するのは、外濠通りの西側にある高台の住宅地。かつては “牛込区” と呼ばれ、砂土原町を筆頭に昔ながらの町名が今も多く残っているエリアです。

車も人も多い大通りを曲がり歩みをすすめると、先程までの喧騒を感じさせない、心地よい静寂に包まれます。このあたりは、江戸時代には武家屋敷が建ち並び、その後明治時代より富裕層が邸宅を建て、いわゆる “山の手の高級住宅街” として長い間発展してきたエリア。短めのやや急な坂がいくつも存在するこの街は “坂町” と呼ばれることもあるそうで、その名の通り江戸を思わせる名称を持つ坂がたくさんあるのも、歴史が深い街ならでは。名標が立てられているものも多く、散歩がてら由来を知ることができるのも楽しい。

左上・“雅楽坂” とも呼ばれ、 “善知鳥(うとう)” という鳥のくちばしに似ていることからついた名前、という説も。/右上・その名の通り鰻のようにうねうねと曲がりくねった「鰻坂」。道幅がとても狭いことにも驚かされます。/左下・江戸時代に近くで操り浄瑠璃が行われたため、あるいはこの一体で江戸時代の大仇討ちのひとつである “浄瑠璃の仇討ち” が行われたことが由来とも。「クレストコート砂土原」が面しているのはこの坂。/右下・石壁が印象的な、20段程度の短い石段の坂道。すれ違うとき、お互いの袖が擦り合うほど狭い、ということでこの名前がついたとか。

周辺の気になる建築をご紹介

低層のマンションや邸宅が並ぶこのエリアは、歴史を感じさせる坂や町名、また建物がある一方で、外国の文化を発信する施設が共存するユニークさも合わせ持ちます。

逢坂を登り途中を左折すると現れるのは、ベンガラ色の壁が印象的な豪華な和風建築「朝霞荘」。手掛けたのは建築家の黒川紀章氏で、安田火災の迎賓館として1987年に竣工。現在は損保ジャパンが所有する更生施設として使われているそうです。また、明治37年から翌年の3月まで作家の石川啄木が下宿していた場所としても知られており、近代文学に関心がある人にとっては興味深いスポットかもしれません。

また逢坂の途中には、日本とフランスをつなぐ文化交流施設である「アンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)」が。コルビュジェに師事した建築家・坂倉準三氏が設計した学び舎は、日本とフランスの文化を融合させた名建築として知られています。2021年、建築家の藤本壮介氏が手掛けた新棟が完成し、旧棟の改装も大詰め。完成したら、ぜひ訪れてみたい場所のひとつです。

左上・「朝霞荘」の外壁のベンガラ色は土から取れる成分を使っており、紅柄、弁柄とも書くのだとか。/右上・「アンスティチュ・フランセ東京」の中庭。向かって右側に新棟があり、左側に旧棟が。/下・坂道に並ぶのは気品のある邸宅。建て込み感の少ない悠然とした街並みが印象的。

歴史や文化が交差する街「神楽坂」

さて最後は “牛込エリア” でもっとも賑わいがあると言っても過言ではない「神楽坂商店街」近辺を散策。徳川家康の江戸入府前から街が形成されていたと言われており、江戸時代に繁華街や花街に発展。現在は、前述の「アンスティチュ・フランセ・東京」をはじめ、フランス関係機関が多いこともあって “リトルパリ” と呼ばれることが多く、フランス人をはじめ外国人が多く行き交うのも特徴のひとつ。

メイン通りである「神楽坂通り」から脇道を1本入れば、細い石畳の路地に料亭や旅館などが並ぶ、神楽坂の別の顔が。また新しいショップやカフェも多数オープン。脈々と受け継がれてきた伝統と現代、そして外国のカルチャーが交差する神楽坂は、いくら散歩をしても飽きることがない魅力的な街です。

左上・メインストリートである「神楽坂通り」。午前中は “坂上→坂下” 、午後は “坂上←坂下” と、一方通行が逆転する珍しい道路。/右上・かつての新潮社の書庫をリノベーションし、2019年にオープンしたライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO in la kagu」。上質な佇まいを感じる暮らしの提案がテーマで、お米や食品、調理器具や器が揃う。飲食店も併設。/左下・路地に入るとまったく別の街のよう。小さなカフェなどもあるので、散策の途中にぜひ寄りたい。/右下・思わず覗いてみたくなる、そんな佇まいの建物が多数。隠れ家的な飲食店やバーの中から、自分だけのお気に入りを探すのも楽しい。

ということで、周辺散策はこれにて終了。次回はいよいよ、クレストコート砂土原のレジデンスの内側、そしてリノベーション前の室内に潜入します。お楽しみに。

Text by Yuki Kono
Edit by Ayako Isetani
Photos by Fumiko Nakayama
         

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