アートをきっかけに街と繋がる保育園
「ロハスキッズ・センター クローバー」
アートと地域が結びつき、街を舞台にした芸術祭
2012年から約5年にわたって開催された、街全体をギャラリーに変える芸術祭「二子玉川ビエンナーレ」。東急や高島屋などの企業と地域の人々が連携し「二子玉川ライズ」をはじめとする周辺の店舗や広場を会場に、展示会やワークショップ、ライブペイントなどが実施されました。そのスタートのきっかけとなったのも、ロハスキッズ・センター クローバーの取り組みでした。
――中田さんは「二子玉川ビエンナーレ」実行委員会でも代表を務められていたそうですね。この取り組みを始められたきっかけはなんだったのでしょうか。
中田:これまでの取り組みの中で “本物” を目の当たりにして子どもたちが変わっていく姿を見て、社会全体で子どもたちに “本物” を届けられないかと考えるようになりました。そして園のプログラムを一緒につくっていたアートディレクターの梅沢 篤さんとともに構想したのが、街全体で開く芸術祭「二子玉川ビエンナーレ」です。


中田:実現のためには企業や地域の協力が必要不可欠で、街の再開発を行っていた東急さんや高島屋さんに直接プレゼンしに行きました。その時あったのはとにかく熱意だけでしたが、地域の人々との繋がりを求めていた企業のみなさんに想いが届いたんです。保育の仕事をしながら準備や協賛者探しに走り回り、振り返れば無我夢中の日々でしたね。

――「二子玉川ビエンナーレ」を通じて、子どもたちにどのような影響があったと感じますか。
中田:多くの大人と関わる機会を通じて “社会と関わっている感覚” や “地域の一員になっている感覚” を感じてくれていたのではないでしょうか。幼い時期にこうした経験をすることで、地域に興味を持つようになって、より社会性が育まれるのだと思います。
白柳:イベント当日、街の各地に広がる作品を目にした子どもたちが『自分たちの保育園がこんなに大きな影響を与えているんだ』と誇らしげにしていた姿が今でも忘れられません。

アートで育む自己肯定感、自然と地域が支える保育
――「二子玉川」という地域と共に保育を行う魅力はどこにあると感じていますか。
中田:二子玉川は多摩川の雄大な自然と温かな人の繋がりに恵まれています。天気が良い日には子どもたちと川辺で4〜5時間過ごすこともあり、季節の移ろいや自然の力強さを体いっぱいに感じられます。そうして遊んでいる時や散歩をしている時にはすれ違う方々からお声がけいただくこともあり、地域全体で子どもたちを見守ってくださる安心感も大きな財産です。自然を分かち合い、人との繋がりを実感しながら育つ経験こそが、子どもたちにとって最も価値ある教育になっているのだと思います。

――子育てにおける “地域” や “街” の重要性はどんなところにあると思いますか。
中田:特に乳幼児期の子どもたちは自分で環境を選ぶことができない上、まだまっさらなので、出会ったものや人から全てを吸収します。だからこそどんな人と出会い、どういう時間を過ごすかといった組み立てをしていく責任を、地域や街を含めた “社会” 全体で担っていく必要があると思っています。
――最後に、保育園の今後の展望についてお聞かせいただけますか。
中田:今後はアート教育を当園の子どもたちだけにとどめず、地域の子どもや大人も参加できるイベントが開催できればと思っています。子どもを預かる場所を超えて、この立地だからこそできる “地域に開かれた文化拠点” としての歩みを重ねていきたいです。

今回は街とともにアートを介して、子どもたちの感性を育む保育のあり方についてお話を伺いました。インタビューを通じて感じたのは、中田さんや白柳さんをはじめとする周りの “大人” ひいては “社会” が互いの繋がりを大切にする姿勢。それを間近で見ているからこそ、子どもたちは無邪気に社会と関わっていけるのではないでしょうか。次回はそんな保育を実践できる街「二子玉川」の魅力について伺います。

中田 綾 AYA NAKATA
ロハスキッズ・センター クローバー園長 2004年に二子玉川で「ロハスキッズ・センター クローバー」を立ち上げる。地域との繋がりを大切にし、アート教育や食育を取り入れながら、子どもたちの探究心と人間力を育む場づくりを続けている。

白柳 拓 TAKU SHIRAYANAGI
アートギャラリー「NAAM」統括責任者 2012年に同園に参画。映像業界での経験や人脈を活かし、アートプログラムを推進する。アーティストと子どもを繋ぐ役割を担い、アート教育を通じて地域と園を結ぶ活動を広げている。

ロハスキッズ・センター クローバー
二子玉川の多摩川沿いに位置し、2004年に開園した認可外保育園。自然とアートを柱に、子どもたちの感性や探究心を育む保育を実践している。子どもとアーティストが描いた壁画があり、外遊びや有機・オーガニック給食にもこだわる。地域に開かれた文化拠点として、保護者や地域住民との交流も大切にしている。 〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-3-2 TEL:03-5797-5420 https://lohaskidscenter-clover.com/