商業と自然、そして人の心が響き合う
「二子玉川」の豊かな暮らし

2025.10.10
住みたい街として常に名前があがり、子育てに優しい街としても人気を集める「二子玉川」。駅前には「二子玉川ライズ」や「玉川高島屋S.C.(ショッピングセンター)」を筆頭に商業施設が立ち並び、休日には区内外から多くの人が訪れます。一方で、少し足を延ばせば多摩川や国分寺崖線の緑豊かな風景に包まれる静かな住宅地が広がっており、都市の利便性と自然の潤いを兼ね備えているのが大きな魅力です。

今回はそんな地域とともに長年保育を行う「ロハスキッズ・センター クローバー」を運営されている、中田 綾さんにインタビュー。二子玉川に息づく自然や、地域に広がる温かさの魅力を深掘りします。
二子玉川駅周辺は、再開発により近代的で洗練された景観が広がっている。

今の街を形作った「玉川髙島屋S.C.」と「二子玉川ライズ」

そもそも「二子玉川」という呼び名は、多摩川を挟んで向かい合っていた神奈川側の二子村と、東京側の玉川村の地名を合わせたもの。また江戸時代から近年にかけて2つの村を結んでいた渡し船「二子の渡し」に由来するという説もあります。当時からこの渡し場の周囲には茶屋や食事処、宿が立ち並び、多くの人で賑わっていたのだそう。

1907年に「玉川電気鉄道」が開通すると川沿いに遊園地や料亭が建ち、郊外にある憩いの地として繁栄。遊園地はのちに「二子玉川園」として再整備され、レクリエーション拠点として親しまれます。そして1969年に「玉川高島屋S.C.」が誕生し、洗練された都市の顔を持つ街へと成長しました。

「玉川高島屋S.C.」。商店街とともに駅西側の賑わいを支えてきた。

時を経て、2000年には大規模な再開発計画が始動。2015年には「二子玉川ライズ」が完成し、ショッピングセンターや映画館、オフィス、タワーマンションなどが一体となった複合施設として、街の新しい顔を形作りました。こうした段階的な開発を経て、二子玉川は都市と自然が共存する街へと変貌を遂げたのです。

「二子玉川ライズ」。中央の広場では頻繁にイベントが行われており、休日となると多くの人々で賑わう。

豊かな清流が繋ぐ、地域の心

今回お話を伺ったのは、多摩川沿いに建つ認可外保育園「ロハスキッズ・センター クローバー」の園長・中田 綾さん。この地で20年以上に渡って、地域との結びつきを大切にした保育を実践されています。

「ロハスキッズ・センター クローバー」(Photo by Toshinari Soga(studio BAUHAUS))

——二子玉川といえばやはり思い浮かぶのが多摩川です。地元の皆さんにとって、この川はどのような存在なのでしょうか。

中田綾さん(以下、中田):皆さんに共通しているのは、やはり “多摩川への愛” ですよね。昔から住んでいる方にとって多摩川はただの川ではなく、日常に深く溶け込んだ存在なんだと思います。

最近では川を中心に人と人が繋がれるような取り組みが活発に行われていて、地元の団体によるイベントやワークショップがよく開催されています。そういった意味で多摩川は一人ひとりの生活に寄り添うだけでなく、人々が触れ合うきっかけをつくり、地域全体を結びつけてくれる存在でもありますね。

休日の多摩川沿い。散歩やサイクリングなど、訪れる人々の過ごし方はさまざま。

中田さんがおっしゃる通り、エリアマネジメントを担う地元団体が主催した「Mizube Fun Base」というイベントでは、清掃活動や子ども向け観察会を実施。また2018年から始まった地元の有志が中心となって開催している水辺フェス「TAMAGAWA BREW」では、多摩川沿いで飲食やワークショップを楽しめる場を提供しています。

再開発を経ても変わらない、街の温もり

——再開発によって駅周辺は大きく様変わりしたと思うのですが、それによって住む人や暮らしに何か変化はありましたか。

中田:たしかに駅前はすっかり近代的になりましたが、街の本質的なところは全然変わりませんでしたね。開発を手掛ける事業者が住民を大切にしているので、 “二子玉川” というブランドが守られているように感じます。例えば、保育園から少し歩いたところにある「二子玉川公園」は、住民参加型で整備されたものなんですよ。

昼下がりの「二子玉川公園」。カフェや無料の休憩所など、園内に一息つけるスポットが充実しているのも魅力。

中田:それから駅の反対側に「二子玉川商店街」があるんですが、今も昔も変わらず元気なんです。昔ながらのお店と新しいお店がうまい具合に溶け込んでいて、年齢層もさまざまなんですが、一丸となって街を盛り上げています。

多くの人で賑わう「二子玉川商店街」(上)/老舗の「西河製菓店」(左下)や比較的新しい「おにぎり・とん汁 山太郎」(右下)など多彩なお店が軒を連ねる

子育て世代に寄り添う街

——二子玉川は『子育てがしやすい街』としても注目されていますよね。

中田:実際、子育て世代にとても優しい街だと思います。保育士として感じるのはお子さま連れでも心地よく過ごせる街づくりがされているということです。大体どのレストランでも子どもと一緒に入りやすいですし、昔から「玉川高島屋S.C.」の屋上は子どもが遊べるようになっていますよね。

中田:子どもが笑ったり泣いたりする姿を自然に受け止めてくれるまなざしがあるからこそ、そこで育つ子どもたちは “地域の中で守られている” と実感できるのではないでしょうか。

二子玉川ライズ内にあるレストラン「100本のスプーン」。入り口前に多数のベビーカーが並ぶのはもはや日常。

心を震わせる瞬間が日常にある “豊かさ”

——中田さんのおすすめスポットを教えてください。

中田:やはり多摩川で感じる自然が一番ですね。特に夕焼けがすごくきれいなんですよ。暮らしの中で季節の移ろいを感じたり、夕暮れどきに心を寄せたりする場面が当たり前にあるのが、この街の何よりの魅力だと思います。

——最後に、中田さんにとって “豊かさ” を実感する瞬間とは、どのようなときでしょうか。

中田:風を浴びて心地いいと感じたり、夕焼けを見て感動したりと、ふと自分が出会ったものに気持ちを乗せられる瞬間は豊かだなと感じます。それが子どもたちにも伝わって、一緒に夕焼けを眺めていて「きれいだね」と共感できたときは『保育をしていて良かった』と思いますね。

息を呑むほど美しい、多摩川に落ちていく夕日。

多摩川とともに歩んできた歴史をもち、再開発で都会的な表情を手に入れた二子玉川。便利さや華やかさの先にあるのは、川辺で交わされる何気ない会話や、子どもたちと分かち合う夕日の美しさでした。地域の方々が持つ温かさや、人と人で紡ぐ充実した時間の積み重ねこそが、この街の魅力を形づくっています。

Text by Aiko Kuwano
Edit by Sotaro Oka
DATA

中田 綾 AYA NAKATA

ロハスキッズ・センター クローバー園長
2004年に二子玉川で「ロハスキッズ・センター クローバー」を立ち上げる。地域との繋がりを大切にし、アート教育や食育を取り入れながら、子どもたちの探究心と人間力を育む場づくりを続けている。

ロハスキッズ・センター クローバー

二子玉川の多摩川沿いに位置し、2004年に開園した認可外保育園。自然とアートを柱に、子どもたちの感性や探究心を育む保育を実践している。子どもとアーティストが描いた壁画があり、外遊びや有機・オーガニック給食にもこだわる。地域に開かれた文化拠点として、保護者や地域住民との交流も大切にしている。

〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-3-2
TEL:03-5797-5420
lohaskidscenter-clover.com

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