作り手のこだわりと、使い手の愛着が家具を育む「Ritzwell」

家具との出会いを楽しむための場所
ご案内いただいたのは、港区・北青山「ののあおやま」1階にある「リッツウェル 表参道 ショップ&アトリエ」。通りからふらりと立ち寄れる開放的な空間です。家具はまるで美術品のように静かに佇み、一つひとつの存在感が際立っています。
——素敵な空間ですね。ショップについて詳しくご紹介いただけますか。
若山良子さん(以下、若山):Ritzwellが創業30周年を迎えた2022年にオープンし、ほかのショールームは基本的に予約制ですが、こちらは予約なしで気軽にお立ち寄りいただけるのが特徴です。定番商品や単品でもお求めやすいアイテムを中心にご覧いただけます。
入口すぐの場所には、少し高さのあるスペース「TOKONOMA」を設けています。これはミラノ・サローネでの展示方法を取り入れたもので、その時期のおすすめの商品を展示しているんです。ここに目を留めて吸い寄せられるように入ってこられるお客様も多くいらっしゃいますね。

「誰のために作るのか」が、職人の原動力に
若山:入口の正面にあるのが、実際にお客様へお届けする家具を製作しているアトリエです。職人がいる日はあえてお知らせしておらず、ふらっと訪れた方が偶然その様子に出会う、そんな驚きや喜びを大切にしています。手しごとの様子をご覧いただけるのはもちろん、その場でご質問にお答えしたり、手縫い用の針を使った簡単な作業を体験できるキットもご用意しているんですよ。

——職人の皆さんにとっても、お客様の前で作業をすることには大きな意味があるのではないでしょうか。
若山:職人が本社で作業していた頃は、自分たちの家具がどんな方のもとに届くのか想いを巡らすこともなかったそうです。この場所ができ、お客様と対峙するなかで『期待以上のものを作りたい』という気持ちが芽生えるようになったといいます。そういった点を踏まえると、このアトリエはやりがいのある環境と言えるのではないでしょうか。
ちなみに職人は常に技術、仕上げのレベル、効率化について意見を出し合いながらブラッシュアップしています。家具の完成形は同じでも、職人によって手順やアプローチが異なるんですよ。

細部にまで手間ひまをかけたプロダクト
——1つの家具が生まれるまでに、相当な時間と手間をかけられているそうですね。
若山:弊社では現社長である宮本晋作がデザインを手掛けています。自身の職人時代の経験を活かしながら開発担当や現場の職人たちとやりとりを重ね、時間をかけて試作を繰り返していくんです。完成までに3〜5年かかるプロダクトもあるほどで、そのプロセスこそがRitzwellらしさに繋がっていると感じます。



(左下)扉は金属レールではなく木の溝に沿って開閉するため、襖のような開け心地。
(右下)引出しの前板には厚革を使用。たとえ見えなくとも、手で触れるところの仕上げにこだわっている。
若山:またプロダクトの検品にも非常に力を入れており、縫い目やシワ、わずかなガタつきまで細かく確認しています。特に製作前の革の検査は厳しく、傷や色むらがないか一枚ずつ丹念に見ていき、少しでも基準を満たさないものは使用していません。
手をかけるほど、愛着が深まる家具へ
——こちらのショップでは、どのように家具を選んで購入されるお客様が多いのでしょうか。
若山:Ritzwellの家具は木材や色、仕上げの方法をお選びいただけるセミオーダー形式をとっています。例えば木材はウォールナットとナラを採用していますが、塗装にもいくつか種類があり、お好みの空間イメージにあわせてお選びいただけます。
良質な素材を使っているからこそ、私たちがおすすめしているのが “オイルフィニッシュ” です。表面を塗膜で覆わずオイルを染み込ませて仕上げるため、質感や表情がそのまま現れます。シミがつきやすいデリケートな面もありますが、お手入れをするほどに変化していく木の表情をお楽しみいただけるんですよ。

“家具を楽しむ” Ritzwellの取り組みに迫る

Ritzwell 表参道 ショップ&アトリエ
創業30周年を迎えた2022年にオープンした、ブランド初の路面店。人気・最新のプロダクトに触れ、購入することができる。また「作り手」と「使い手」の出会いの場として、店舗内のアトリエで実際に家具が作られる様子を見学できるのも魅力。 〒107-0061 東京都港区北青山 3-4-3 ののあおやま1F TEL:03-3423-2929 営業時間:11:00-19:00 定休日:水曜日 ritzwell.com

若山 良子 Yoshiko Wakayama
株式会社リッツウェル 広報 2007年、リッツウェルに入社。営業職を経て、広報部門の立ち上げに携わる。現在は広報・PRを担当。