クラシック家具で生活をアートにしつらえる「西村貿易」

2025.11.21

東京メトロ南北線・白金台駅から地上に出るとすぐ見える、邸宅にあるような瀟洒な門。くぐった先には豪華絢爛な空間が広がります。ここは日本で唯一、高級ヨーロピアンクラシック家具を専門に取り扱う「西村貿易」のショールーム。今回は普段お届けしているモダンインテリアとは趣向を変え、味わい深いクラシック家具の魅力をお届けします。

東京・白金台にある「西村貿易」のショールーム

「西村貿易」では “生活をアートにしつらえる” をテーマに、家具の販売だけでなく、クラシック家具の魅力を最大限に引き出す空間のトータルコーディネートも行っています。ここで言うクラシック家具とは、中世から近世にかけて西洋の宮廷やマナーハウスで見られたような古典的かつ気品あふれる装飾を施した家具のこと。長い年月を経てきたヴィンテージ家具やアンティーク家具とは違い、全て今現在も制作が行われています。代表取締役の西村 広さんにその魅力について伺いました。

先代が一目惚れした「MAITLAND-SMITH」が原点

——はじめに西村貿易の創業について伺えますか。

西村広さん(以下、西村):祖父が紫檀、黒檀、花梨といった名木を扱う材木商として1972年に創業しました。その後、それらの高級木材を使用した飾り棚や花台といった和家具を取り扱い始めたことが、インテリアの世界に足を踏み入れたきっかけです。

1980年代に入ると日本人のライフスタイルが西洋化してきたこともあり、和家具から西洋の家具へとシフトチェンジしました。1988年には米国の「MAITLAND-SMITH(メートランドスミス)」と独占契約し、日本の総代理店として高級家具やインテリアアクセサリーの輸入・販売を行うようになります。

——最初の取引先としてそちらのブランドを選んだのには、何か理由があったのでしょうか。

西村:父が知人の紹介でデザイナーのポール・メートランドスミスと出会い、当時香港にあったショールームで個性あふれるアクセントファニチャーやデコールを見て、一目惚れをしたのがきっかけです。その場で買い付けたそうで、『何も考えずに買った』と言っていました(笑)。当時、こうしたインテリアは日本のみならず世界でもまだ普及しておらず、そのデザイン性に衝撃を受けたんでしょうね。

——アクセントファニチャーというのはどういったものを指すのでしょうか。

西村:「アクセントファニチャー」という言葉自体、聞きなじみがない方も多いかもしれませんね。簡単に言うと、部屋の主役となるソファやダイニングテーブルなどのメイン家具ではない、空間に個性や華やかさを添えるいわば “脇役的” な家具のことです。例えばチェストやサイドテーブル、スツールなどがあてはまります。

実は、このアクセントファニチャーという分野自体を切り開いたのが「MAITLAND-SMITH」なんです。家具だけでなくインテリアアクセサリーやランプ、ウォールパネルなどのアクセントデコールも幅広く手がけていて、空間に遊び心や彩りを加えてくれます。

ブックをモチーフにしたサイドボード。マホガニー製の本体に革を張りこんだ背表紙と象嵌(ぞうがん)[*]細工を施した、職人の手仕事が光る個性的なデザイン。 *木地などの素材に文様を刻み込み、そこへ異素材を嵌め込む伝統的な装飾技法

西村:当社が輸入を始めてから30年以上になりますが、日本でこれだけ豊富にアクセントファニチャーやデコールを取り扱っている会社はほとんどないのではないでしょうか。

クラフツマンシップや歴史的価値が光るプロダクト

——他にはどのようなブランドを取り扱っているのでしょうか。

西村:現在では8つのブランドを取り扱っています。その中で最も大きい割合を占めているのが「THEODORE ALEXANDER(セオドアアレキサンダー)」です。ポール・メートランドスミスがさらなる理想を追求するために新たに立ち上げたブランドで、「ALTHORP (オルソープ)」や「Alexa Hampton(アレクサハンプトン)」など、魅力的なキーコレクションを展開しています。

西村:その中でも「ALTHORP(オルソープ)」コレクションは、クラシック家具愛好家に特に人気があります。ダイアナ元皇太子妃の生家である、英国のスペンサー伯爵家の歴史ある家具や調度品をリプロダクションしたもので、歴史的・文化的価値の高いコレクションとして日本にも多くのコレクターの方がいらっしゃいます。  

(上)「ALTHORP」のビューローデスク
(下)各所に引き出しが隠されており遊び心を感じる。スペンサー伯爵家の家紋が入っているのもコレクター心をくすぐるポイント。

幼少期から育まれた審美眼

——こうしたプロダクトをセレクトする上で大切にされていることはありますか。

西村:まず私自身が感動し、美しいと思えること。そして手間ひまを惜しまず作られたクオリティの高いものを選ぶようにしています。その裏には歴史的・文化的背景や作り手の想いといった “夢” が詰まっているんです。家具を売るというのはこうした “夢” を届ける仕事だと思っています。

邸宅の一室のようなショールームの一角。コーディネートはすべて西村さん自身で行っているそう。

——美しいものを見極める目は、どのようにして養ってこられたのでしょうか。

西村:常にさまざまなものを見て取り入れ、何事にもこだわるようにしています。また思い返せば、子どもの頃から海外の美術館や家具のショールームに連れて行ってもらう機会は多かったですね。高校生の頃に家具の買い付けに同行した時には、二代目である父親から『この中で良いと思うのはどれだ?』と問われて、選んだものを実際に買ってもらうなんてこともありました。私にはとても真似できないですが、両親がそうした環境を作ってくれたことで自然と感性が磨かれてきたのだと思います。

次ページ▶ クラシック家具の醍醐味に迫る

DATA

西村 広 Hiroshi Nishimura

西村貿易株式会社 代表取締役
京都出身。カナダ留学から帰国後、世界各国から厳選した家具やインテリアアクセサリーの仕入れやブランドディレクションに携わる。現在は代表として企業理念と美意識を体現するブランドコミュニケーションと空間デザインを手がけ、その世界観を国内外へ発信している。

西村貿易 東京ショールーム

2000年に白金台でオープンした「西村貿易」のショールーム。欧米8ブランドの家具だけでなくランプやデコール、シャンデリア、絵画などを取り揃え、それぞれの世界観を存分に味わえる。また全ブランドに精通したスタッフが常駐しており、家具の説明のみならず空間演出のスタイリングアドバイスまで担っている。

〒108-0071 東京都港区白金台3丁目2-10 白金台ビル1F
TEL:03-5793-3694
営業時間:10:00~18:00(月曜定休)
maitland-smith.jp

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