新旧が混ざり合い、発見と出会いがある街「清澄白河」
清澄白河に拠点を置く自転車のブランド「トーキョーバイク」は “街を楽しむための自転車” がコンセプト。職場もお住まいもこのエリアという副社長の田代勇輔(たしろゆうすけ)さんに、この街の魅力についてお話を伺いました。
山を走るのが “マウンテンバイク” なら、東京を走るのが “トーキョーバイク” 。街を走ることに特化し、その目的のためにデザインされた自転車が、いま国内外でファンを増やしています。
台東区谷中から清澄白河へ
――トーキョーバイクが他の自転車と違う点はどんなところですか。
田代勇輔さん(以下、田代):トーキョーバイクは “街” をすごく大事にしているんです。徒歩で回るのは大変。車だと通り過ぎてしまって細かいところが見られない。けれど自転車のスピード感、スケール感が街と合っていれば気軽にザッピングできる。そうやって暮らしを楽しむために『ささやかな日常に変化を加えるツール』として商品やサービスの提供を行なっています。
トーキョーバイクが最初の出店に選んだ場所は、江戸情緒を残す台東区谷中。2009年のことでした。その後、2021年に清澄白河に移転。田代さんはそのタイミングでこの街に引っ越してきたそう。
――清澄白河が新拠点になった理由を教えていただけますか。
田代:谷中はお寺が多く、戦災の空襲を免れた民家がたくさん残っている街で、空がすごく広いんですね。ただ、店舗と事務所が離れていたので、統合できる場所を探していました。清澄白河はどこか谷中と似た空気感があって『すごくしっくりくるね』という話になり。そんな中、今の物件が見つかり決めさせていただいたという流れです。
かつては材木の街だった
――いまトーキョーバイクが入っている建物は、どんな場所だったのでしょうか。
田代:このあたりはもともと材木屋さんがたくさんある街だったそうです。材木業から紙業が起こり、今でも印刷会社や工場が残っています。この建物もおそらく最初はそのような工場で、その後倉庫として長らく使われていたようです。
――田代さんが清澄白河に住みたいと思ったのはなぜですか。
田代:代表の金井が谷中に事務所を構えたときに彼自身が移り住み、新しい出会いにすごく恵まれたという話をよくしていました。その体験自体が会社のコンセプトにもなっています。僕もそういう経験をしてみたいと思い、この街に引っ越すことを決めたんです。
新旧の住民が良い形で混ざり合う
――実際に住んでみていかがですか。
田代:やはりこの街はすごく面白いです。「ブルーボトルコーヒー」のフラッグシップカフェや私たちトーキョーバイクもそうなんですけど、古い建物に新しいお店がオープンしたり。小さくて良いお店がポンポンポンとできています。もともとお住まいの地元の方たちと、新しい住人の方たちがすごく『良い形で混ざり合っている』と思います。
田代:以前の住まいは『寝に帰るだけ』という感じでしたが、この街に来てからは行きつけのお店ができました。そこで常連さんと知り合って、全く仕事とは関係ない話ができたり、違うお店でばったり会ったり。そのような人とのつながりが自然にできるのはすごく面白いと思います。
ユニークで居心地の良い飲食店
――おすすめのお店を教えていただけますか。
田代:仕事終わりによく立ち寄るのが「Folkways Brewing(フォークウェイズ・ブリューイング)」というビール屋さん。店の奥に醸造タンクがあって、カウンターとテーブル席が少しの小さなお店です。平日は22時に閉まるので、常連さんたちと盛り上がれば別の飲み屋に流れます。
田代:大衆居酒屋の「だるま」は創業されてから長いんですが、最近オーナーさんが交代して、新しい店長さんが切り盛りされています。お客さんはコの字型のカウンターを囲んで、たまに隣の人と話をしたり。とても居心地の良いお店です。
――ユニークな飲食店が多いんですね。それ以外ではどんなお店がありますか。
田代:もともとトーキョーバイクの店内で営業していた「The Plant Society」が、歩いて5分位のところに移転オープンしました。オーストラリアのメルボルンで設立した、植物との暮らしを提案しているお店です。
おしゃれで感度の高いライフスタイル
田代:「東京都現代美術館」はやはりこの辺でいいなと思うスポットです。たまに行ったりするんですけど、人気の展示だとすごく並んでいて。昨年のディオール展は連日朝から行列でした。朝一番に当日券を買ったものの、入館時間が夕方近くなので、それまでこのあたりを散策するのに自転車をレンタルしに来られた方がいらっしゃいました。
――トーキョーバイクにはどんなお客様がいらっしゃるんだろうと思っていたところです。
田代:レンタルバイクを借りに来てくださるお客様はすごく増えています。もともと若いカップルが多かったんですが、インフルエンサーの方がSNSで紹介してくださったようで、女性の2人組が増えました。リピーターの方もいらっしゃいます。
――近隣のお客様はどんな方ですか。
田代:お子さんの自転車を購入される方が多いですね。若いファミリー層が初めての自転車を購入されたり、もしくは、おじいちゃんおばあちゃんと一緒にご来店されて買ってもらうとか。
住む場所としても充実している街
――実際に住んでいる田代さんからみてどのような方が住まわれていると思いますか?
田代:一人暮らしの若い男性も多いと思います。何回か飲んで仲良くなった後に聞くと、お勤め先が大手の広告代理店だったり。この近隣にもマンションがありますし、もう少し離れた「東陽町」や「豊洲」のほうに行くと、タワーマンションや大型のマンションがどんどん建っています。
――住む場所としての魅力は、どういうところに感じられますか。
田代:落ち着いていて静かなところですね。街の喧騒がないんです。しかもアクセスはすごく良いので、とても便利です。「東京駅」周辺など東側の商業エリアにも出やすいし、西側の「渋谷」や「新宿」に行こうと思えば半蔵門線で行けますし。
――日常のお買い物はいかがですか。
田代:スーパーがいくつかあるので不便はありません。ホームセンターもあるんですよ。
――小さいお子さんがいらっしゃるご家庭では、学校はどうしていらっしゃるのでしょうか。
田代:公立の小中学校のほか、インターナショナルスクールもあります。この辺に住まわれている外国の方も知り合いに何人かいますよ。
――公園も多いですよね
田代:「木場公園」はもちろん大きくて良い公園ですし、「清澄庭園」もあります。小さい公園もポツポツとありますし、ちょっと行くと緑道もあったりするので。それと川が近いこともあり、すごく “気” が良いですね。昔、木を運んでいた運河が縦横に走っていて、ちょっと行くと「隅田川」に出ます。
新しい発見や出会いがあることの豊かさ
――この街は自転車で走ってみると、どうですか?
田代:平坦で一方通行の広い道も多いので、すごく走りやすいです。1本路地に入ると知らない店がポンとあったり。そういう “新しい発見や出会い” がたくさんあってとても面白いです。
最後に、田代さんにとって豊かな暮らしとはどんなものか、お聞きしました。
田代:“新しい出会いや発見がたくさんある人生” は豊かだと思います。それが大きな事でも小さな事でも、今まで気づかなかったことに気づいて、 “楽しい、面白い、嬉しい” そういう発見がたくさんあるのが豊かな人生だと思います。
――ここのお店はマルチな取り組みが実践できる空間なので、新しい出会いや発見がたくさんありそうですね。
田代:まさにそういう場でありたいと思っています。トーキョーバイクでやっていることと、自分が楽しい豊かだと思っていることが同じ方向を向いているのはありがたいことです。
街を歩いてみると、昔ながらのおでん種のお店があったり、かと思うとおしゃれなコーヒースタンドがあったり。古いものと新しいものが混在して、それがとても良い雰囲気を醸し出していました。外国人に人気というのも頷けます。『今度は自転車で走ってみたい。』そんな気持ちにさせてくれる街でした。
田代勇輔 Yusuke Tashiro
株式会社トーキョーバイク 取締役COO/副社長 家電メーカー勤務後、34歳でトーキョーバイクに転職。ショップスタッフ、法人営業、プロダクトマネージャーを経験した後、2024年4月より現職。
TOKYOBIKE TOKYO
2021年7月にオープンした「トーキョーバイク」のフラッグシップストア。2階建ての店内では、街を楽しむ自転車を購入できるだけでなく、自転車のレンタルサービスも行っている。また、1階にはコーヒー店「ARiSE COFFEE PATTANA」が入っているほか、ポップアップストアやイベントも実施。訪れる度に新たな発見に出会える空間を提供している。
〒135-0022 東京都江東区三好3丁目7-2
TEL:03-6458-8198
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