名匠に迫る vol.1「関ヶ原石材」前編

2022.08.05

代表宅間、唯一無二の石材を買い付ける

2022年の晩春、私たちは東京から新幹線に乗り、岐阜県関ヶ原にある「関ヶ原石材」を訪ねました。旅の目的は、ある邸宅物件のキッチンカウンターの石材を選ぶこと。

BEARSでは、こうした自社物件の素材の買い付けに代表自らが足を運ぶことも珍しくありません。情報があふれる現代にあっても、実際に現地に赴いて自らの目で見、触れて選ぶ。そうした労を惜しまないこだわりこそが違いを生むと考えているからです。

今回の買い付けには、同物件の居住空間を手がける「リブラスタイル」代表であり、デザイナーの手塚由美さんにも同行いただきました。市ヶ谷の元武家屋敷エリアに建つ、同物件のインテリアは『真価』がコンセプト。由緒ある土地の価値のみならず、本質的な心地よさと豊かさのある住まいを実現するためには、選び抜いた素材が欠かせません。

求めるのは、住空間の顔となるような唯一無二の石材。
さて、どんな素敵な石に出会えるでしょうか?

石の専門集団「関ヶ原石材」とは

最寄りの新幹線駅から車で25分ほど。

関ヶ原といえば、天下分け目の決戦、関ヶ原の戦い(1600年)が有名ですが、この地は古くから霊峰として知られる伊吹山の麓にあり、石の加工に欠かせない水の豊かな土地として石材業が発展してきたといいます。

中でも日本を代表する建築石材会社として成長を遂げた「関ヶ原石材」は、いわば “石の専門集団” 。世界の石を知り尽くし、石の調達から加工、施工、アフターケアに至るまで、つまりは石工事業の川上から川下までのすべてを手がけています。

1951年の創業以来、「帝国ホテル」や「最高裁判所」、「東京都庁」などの歴史的建造物をはじめ、「六本木ヒルズ」、「東京ミッドタウン日比谷」といった商業施設など、日本中のランドマークに携わってきたと聞けば、社名に馴染みのない方もその実績の大きさに驚くのではないでしょうか。

最近では、隈研吾さんの設計による「角川武蔵野ミュージアム」(2020年竣工)も大きな話題になりました。2万枚の御影石に覆われ、まるで大地から隆起したかのような建物の迫力は、同社の高い技術力あってこそ実現したといっても過言ではありません。

中国・山東省の山奥から切り出されたという御影石の外壁が異彩を放つ「角川武蔵野ミュージアム」©関ヶ原石材株式会社

石に関するあらゆる知見を培ってきた同社は、クライアントの要望をただ形にするのではなく、安全と品質にこだわり、どのような石を使えば、より洗練されたデザインになるのか、より長く使えるためにはどうすればいいのか、あらゆる角度から提案を行うことをモットーとしているとのこと。

なお、手がけるのは大型の建造物に限りません。近年はこだわりの店舗空間や個人邸のプロジェクトも増えているのだそうです。

石のエキスパート・中西さんによる特別講義

今回の買い付けにあたっては、同社の石種アドバイザーを務める中西信也さんが案内してくださいました。中西さんは世界各国の石が集まるイタリアを拠点に、長年にわたって多種多様な石材を調達してこられた石のエキスパート。そんな中西さんの特別講義で石への理解を深めます。

まず、建物に使われる天然石材は主に大理石、御影石の2種類が挙げられます。

華やかな美しさで古くから愛されてきた大理石は水や酸に弱いため、内装に向く一方、地下深くでマグマが冷えて結晶化した御影石は硬く、耐久性に優れる──といった特性があります。また、大理石になる前の石灰石(海底で貝や動物の遺骸などが積み重なってできた石)はライムストーンと呼ばれ、劣らず人気があるそうです。

さらに、世界の産地から採れる石ごとの特徴についても教えていただきました。

たとえば、トルコから産出する大理石の一種、トラバーチンクラシック(Travertine Classic)は、安定した色目と大きなブロックがとれる信頼性から「虎ノ門ヒルズ」に採用。また、古代の地層から採掘されるドイツのライムストーン、ジュライエロー(Jura Yellow)は、やさしい風合いでジュラ紀の化石が混ざることも。都内では「赤坂サカス」に使われています。

トルコ西部で採掘されるトラバーチンクラシックは「虎ノ門ヒルズ」の床の広い面積に使われている ©関ヶ原石材株式会社

中西さん曰く、実は『高級ブランドが立ち並ぶ東京・銀座は、石の展示場』なのだとか。知らないだけで、街のさまざまな場所に世界の天然石材が活かされているのですね。今度は石に注目しながら、銀座を散歩してみたくなりました。

研究熱心な中西さんは『街で気になる石材に出会うと、質感を感じたくて、つい撫でてしまいます。床の場合はすり足で歩いて、施工の目違いの有無をチェックしたり──職業病ですね』と笑います。

ギャラリースペースに並ぶ石材サンプルは、色合いや模様、質感もさまざま。

特に驚いたのは、表面加工の奥深さです。本磨・水磨・割肌・荒摺など、13種類もの表面仕上げによって、同じ石からでも多様な表情を引き出せるといいます。たとえば、ツルツルに磨き上げたり、ジェットバーナーで焼いたり、あえて粗く凹凸を出したり──高度な職人技によって引き出された表情の豊かさに唸りました。

広大な工場敷地を歩く

講義の後は社屋を出て、広大な工場敷地をご案内いただきました。

その広さはなんと7.1万坪(約235,000㎡)ほどもあり、東海道新幹線が敷地を貫いているというから驚きます。新幹線の乗客として、たくさんの人が知らぬ間に同社を訪れている(!)とも言えますね。

工場の建屋内に足を踏み入れると、加工機械の轟音が耳を満たします。

石のブロックから板状のスラブ材を切り出す巨大な切断機、大型の砥石ユニットが回転する研磨機、1300℃の炎がまばゆいジェットライン加工機など、国内最大級という石材加工設備はどれも大迫力!

ダイナミックかつ繊細な加工の数々によって、石の魅力を引き出していく工程を見学させていただきました。

さらに続く建屋には、世界各地からやってきた大理石などのブロックと、艶やかなスラブ材がずらりと並んでいました。新たな旅立ちを待つ “宝の山” の間を歩き回る一行。

ここでは、市ヶ谷の邸宅に用いるその他の石材候補を選びます。

狙いを定めていた石材の現物を見比べる手塚さん。中西さんのアドバイスに耳を傾けながら、繊細な色合いや表情の違いを吟味します。宅間とも意見を交わし、完成図をしっかりイメージできたようです。

次回はいよいよ特別なギャラリーへ

さて、石のエキスパート・中西さんの案内で石への理解を深め、素材の候補を吟味した一行。続く後編では、唯一無二のキッチンカウンターを求めて、特別な石材が集まる展示場「アントリーニ ストーン ギャラリー」を訪ねます。

世界一と名高いイタリアの一流石材ブランドが選りすぐった石材とは?
宅間はどんな石に出会えたのでしょうか?

次回もどうぞお楽しみに。

Text by Jun Harada
Photos by Mitsuo Yamamoto, Jun Harada
         

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