独創的な技術とデザインで世界が注目する 「カッテラン・イタリア」
自宅で過ごす時間が増えるとともに、重要性が再認識されているダイニングテーブル。中でも斬新なデザインで世界的に注目を集めているのが「cattelan italia(カッテラン イタリア)」です。その人気の理由について、前後編の2回に渡ってお伝えしていきます。
国際的なインテリアの祭典「ミラノ・サローネ」の広い会場の中で、ひときわ目を惹くダイニングテーブルがありました。カッテラン・イタリアの「Skorpio(スコーピオ)」です。
楕円形のテーブルトップに、サソリからインスパイアされたという足は、一度見たら忘れることができないインパクトのあるデザイン。発表以来10年の時を経て、今なお世界的なベストセラーというのもうなずけます。
では、このテーブルはどのように誕生したのでしょうか。その背景について、日本でカッテラン・イタリアを展開する株式会社モーリコーポレーション家具事業部マネージャー、大谷浩之さんに伺いました。
創立45周年を迎える家具ブランド
――創業の経緯を教えていただけますか。
大谷浩之さん(以下、大谷):カッテランは1979年、イタリア・ベネト州のヴィチェンツァという街で設立されました。創業者はジョルジオとシルビアのカッテラン夫妻です。もともとはスチール加工の家内工業でした。その技術を家具作りに応用したのが始まりです。
――現在はイタリアを代表する家具ブランドとしての地位を確立していますね。
大谷:歴史的には40年以上経っており、淘汰の激しいイタリア家具業界の中で、評価の安定した数少ないブランドの1つと言えると思います。現在は2代目のパオロ・カッテランが社長を務め、世界140カ国以上の地域で展開しています。
――ブランドの基盤はどのように築かれたのでしょうか。
大谷:特徴の1つとして “自社デザイン” が挙げられます。今でこそ外部のデザイナーを起用するようになりましたが、創業からしばらくはジョルジオやパオロが自らデザインを手がけていました。
大理石からセラミックトップへ
――初期の代表作にはどんなプロダクトがありますか。
大谷:1991年に登場したガラストップのテーブル「Valentino(バレンチノ)」シリーズは、現在も継続して販売されているロングセラーです。
大谷:「Valentino」の足に使われている大理石は、カッテランを象徴する素材のひとつです。以前はスチールの足に大理石のトップを乗せてダイニングテーブルを作っていたんです。しかし次第に大理石が世界的に品薄になり、価格が高騰していく中で、セラミック製のトップへと変わって行きました。
――いまやセラミックトップのテーブルは、カッテランの代名詞にもなっていますね。その中でもアイコン的なデザインといえば、やはり「Skorpio」でしょうか。
大谷:そうですね。約10年前に誕生して以来、現在も1番人気のある商品です。現在の社長である、パオロ・カッテランがデザインを手がけました。
――優れた経営者であると同時に、デザイナーとしてのセンスも素晴らしいですね。
大谷:サソリからインスパイアされたテーブルを1つだけ特注で作るのであればまだしも、世界中に輸出できるようなプロパー商品に作り上げると言う発想自体が他にはないものです。だからこそ、インテリアのトレンドが移り変わっていく中で、今なおベストセラーであり続けているのだと思います。
――今後、さらにロングセラーになっていく可能性もありますよね。
大谷:足のデザインは変えずに、テーブルトップのセラミックは毎年新しい柄を発表しています。そのような形で人気が継続していく商品ではあると思います。
時代を反映した柔らかいデザイン
大谷:一昨年(2022年)、脚の色に “白” が発表されました。サスティナビリティを意識した自然な色味は、サローネ全体のトレンドカラーでもあります。
――すごく柔らかい印象ですね。
大谷:脚が黒だとエッジーなモダンスタイルになりますが、白くすることによってナチュラル感が出て、インテリアのテイストが大きく変ったという印象です。
――コロナ禍をきっかけに家で過ごす時間が増えたので、丸みや柔らかさ、温かみを重要視しているというお話をいろいろなところで伺います。
大谷:コロナ禍の傾向として顕著だったのが、ダイニングテーブルが見直されたことでした。それまでは食事をする用途だけだったのが、リモートワークが一般化する中で、作業場とする方も増えました。
そのような背景から大きめのダイニングテーブルが求められ、さらに傷のつきにくいセラミックのテーブルトップの需要が飛躍的に増えたと思います。
スチールの多彩な表情に驚かされる
――ダイニングテーブルの他にはどのようなアイテムを展開されていますか。
大谷:カッテランが、ここ何年間でスタイルを変えていったきっかけになった「Rhonda(ロンダ)」というアーム付きの椅子があります。それまでのダイニングチェアは食事をするためだけのシンプルな椅子が多かったのですが、より寛ぎやおもてなしを意識してデザインされています。
大谷:「Rhonda」にはカッテランの特徴であるスチール加工の技術が存分に活かされています。頑丈なスチールだからこそ可能な細い足と、ボリュームのある座面とのコントラストがデザイン的にも非常に優れている商品です。
――カッテランの家具はスチールの造形に目を惹かれるデザインが豊富ですね。
大谷:ガラスを扱う技術に長けた地域はイタリア国内でもベネツィアやムラノなどがあるのですが、スチールを造形する技術は他にはなかなかないと思います。
大谷:ダイニングテーブルに話は戻りますが、今年発表された「Papel(パペル)」というシリーズがあります。パペルは英語で言うと “ペーパー” ですが、まさに紙が風でなびいたかのような脚のデザインなんですね。びっくりしました。これをスチールで造ってしまうのかと。
大谷:カッテランの天板の多くは “サグ” と呼ばれるセンターに膨らみのある樽型です。その柔らかい曲線に対して足はストレートだったり、クロスしたり。コントラストの面白さがどのテーブルにも見受けられます。それが「Skorpio」にも「Spyder」にも、惜しみなく表現されていると思います。
デザイン哲学は挑戦し続けること
――ブランド独自のこだわりやデザイン哲学についてはいかがでしょうか。
大谷: “Made In Italy” にこだわっているという点は大きな特徴です。イタリア国内、しかも工場に近いところでのサプライヤーを大事にしています。『歴史に培われた技術と、ファミリー企業で上質な製品を作り上げる』そこがこだわりだと思います。
大谷:デザイン哲学は『常に新しいことに挑戦している』ことだと思います。他者にないデザインを作り上げるために挑戦する姿勢が創業時からずっと続いている。そこがカッテランの真髄だと思います。
家族経営ならではの強い結びつきと、地元のサプライヤーとの連携から生まれる独創的なものづくり。今年(2024年)、カッテラン初のフラッグシップショップをミラノにオープンしたことからもブランドの勢いを感じることができます。
次回の後編では東京ショールームを訪れ、実際にカッテランの家具をインテリアに取り入れる楽しみ方について、詳しくご紹介していきます。どうぞご期待ください。
大谷 浩之 Hiroyuki Otani
2018年株式会社モーリコーポレーション入社。 cattelan italia JAPANの法人セールスを経て、現在は全店のセールスマネージャーとして従事する。 さらにプロモーションやマーケティングの取り組みを行っている