独自の世界観や美学を持つ、
“こころに響く照明” が集結「スタジオ ノイ」
安全で快適に暮らす上での必須アイテムであり、部屋づくりの要ともいえる「照明」。今回は世界中から厳選した4つの照明ブランドを日本で展開している「Studio NOI(スタジオノイ)」に、各ブランドの特徴やショールームのこだわりなどを伺いました。
日本にデザイン照明を広めたパイオニア
1878年に東京大学工学部のホールで初めて電球が灯されて以降、照明は私たちの暮らしに不可欠な存在となりました。一昔前までは “明るさを確保するための道具” という機能性が重視されてきましたが、近年は空間を彩るアートピースとして、美しさやデザインにこだわる人が増えています。

今年で創業40周年を迎える「Studio NOI(スタジオノイ)」は、独自の世界観や美学を持つ4つのブランドを展開する、いわば照明界のセレクトショップのよう。さらには日本にデザイン照明を広めたパイオニアでもあります。
“こころに響く照明” を日本に広めたい
今回お話を伺ったのは、スタジオノイのシニアマネージャーである奥田智美さん。インテリアコーディネーターとしても活躍し、柔らかい雰囲気の奥に照明に対する情熱を秘めた方です。

――スタジオノイが照明に特化したきっかけを教えてください。
奥田智美さん(以下、奥田):創業者がデザイナーのインゴ・マウラーと知り合いだったことがきっかけで会社をスタートさせたと聞いています。その後さまざまなブランドともお付き合いが始まったのですが、「BOCCI(ボッチ)」は創業者の “インスピレーション” で取り扱うようになりました。
実は照明において “インスピレーション” は重要な要素で、例えばソファやダイニングテーブルは、使いやすさとか座り心地といった実用性をある程度重視しますよね。でも私たちが扱う照明は、どちらかというと感覚的な視点で選んでいただくことが多いアイテム。だからこそ、私たちもブランドをセレクトする際にはインスピレーションも大切にしているのです。
――ショールームを拝見していると、スタジオノイはアート性の高い照明が多いと感じます。
奥田:確かに扱っているブランドは、遊び心や個性、アート性があるものが多いです。弊社のコンセプトは、 “こころに響く照明” 。ただ美しいだけでなく、見ただけで記憶に残ったり、実際に取り入れた情景を想像するだけでワクワクしたり。そんな感覚を大切にしています。それを実現できるのは、各ブランドのデザイナーや職人たちが妥協を許さず、本気で “光のプロダクト” に向き合っているからこそです。
どのブランドも人の手でつくられているため温もりがあり、それぞれの美学やこだわりと調和しています。だからこそ量産された照明とは一線を画す、唯一無二の存在感やアート性があるのです。
――取り扱っている4つのブランドの特徴を教えてください。

奥田:スタジオノイでは、「INGO MAURER(インゴ・マウラ―)」・「BOCCI(ボッチ)」・「OLUCE(オルーチェ)」・「bomma(ボマ)」を取り扱っています。どれも私たちにとって思い入れの深いブランドです。
1. アートとイノベーションを融合。デザイン照明界を牽引する「インゴ・マウラー」

奥田:インゴ・マウラ―はドイツ、ミュンヘンで創業したブランドです。創始者であるインゴ・マウラー氏は “光の詩人” の異名を持つ照明デザインの巨匠。彼の作品は情感たっぷりでアーティスティック、かつミニマルで機能的。時にはユーモラスなデザインで、私たちを魅了し続けています。

奥田:残念ながらインゴ・マウラ―氏は2019年に逝去されましたが、現在も彼のスピリットを受け継ぐデザインチームが新作を発表し続けています。彼が長年大切にしてきた、職人の手作業による細部までこだわったモノづくりも継承されています。


奥田:実はかつて私がインテリアを学んでいたとき、最初に知ったブランドがインゴ・マウラーでした。おそらく日本に上陸したばかりの頃で、当時は雑誌にたくさん掲載されていたんです。照明の域を超えた “ポエティックな光の世界” に衝撃を受けたことを、昨日のことのように思い出します。
2. ガラスの可能性を広げる「ボッチ」のモノづくり

奥田:ボッチは2005年、カナダ・バンクーバーで設立されました。建築家でもあり、デザイナーとしても活躍するオマー・アーベル氏ならではの独創的なアイディアと、職人の巧みな手仕事で他に類を見ないデザインが魅力です。ちなみにボッチも私が若かりし頃、雑誌の広告を見て衝撃を受けたブランドでもあります。その後スタジオノイでインゴ・マウラーとボッチに再会して、一緒にお仕事させていただいているのは個人的にとても感慨深いです。

奥田:ボッチは独創的なアイディアと巧みな手仕事技において、限りない挑戦を続ける、ほかに類を見ないブランドです。実験と探究を繰り返しながらさまざまなシリーズを発表し、斬新かつアーティスティックな作品を生み出しています。職人のハンドメイドがゆえに一つひとつ表情も異なり、有機的で温かみのある光は唯一無二です。





奥田:ボッチはすごくワクワクさせてくれるブランドです。洋服を選ぶときの “楽しい” という感覚に似ているかもしれません。例えば「28」シリーズは、空間や気分に合わせてシェードの色や数を自在に変えられます。また羽根のような形状のガラスが内側で何枚も重なった「118」シリーズは、一灯だけをレストルームやダイニングなどに設置しても魅力的です。空間によってアレンジができ、素材や色の組み合わせなども自由に楽しんでいただけます。

3. デザインの幅広さは業界随一。独自の美学が光るイタリアの老舗「オルーチェ」

奥田:イタリアで現存する照明ブランドで最も古く、1945年に設立しました。イタリア国内で製造している設立50年以上の歴史的価値のあるブランドのみが登録申請できる「Historic Brands of National Interest」にも2023年に登録された名門です。さまざまなデザイナーが携わり、デザイン史に残る傑作を数多く輩出してきました。中でも60〜70年代にかけて活躍したヴィコ・マジストレッティやジョエ・コロンボは、イタリアのデザイン界を牽引してきたデザイナーです。また最近は学生と共同制作したり、若手デザイナーを起用したり、老舗でありながら柔軟な姿勢を持ち合わせているのも魅力ですね。

奥田:オルーチェは歴史があるだけでなく、ブランドとしての美学をしっかり持っています。1つの照明だけで空間が成立するような華やかさはないかもしれませんが、逆にその空間で美しく静かに、そして凛と佇むプロダクトを得意としており、“美学” という言葉がぴったりのブランドです。装飾は極限まで削ぎ落とされ、上品に佇むオブジェのようだと感じています。

奥田:美学がしっかりあるからこそアイコニックな照明も数多く存在します。「Colombo Acrilica(コロンボ・アクリリカ)」や「Coupé(クーペ)」、「Spider(スパイダー)」あたりがそうですね。私が特にすごいと思うのは、1962年に発表されたジョエ・コロンボによる「Colombo Acrilica」。基底部に入っている光源がアクリル樹脂に伝わって、アクリルの断面から光が漏れる仕組みになっています。アクリルの特性を最大限に活かした大胆な発想が高く評価され、さまざまな賞を獲得しています。

4. 有名ブランドも実力を認める「ボマ」。チェコ伝統のクリスタルガラスをモダンに昇華

奥田:最後にご紹介するボマは、チェコ共和国で2012年に創立した新進気鋭の照明ブランドです。ボマは1日に9トンもの高品質なクリスタルガラスを使い、照明だけでなく世界的に有名なラグジュアリーブランドの什器も手がけています。

奥田:特筆すべきは、パーツの細部まで緻密にデザインされていること。ハンドメイドのクリスタルガラスはチェコ共和国の伝統工芸でもあり、ボマはその卓越した技術をより高めながら、独自の発想やアート性と融合させています。伝統的な手吹き製法で一点ずつ仕上げた作品は、世界最高品質といわれるのも納得の美しさです。

奥田:ボマには今までにないデザインも数多く、「Flare(フレア)」はまさにそうですね。伝統的なガラス製法技術へのオマージュとして生まれた作品で、クリスタルガラスに入れられた螺旋模様が幻想的な光を放つんです。下から見上げるのもすごく綺麗で、また違った表情が楽しめます。またガラスの形状は3種類(ストレートと異なる角度で曲げられた2種類)あり、それらを組み合わせることでさまざまな光のラインを無限にアレンジできるのも魅力です。

――それぞれのブランドによって異なる個性やこだわりがあって面白いですね。ちなみに取り扱うブランドを増やす予定はあるのでしょうか。
奥田:増やさないと決めているわけではありませんが、次々と増やしていくことはしないです。ショールームに来てくださる方に各ブランドと作品の魅力をきちんとお伝えしたいので、ブランド側とのコミュニケーションも大切です。技術的なことはもちろん、感覚的なニュアンスも含めて密に意思疎通がとれる関係性を繋いでいけること、かつ “こころにひびく照明” と出会えたらという感じでしょうか。
ブランドの魅力を熱く語る奥田さんからは、それぞれに対する愛も感じました。次回の後編ではスタジオノイのショールームにフォーカス。さらに住宅と照明の関係性や、効果的な照明の取り入れ方など、奥田さんの実体験もふまえたお話をお届けします。

Studio NOI
1986年に創業し、2019年に恵比寿から南青山にショールーム移転。現在は「ボッチ」、「オルーチェ」、「ボマ」の日本総代理店、「インゴ・マウラー」のプレミアム代理店を務めている。 ※ショールーム:ご予約制(土日祝日休み) 東京都港区南青山2-18-2 竹中ツインビル B wing 2F studio-noi.com