イタリアのものづくりの真髄に触れる旅~ミラノ・サローネ2024訪問記・後編

2024.06.21

「ミラノ・サローネ2024」訪問レポートをお伝えした前編に続き、後編は、サローネ出展企業である「Molteni & C(モルテーニ)」と「Arclinea(アルクリニア)」によるファクトリーツアーのレポートをお届けします。サローネ会場から離れ、ミラノを起点にバスに揺られて郊外&地方へ。BEARS編集部が、イタリア最新のものづくりの現場を見学してきました!

ミラノから足を延ばして、家具工場を見学

Molteni & C

 「Molteni & C(モルテーニ)」は1934年にミラノ近郊の町・ジュッサーノで創業。現在は機能的なキッチン、システム収納からオフィス家具まで幅広く手掛ける総合インテリアブランドとして知られています。近年はパトリシア・ウルキオラ、ロドルフォ・ドルドーニといった世界的な建築家・デザイナーを起用して、デザイン性の高いモダンな家具を数多く展開しています。

 BEARS編集部は、ツアー参加者と共に大型バスに乗ってジュッサーノへ出発。ジュッサーノはイタリア有数の高級家具の産地で、モルテーニのほかにも多くの家具メーカーが工場を構えています。

 ミラノから小一時間ほどで到着し、最初にミュージアムとショールームを見学しました。

 工場内は撮影NGのため、写真をお見せすることはできませんが、大変興味深いものでした。OA化が非常に進んでいる一方で、人の手と目でしかできないことも。

たとえば、皮革の傷チェックは透明なペンを使って傷のない部分をマーキングすると、その形がPCに入力され、自動的にレイアウトされます。それを一度人の目で修正した後、機械によって裁断されるという仕組みです。そのほか突板のレイアウトなど、センスが必要とされる部分は人によって行われます。

塗装や接着は無害な薬剤が使用されているとのことで、塗装ブースをはじめとする工場内では全員がマスクなしで作業していました。

機械化できる部分は最新の設備を導入し速く正確に作業し、人にしかできない部分はベテランの職人さんに任せるという、その棲み分けによって、素晴らしい家具が作られていることを実感した工場見学の1日でした。

世界遺産の町・ヴィチェンツァの石材工場&扉製作工場を見学

Arclinea

 次の日は、キッチン家具メーカーの「Arclinea(アルクリネア)」の工場へ。アルクリネアのキッチンは“世界最高峰”とも呼ばれ、30年以上にわたって世界的な建築家、デザイナーのアントニオ・チッテリオがデザインを担当しています。

工場はミラノから200キロほど離れたイタリア北東部・ヴェネト州のヴィチェンツァにあります。イタリア国内でも屈指の美しさを誇るヴィチェンツァ市内には、16世紀イタリアの偉大な建築家、アンドレーア・パッラーディオによる荘厳な建築物が数多く残され、“パッラーディオの町”としてその名を知られています。

はじめに、巨大な石材工場に立ち寄りました。ヴィチェンツァ近郊はアントニオ・チッテリオも愛用するライムストーンの産地です。

次に、石材工場を訪ねた後、主催者の計らいで近隣のワイナリーに寄り道。

ワインをいただきゆったり過ごしてから、アルクリネアの扉製作工場に到着しました。ここではパーツの製作から組み立て、出荷までを行っています。思ったより小規模で手作業が多い印象でした。扉製作では水溶性の接着剤でまさに縫い合わせるように繋げた突板をプレスすると、液が溶けて扉の形状に。その後細部の加工をしていきます。体に悪いものを使っていないとのことで、ここでも塗装の工程で職員さんがマスクなしで作業していました。工場の職人さんたちは、何十年もここで働いているベテラン揃い。アットホームな雰囲気の中、皆さんのイキイキとした表情が印象的でした。

ミラノ・サローネ見学に加えて、ファクトリーツアーにも参加した今回の旅。1つ1つの家具デザインの素晴らしさだけでなく、各ブランドの見せ方へのこだわり、見学者へのホスピタリティー、サステナブルなものづくり、働く人を大切にする姿勢など様々なことを間近で感じることができました。

また、どのメーカーも、未来を見据えたものづくりを実践しており、“次の世代へどう繋げてつなげていくか”ということを模索しているようでした。イタリア各社の姿勢に学ぶことが多く、実りある旅となりました。BEARSは“豊かな暮らしを実現する空間づくり”という価値観を大切に、さらに進化して参ります。

Text by Sayoko Murakushi
Edit by Saori Maekawa
         

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