お正月の過ごし方ににじむ “都心の豊かな暮らし”
皆さまは今年のお正月をどのように過ごされましたか?
初日の出を見に行ったり、初売りを狙って買い物に出かけたり、お家でおせち料理を味わったりと、その過ごし方は人によってさまざまです。そこで今回はこれまでBEARS MAGAZINEの取材にご協力いただいた方々に『お正月の過ごし方』をインタビュー。都心で暮らしている方がどのように新年を迎えているのか覗いてみましょう。
老舗うなぎ店代表が過ごすお正月
まずお話を伺ったのは「日本橋」の記事にて取材した岩本公宏さん。うなぎの老舗「日本橋いづもや」の代表取締役を務めているほか、地元の町会や飲食店組合でも精力的に活動し、多忙な日々を送っています。そんな岩本さんが取材の際に “豊か” だと語っていたのが元旦。仕事から離れた貴重な時間をどのように過ごされているのでしょうか。
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江戸から未来へ、変遷する「日本橋」

――毎年お正月に行っているルーティンはありますか?
岩本公宏さん(以下、岩本):大晦日は日本橋三越にあるお店に最後まで残って従業員の皆さんに『良いお年を』と伝え、1月2日に同店で従業員の皆さんに『あけましておめでとうございます』とご挨拶するのはこの21年間変わっていません。
その間に挟まれた元旦は、朝早く起きて隅田川沿いに初日の出を拝みに行くのが恒例です。空気が大変冷え込んでいて冬の朝を否応なしに実感するのですが、太陽が昇ってくるとじんわり身体が温かくなってきます。眠くても寒くても、日の出を見ると『やっぱり来てよかったな』と思いますね。

――寒さや眠気が吹き飛ぶのも納得の素敵な景色ですね。その後にもどこか行かれるんですか?
岩本:初日の出を見たその足で「神田明神」まで初詣に行きます。元旦のお昼前になるとものすごく並ぶんですが、7時台に行くと意外と空いていて5〜10分くらいで参拝できるんです。1年の無病息災と商売繁盛を祈念して、それに見合わない賽銭を投げて祈っています(笑)
それから「白旗稲荷神社」にもお参りします。うちのお店のすぐ近くにある小さな神社なんですが、宮司がおらず町会で管理しているんです。ここで手を合わせたら、ようやく家に帰っておせちをいただきます。



――岩本さんは食に携わるお仕事をされていますが、おせちにも何かこだわりはあるのでしょうか?
岩本:昨今冷凍おせちが増えてきていますが、私はどうしても合成添加物や保存料が入っているものの味が苦手で。できるだけそういうものが入っていない、お店で作られたおせちを買うようにしています。
――昨年はどちらのおせちを食べられたのですか?
岩本:私が所属している日本橋料理飲食業組合の青年部「三四四会(みよしかい)」が、日本橋三越本店とコラボして発売したおせちをいただきました。毎年こうした商品を出しているのですが、昨年は大変ありがたいことに350周年を迎えた日本橋三越のおせちカタログで表紙に採用されたんです。

岩本:中身を見てもらうとわかるんですが、和洋中を一度に楽しめるおせちなんです。「三四四会」には様々なジャンルのお店が加盟していて、企画が持ち上がった10年ほど前からブラッシュアップを重ね、今の形になりました。最近はこうした和食以外も楽しめるおせちが増えてきましたが、料理のバリエーションが豊かだと数日間同じものを食べていても飽きなくて良いですね。

日本在住フィンランド人が過ごすお正月
続いてインタビューしたのは、東京在住のフィンランド人ラウラ・コピロウさん。フィンランドに拠点を置く家具ブランド「NIKARI」のCEOを務めるヨハンナ・ブオリオさんを取材した際にご協力いただいたご縁があり、今回お話を伺うことができました。フィンランドで生まれ、日本に移り住んでから14年目になるというラウラさんは、どのようなお正月を過ごしているのでしょうか。
ヨハンナさんに取材した記事はこちら
北欧の家具工房CEOが見出した日本の住まいの “美しさ”
――毎年お正月に行っているルーティンはありますか?
ラウラ・コピロウさん(以下、ラウラ):日本に引っ越して間もない頃はおせち料理を作って、お屠蘇を飲んで、着物を着て、初詣もしてと日本の伝統的なお正月を過ごしていました。しかし最近は朝に「東京タワー」までランニングをした後に初詣をして、友達とお正月パフェを楽しむというのが定番になっています。

――元旦からアクティブですね。初詣はどちらに行かれるのですか?
ラウラ:東京タワーから少し走って「愛宕神社」まで行きます。ただとても混むので、並ばずに雰囲気だけ味わって帰ることが多いです(笑)こういうのは気持ちが大事だと思っているので、出世の石段を登って良い年になりますようにと願っています。
――お正月にパフェを食べに行くというのもユニークですね。行きつけのお店があるのでしょうか?
ラウラ:キャピトルホテル東急のラウンジ「ORIGAMI」と「パフェバーagari」のものを食べるのが恒例になっています。どちらも黒豆や鏡餅などお正月らしい具材が入っていて、日本のクラフトマンシップやディテールにこだわるセンスに毎年感動しています。


ラウラ:日本では年末年始に行う “~納め” や “~始め” が大切にされていますよね。私の場合はサウナとパフェがライフワークなので、年末が近づくとサウナ納めやパフェ初めをどこでしようか考え始めてしまいます。ちなみにサウナはフィンランド発祥だと言われていますが、パフェは日本発祥の素晴らしい食文化です。
――ラウラさんは日本に住み始めてからもう14年目とのことですが、これまで印象に残ったお正月の過ごし方はありますか?
ラウラ:2007年に初めて日本の伝統的なお正月を過ごした時のことはとても印象に残っています。大晦日にはお寿司を食べながら紅白歌合戦を見て、朝起きたらお屠蘇とともにお雑煮とおせちを食べ、そのあと初詣に行ってとお正月のフルコースを満喫して、一生の思い出になりました。
それからおせちを手作りした時に “永遠に終わらないのではないか” と感じるほど栗きんとんの裏ごしに苦労したことも忘れられません。紅白歌合戦をやっている最中ずっと裏ごし……(笑)

いかがでしたか?
歴史ある寺社仏閣から元旦に営業しているお洒落なカフェまであり、都心ではお正月にできることの幅が広いのが魅力的です。そんな中で日本の伝統的なお正月を楽しむ岩本さんや、好きなものを存分に堪能するラウラさんの過ごし方には、お二人にとっての “豊かな暮らし” がにじみ出ているように感じました。
皆さまが過ごされたお正月の中にも “豊かな暮らし” のヒントが隠れているかもしれません。