Private View vol.1 前編
「都会の真ん中で、自分に戻る場所」

2022.02.24

月日が経ってもなお、その価値を高く保ち続けるヴィンテージマンション。とりわけ都心のヴィンテージマンションは、日本のマンション文化に先立って誕生した深い歴史を持つ魅力的なものたちばかりです。

本連載「Private View」では、人々が大切に住み継ぐことで育まれ、さらに魅力を増していくヴィンテージマンションにお住まいの方々の暮らしにスポットを当て、古いものに新しい価値を見出す方々の豊かな暮らしを叶えるヒントを紐解き、ご紹介していきます。

第一回目は、都心の高台に佇む昭和39年築のマンションにお住まいのご夫婦、編集者の堀川正毅さんとPRプランナーの早保子さんのご自宅にうかがいました。

ネット検索と妄想を楽しむ

──ヴィンテージならではの趣のあるこちらのマンションは、交通の便も良い立地ながら緑溢れる旧屋敷街に位置しています。車通りも少なく、とても静かな住環境に加え、高台なので日当たりも抜群です。どのようなタイミングで、この物件に出会われたのですか?

堀川早保子さん(以下 堀川):結婚5年目あたりから家の購入を検討し始めました。知り合いからいくつか不動産を紹介してもらったのですが、なかなか気に入ったものに出会えずにいたところ、私がネットで見つけたのがこの物件です。真剣に探し始めてから半年くらい、15軒ほど見た頃でしょうか。1回目の内見で購入を決め、その後実際の購入までに細かいチェックを2回重ねました。

リビングに続く長い廊下からの眺め

左:リビングに続く長い廊下からの眺め。反対側にある寝室のドアと窓を開けると、心地の良い風が吹き抜けるそう。
右:寝室のドアと、手前は写真家 宮本敬文の作品。千鳥ヶ淵の満開の桜が咲き誇った後に水辺に浮かんだものを写したもの。

──週末にはよくお二人で、様々なエリアのマンションウォッチングをされていたそうですね。

堀川:自宅から少し離れたレストランに食事に出掛けた帰りなど、そのあたりのマンションを見ながら歩いて帰ったりしていました。その後ネットで検索して、あーでもないこーでもないと話しながら想像を膨らませたり。もちろん、良さそうなエリアでマンションを見ながら散歩をすることもありました。そこで夫婦間の好みの擦り合わせが出来上がっていったように思います。

週末にマンション探しをするのが、2人の間では楽しみの1つになっていました。この間取りでどんな生活をしたいか、このバルコニーでお酒を飲みたいね、などと夜な夜なネットで間取り図や写真を見ながら、どんな住み方をしたいか、いろいろ妄想する時間を楽しんでいました。

元々ついていた棚は色だけ塗り替えた

元々ついていた棚は色だけ塗り替えた。ここには特にお気に入りの写真集や海外から持ち帰ったお土産などを並べている。

──リアルに物件を見て、ネットで調べて、次の暮らしを想像するのは楽しそうですね。お2人の生活のプライオリティはどんなことでしたか?

堀川:2人とも都心で働いているので、1番譲れないところはエリアでした。職場やよく行く美味しいレストランから遠くない方がいい。それから、ある程度の広さがあることや、バルコニーがあること、タワーマンションではないことなど。さまざまな条件を考えていたら、古いマンションをリノベーションするのが2人の暮らしに合っているんじゃないかという結論に。

便利であることが優先されることも多い世の中ですが、私たちはそこが1番ではないと分かったんです。プライオリティとしては、エリアも含めて大人の余裕があることですね。

大人の余裕の定義とは

──キーワードは「大人の余裕」ですね。具体的にはどんなことですか?

堀川:たとえば、閑静な住宅街のように、騒がしくない場所に位置していること。来客用の駐車場が完備されており、敷地が広くゆったりとしていて、隣のマンションと近すぎないこと。それから、ロビーや廊下などの共用部分にかなりゆとりがあること。2人の趣味でもあるキャンプで大きな荷物を移動するのにも全くストレスがありません。さらに、ゴミ置場が各フロアにあって、常にきちんと管理されているところもポイントです。

マンション全体の造りそのものに、古い物件ならではの歴史が育んだ芳醇な魅力が多く感じられるのも、余裕を持って暮らせる条件の1つだと思います。エントランスに派手なシャンデリアは必要ありません。ガラスブロックや階段などの素材もヴィンテージならではの風格が感じられますし、当時の豊かさを体感することができます。

──マンション全体に漂う、これ見よがしではないセンスの良さにも、また余裕を感じます。敷地内の豊かな植栽も、ちょっとした庭園のようですね。都内のこの立地で、このボリュームの自然が敷地内にあるマンションは、そう多くないですよね。

堀川:マンションの庭の贅沢な緑のおかげで、穏やかで豊かな気持ちで日々を過ごしています。庭の木々は、秋になると真っ赤に色づいて素晴らしい景色になるんです。それを眺めながら、ソファでお酒を飲むのが好きです。

サンルームのように明るい窓際の一等席

前オーナーがベランダを部屋にリノベーションしていたことで、サンルームのように明るい窓際の一等席。最近ご自身で黄色く塗った壁で、部屋がさらに明るい印象に。

暮らしの中でのプライオリティは、時間と共に変化することもあります。
今の自分たちにとって、どんな暮らしが自分たちらしいのかを見極めるのは、なかなか難しいものですが、向き合う時間を大切にすることで、少しずつ自分も相手も尊重した選択に近づくことができます。

マンションウォッチングを兼ねた散歩やネット検索で、じっくり2人の新しい暮らしを想像し、便利至上主義ではなく「大人の余裕」というキーワード通りのご自宅を見つけた堀川さんご夫婦。

次回は、さらにお2人なりの居心地の良さを作り上げていったリノベーションに迫ります。楽しく快適に暮らすためのこだわりや工夫、共に暮らすアートなどについて掘り下げていきます。

Text by Hisako Namekata
Photos by Mitsuo Yamamoto
         

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