「Poliform」がインテリアに宿す “サイレント・ラグジュアリー”
ハイクラスな居住空間のトータルコーディネートを得意とする、イタリア発のインテリアブランド「Poliform(ポリフォーム)」。2025年4月には東京・南青山に日本初のストア「Poliform TOKYO」をオープンし、国内でもブランドが提供するラグジュアリーなスタイルを体感できるようになりました。今回は日本総合代理店である株式会社アクタスの広報・関 洋之さんに、ブランドの歴史やものづくりの哲学をお伺いします。

モダンインテリアの一等地で創業
——まずはPoliform創業時のお話をお聞かせいただけますか。
関 洋之さん(以下、関):Poliformは1942年にイタリア北部・ブリアンツァ地方で、富裕層向けのオーダーメイド収納家具を製作する工房としてスタートしました。この地域は石材などの材料が手に入りやすいこともあり、イタリアの家具製造の中心地として栄え、貴族や富裕層の別荘に納める家具を手がける職人たちが集まっていたんです。

関:その後1970年に現在の「Poliform」という社名に変更し、20世紀の間はワードローブやクローゼットといったシステム収納専門のブランドとして発展していきました。ちなみにPoliformは英語の “Poly (多様な)” と “Form (形)” を組み合わせた造語で『多様なデザインや機能を持つ家具や、重ね合う事で響き合う空間を提供する』というブランドの理念を表しています。
空間のトータルコーディネーターへ
——そこからキッチン事業に進出されたそうですが、どうして家具ではなくキッチンだったのでしょうか。
関:Poliformが培ってきた収納家具のノウハウを活かせるキッチン事業への進出は、自然な事業拡大の一環だったのだと思います。ただしワードローブなどとは違った専門的な知識が必要になるため、1980年代に「Varennna(バレンナ)」というキッチンブランドを傘下に加え、その機能性や水回りの技術を取り入れながら事業を展開しました。
その後約30年かけて研究開発を行い、2016年頃に「Poliform Kitchen」として、他の収納家具と合わせても統一感のある製品ラインを完成させたんです。

——今では幅広い製品を扱っていらっしゃいますね。
関:そうですね。2010年には本格的にインテリア部門を立ち上げてソファやテーブルなども手がけるようになり、2020年以降にはアウトドア家具も展開しています。さらに壁面パネルをはじめとする建具も扱っているので、住居や店舗、オフィスといった用途を問わず、空間をトータルでコーディネートできるようになりました。実際に建築家の方と協業で内装を手がけるプロジェクトを世界中で多数手がけています。

創業者一族が受け継ぐブランドの精神
——ほかのブランドにはないPoliformの特徴や強みとはどういったところにあるのでしょうか。
関:代々経営を担う創業者一族のスピネリ家が、綿々と受け継がれるDNAを守りながらプロダクト同士の調和を大切にしている点です。彼らは新作を発表する際に “ファミリーが増えた” と表現します。新しいプロダクトは違う苗字ではなく、あくまで同じ苗字の下に生まれるということです。今使っているものを変えずとも、新作を取り入れることで、自然に生活をアップデートできるのは大きな魅力と言えます。
——ソファやテーブルのデザインは外部から招いたデザインディレクターが手がけられているそうですが、それでも調和を保てるのはなぜなのでしょうか。
関:おっしゃる通りインテリア部門を本格的に立ち上げた際には、その分野の専門家としてジャン・マリー・マッソー氏をデザインディレクターとして迎えました。
他のブランドと異なるのは、デザイナーに完全に委ねてしまわない点です。スピネリ家がブランドの哲学に基づいて最終的な判断をし、デザインを決定しています。いかにデザイナーが優れた提案をしたとしても、Poliformの世界観に合わなければ採用されないんです。

ブランドの原点「Senzafine」に見る美学
——多彩なプロダクトの中でも代表的なものはありますか。
関:「Senzafine(センツァフィーネ)」というシリーズのワードローブやウォークインクローゼットは、長年システム収納のトップブランドとして知られるPoliformを代表するプロダクトと言えます。
基本となるモジュールをベースに、幅、高さなど様々なスペースへの対応を可能にしたシステム収納です。また素材のオプションが豊富で、バックパネルから引き出しに至るまで好みに合わせてカスタマイズできます。

——「Senzafine」の特徴を教えてください。
関:これは1980年代に収納に初めて照明を組み込んだ、当時としては非常にセンセーショナルなプロダクトで、“見せる収納” という文化の先駆けとも言えます。
また光と影のコントラストが際立つように仕切りと壁に少し隙間を開けていたり、引き出しを引くと蛇腹の装飾が現われて内部構造が見えないようになっていたりと、ディテールにこだわりが詰まっている点もPoliformらしいポイントです。

——シンプルですが、ディテールにこだわりを感じますね。どこか日本のデザイン姿勢と似ている気がします。
関:そうですね。余計な要素を削ぎ落す “引き算” の意識や、区切るのではなく統一感を持って緩やかに繋がるデザインなど、日本の美学を彷彿とさせる要素はあると思います。
よく “クワイエット・ラグジュアリー” や “サイレント・ラグジュアリー” などと称されるように、控えめで奥ゆかしい中に高級感を感じていただけるのではないでしょうか。良い意味でイタリアらしくない家具を作っているブランドだと言えますね。

創業家の哲学を貫きながら事業の幅を広げてきた「Poliform」。そのデザインには日本の美学と通じるものを感じ、開拓地としてこの国を選んだことにも納得がいきます。次回の後編では東京・南青山にオープンした「Poliform TOKYO」を訪問し、こだわりの空間デザインや製品の魅力について詳しくお伝えします。どうぞご期待ください。
関 洋之 Hiroyuki Seki
株式会社アクタス プロモーション部 広報チーム 1994年㈱アクタス入社。営業、プロモーション、マーケティング部門を経て、2015年より広報を担当している。