名匠に迫る vol.1「関ヶ原石材」後編

2022.08.26

BEARS代表宅間、唯一無二の石材の買い付けへ。

日本を代表する石の専門集団「関ヶ原石材」を訪ね、天然石材への理解を深めた前編に続き、後編はいよいよ同社が誇る特別な展示場に足を踏み入れます。

期待に胸を膨らませる一行が出会ったのは──?

世界中から唯一無二の石材が集まるギャラリー

2019年、同社の敷地内にオープンした「アントリーニ ストーン ギャラリー」は、イタリアの一流石材ブランド「Antolini Luigi & C.S.p.A.」との提携から生まれた展示場。世界一と名高い同ブランドが厳選した、アート性の高いスラブ材が約1,400㎡の空間に並びます。

「──!」

ギャラリーの中へと扉をくぐった一同は思わず息を飲みました。

「Antolini Stone Gallery」©関ヶ原石材株式会社

存在感あふれる、色とりどりの石たちが一堂に会した様はまさに壮観!
広々とした空間に立ち並ぶ、その姿はまるで近現代アートのようです。シンプルな建屋外観とのギャップがその迫力を際立たせます。

抽象表現主義を代表する画家、ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングを思わせる石があれば、巨大な山脈や大河を抱いた大地を宇宙から眺めている気分になる石も。

この星のとこしえの記憶に出会う

一枚一枚の存在感に圧倒される一同に、案内人の中西さんがこんな話をしてくださいました。

『石の美しさは長い長い時間が重なり合うようにしてつくられたものです。石に触れるとき、人は大地と海が育んだこの星のとこしえの記憶に出会います。太古のできごとに思いを巡らせ、感動すら覚えるでしょう。石は地球からの贈りもの。石という天然の素材を扱うことはすなわち、人と自然が共に生きることだと思うのです』

そう、ここに並ぶのは、地球という星が気の遠くなるほどの時間をかけて生み出したアート。壮大な惑星の運動に思いを馳せ、一枚一枚と向き合っていると、頭がクラクラしてきます。

それぞれの石には詩的な紹介文が添えられており、ギャラリーを訪れる人の心をくすぐります。この紹介文、実は中西さんが一点ずつ悩みながら書いているのだとか。

その内容はたとえば、こんな風。

『森林を醸し出すエメラルドグリーンの壮大な背景に、魅惑的な深遠の海を表現するターコイズ色のトーンが印象的な強さを際立たせ、かつニュートラルで温かみのあるニュアンスをもつ石英岩です』(原文ママ、以下同)──「Amazonite Top(アマゾニーテ トップ)」

『バラ色を連想させる古典的なアメリカのカクテル「コスモポリタン」から命名された、華麗な色彩を奏でる透過性のある素材です。クランベリーの味わいを感じる様な甘美な空間の演出に』──「Quarzo Cosmopolitan(クアルツォ コスモポリタン)」

『唯一の生命体を宿すと考えられる地球で重要な要素を司る水。深みの与えるさまざまなトーンの色合いの陰影が表現されています。この独善の色相の各要素が唯一無二の魅力的な世界観を表現します』──「Azul Macaubas(アズール マカウバス)」

石の前で立ち止まり、しばし眺め、添えられた言葉を静かに読む。そして、石の表情をさらに味わい、また次の石へ──。ギャラリー内を歩くうちに、まるで “石でできた詩集” の中を泳いでいるような気分になりました。

日本初(!)の石を使った世界にひとつのキッチン

今回このギャラリーを訪ねたのは、BEARSが手がける市ヶ谷の邸宅のキッチンに使用する石材を選ぶため。中でも “邸宅の顔” となるアイランドカウンターの石材を買い付けるのがミッションです。

空間設計を手がける「リブラスタイル」代表の手塚さんと宅間の二人がたくさんの石の中から選んだのは、アースカラーの美しい模様が入った大理石でした。

「Patagonia Della Terra(パタゴニア デラ テッラ)」と名付けられた、こちらの石材。

その名前の由来は、中西さん曰く『紀行作家のブルース・チャトウィンが愛した、南米パタゴニアの “大地の息吹” を思わせる』からだとか。『「嵐の大地」と呼ばれるパタゴニアの乾燥した大地に、氷河が取り込まれたかのようなユニークなデザイン。独自の世界観を演出してくれます』──そんな解説に引き込まれました。

『市ヶ谷邸のアイランドカウンターはダイニングとキッチンの間の “サービングカウンター” であり、スツールに座って飲食もできる場所として設計しました。メインのキッチンカウンターにはメンテナンスのしやすさや耐久性にすぐれたクォーツストーンを採用する一方、アイランドカウンターにはこの石のダイナミックな魅力を活かせたら』と手塚さん。

驚いたことに、この石材が使われるのは日本で初めて(!)なのだそう。出会えた石が業界初の逸品だと知り、宅間もなおさら嬉しそうな様子です。

さて、石材選びはこれで終わり──ではありません。

複数あるスラブ材からどの一枚を選び、どこをトリミングするか。同じ塊からでも切り出す位置によって表情が大きく変わるため、中には数時間悩み抜く方もいるのだとか。

近くから遠くから石を眺めて、マスキングテープを何度も貼り直し、空間の仕上がりをシミュレーションする二人。時間をかけて、最高の表情が採れるカットを選びます。

とうとう、世界にふたつとないキッチン、邸宅の顔が決定!

出会えた石を熟練の職人さんに託して

この後、買い付けた石は熟練の職人さんの手で丁寧にカットされ、細心の注意を払って輸送、施工までが手がけられる予定です。

無事に買い付けを終えた宅間は『素晴らしい石に出会えてよかった』と充実感をにじませるとともに、『こんなにもカラフルで表情豊かな石を自然が生み出すとは……。人がつくるアートよりも力強く、向き合うとエネルギーを使うなあ』と驚いた様子。

一方、手塚さんは『これほど大判の天然石材を使える物件は限られます。そして、天然石材は一期一会。この物件のコンセプトと空間を引き立てる、素晴らしい存在感を持つ石に出会えて嬉しいです。ぜひこの価値を分かってくださる方に届けたいですね』と安堵の表情を見せながら、この石と日常を暮らすことになる “未来の住まい手” に思いを馳せました。

一期一会の石材にサインを入れてミッション完了

さて、「名匠に迫る」と題した連載の第一弾はいかがでしたでしょうか。

今後もBEARSが協働するさまざまなエキスパートの方々に迫り、選りすぐりの素材やすぐれた技術が生み出す “唯一無二の魅力” を紐解いていきます。

また、今回出会った石がどんな風に使われ、どんな空間を生み出すのか。
それは、市ヶ谷の邸宅の竣工後、新たな記事でご紹介予定です。
どうぞお楽しみに。

Text by Jun Harada
Photos by Mitsuo Yamamoto, Jun Harada
         

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