住む人に “安心” をもたらす、都内屈指の文教地区「小石川」

2025.10.17

日本有数の文教地区であり、「小石川植物園」や「播磨坂」の桜並木など緑豊かなスポットが多数あることから、特に子育て世代に支持されている東京・文京区の「小石川」エリア。「伝通院」をはじめとする寺社や史跡も点在し、散策しているだけで歴史を感じられます。今回はそんな街にご家族で暮らしているNさんにお話を伺いました。

徳川家と深い縁があり、文豪に愛された高台の街

「小石川」と聞いてまず気になるのはその範囲。現在、町名として残っているのは文京区小石川1~5丁目だけですが、「小石川後楽園」は後楽1丁目、「小石川植物園」は白山3丁目と、あちこちにその名を冠したスポットがあります。これは明治の始めに定められた行政区の名残なのだそう。春日通りや千川通りに挟まれた高台で、当時は富士山や東京湾などを見晴らす絶景の地だったそうです。

そもそもこのエリアの歴史は「小石川御殿」と呼ばれる江戸幕府の管轄地から始まりました。後に水戸徳川家の「小石川後楽園」が築かれ、江戸文化の中心地に。さらに徳川家の菩提寺[*]である「伝通院」の領地としても栄え、明治時代に入ると夏目漱石や永井荷風などの文豪が居を構えたのだそう。

*先祖代々のお墓があり、葬礼や仏事を行う寺のこと

オフィスやレジャー施設の狭間に豊かな自然を残す「小石川後楽園

同じく明治時代には「東京帝国大学」をはじめとする教育機関が設置され、教育・学術の中心地としての基盤を形成。現在では都内有数の文教地区として「東京大学」や「お茶の水女子大学」、「東京科学大学」といった名だたる国立大学が集っています。

小・中・高等学校も充実しており、とりわけ都立中学御三家に数えられる「小石川中等教育学校」は教育に力を入れるご家族から圧倒的な人気。街中を多くの児童や学生が行き交う光景が日常となっています。

日本を代表する建築家・隈研吾氏が設計したことで有名な「お茶の水女子大学」のキャンパス

知る人ぞ知る「小石川」との出会い

今回お話を伺ったNさんは奥さまとともに関西出身。約5年前、ご結婚を機に小石川に引っ越されました。2人のお子さまが産まれてからは、改めて『この街に住んで良かった』と実感しているそう。どんなところが気に入っているのか詳しく伺ってきました。

——小石川は “知る人ぞ知るエリア” というイメージがあります。なぜこの街を選んだのでしょうか?

Nさん(以下、N):10年ほど前に「播磨坂」のすぐ近くに住んでいる友人から花見に誘われたことがあるんです。そのときの印象がすごく良くて。この辺りは自然が豊かで本当に気持ち良く、交通の便も良いので、オンとオフをきちんと切り替えたいタイプの私にとって最適な場所だと思いました。

平日昼下がりの「播磨坂」。静かすぎず賑やかすぎず、穏やかな時間が流れる。

——以前はどちらにお住まいだったのですか?

N:独身時代は中央区の八丁堀に住んでいました。私にとっては住みやすい街ではありましたが、どちらかというと一人暮らしに向いているイメージです。賑やかですし、公園もそんなに多くないですしね。

生活に余白を生む豊かな緑

――以前住まれていた場所と比較していかがですか?

N:この辺りは子連れで遊べるスポットが色々あるのが良いですね。散歩しているとあちこちに公園がありますし、プールを併設したスポーツセンターなんかもあるんです。

N:散歩で言うと「小石川植物園」にもよく行きます。子どもたちが大好きな場所なので、年間パスも持っているくらいです(笑)。ここらの住人は結構、持っている方が多いんじゃないでしょうか。

ここは森を散策しているようなエリアや原っぱみたいに開けたエリアがあって、季節によって景色が変わるので何度来ても飽きません。大学の研究施設も兼ねているそうで、変わった植物があって大人の私でも楽しめるんです。都心とは思えないほど空いているところも気に入っています。

「小石川植物園」では木陰でゆったりと過ごしたり、日本庭園(右上)や東京大学が運営する公開温室(下)を見学したりと、さまざまな楽しみ方ができる。

——小石川といえば「播磨坂」の桜並木も有名ですよね。

N:花見の時期はかなり混んでいますが、とても美しく一見の価値があります。個人的には坂から「小石川植物園」に流れるコースが好きですね。この時期限定で近隣のカフェやレストランが出す特別メニューもおすすめです。

——季節ごとのお祭りも多いのでしょうか?

N:神田祭のような大きいお祭りはないですが、春は播磨坂で「文京さくらまつり」がありますし、6月には白山神社で「文京あじさいまつり」、夏は伝通院で「文京思い出横丁」が開催されます。

お祭りを目的に出向くことはあまりなく、散歩をしていたら偶然遭遇することがほとんどです。小石川のお祭りは地域密着型で、こぢんまりやっている感じが良いんですよね。

「文京さくらまつり」開催時の播磨坂。普段は静かな通りも、この日は多くの人々で賑わう。

生活も子育ても盤石な環境

——小石川と聞くと治安が良くハイソなイメージがありますが、実際の印象はいかがでしょうか?

N:飲み屋が少ないのもあってか、治安は本当に良いですよ。夜中に子どもを連れて散歩に行くこともあります。住民はあまり派手ではなく、落ち着いた方が多い印象です。それでいて駅前は学生が多く活気があって、そのバランスが絶妙だと思います。

——住環境としてはいかがでしょうか?

N:すごく住みやすいです。茗荷谷の駅前には大きなスーパーが2つありますし、播磨坂のあたりには個人経営の小さなスーパーがいくつかあって、買い物に困ることはありません。

それに地域を巡回するバスをたった100円で利用できるのも、子ども連れにとっては非常にありがたいです。丸の内線で東京駅まで1本で行けるので、実家がある関西にもアクセスしやすく、両親は遊びに来やすいと言ってくれています。

——子育ての環境としてはいかがでしょう?

N:ファミリー層が多いからか、区や街が子育て支援を積極的にしてくれている感じがします。「子供家庭支援センター」は予約制ですが、室内遊び場があって、1人目が生まれたときに妻がよく行っていました。そこで知り合ったママ友とは今でも家族ぐるみで付き合いがあるので、こういったコミュニティがあるのはうれしいですよね。

今なお残る下町の温かみ

——小石川のお気に入りスポットを教えていただけますか?

N:まずは昨日も子どもと行った銭湯ですかね。この近辺は昔ながらの風情あるところが多くて、銭湯好きとしては心が躍ります(笑)。よく行くのは「大黒湯」と「白山浴場」です。ご高齢の方が子どもに話しかけてくれたり、どこか下町っぽい雰囲気も感じられるんですよ。

N:それから小石川には個人経営のパン屋が多くあります。なかでも「Pan屋 キート」は知る人ぞ知るお店といった感じでおすすめです。比較的リーズナブルで、日替わりパンが充実しています。特にお気に入りはクリームパンとあんバターサンド、それからキーマカレーパンです。

播磨坂沿いの「パティスリー レセンシエル」のシュークリームも好きですね。ここは漫画『ワンピース』の作者である尾田栄一郎先生がケーキを買いに来たことがあるそうです。うちの子どもの誕生日ケーキもこちらで買っています。

天気がいい日はオープンテラスでお茶ができる「パティスリー レセンシエル

——おすすめのレストランはありますか?

N:昔から小石川に住んでいるママ友に聞いた「焼肉 和(かず)」が好きですね。子ども連れでも入れますし、昔ながらの街の焼肉屋さんという雰囲気で親しみやすさがあります。他にもおすすめのイタリアンレストランがいくつかありますが、全体的に子どもフレンドリーなお店が多い印象です。

なんとも味のある渋い外観が「焼肉 和」の目印

——最後にNさんにとって、豊かな暮らしとはどんなものなのか教えてください。

N:家族が安心して出かけられたり、子どもが安心して楽しく遊べる場所で暮らせるのは豊かだと感じますね。小石川は都心から30分弱電車に乗っただけで雰囲気がガラリと変わるので、私自身も仕事から帰ってきたらほっとできる安心感があります。

『ハイソで閑静な街』というイメージのある小石川。それでいてどこか下町っぽさも感じられ、住民同士がほどよい距離感で交流されている印象を受けました。また緑が豊かで公園が多く、治安も良いので子どもたちが安心して過ごせる環境も魅力です。Nさんにお話を伺って、小石川がファミリー層に人気の理由がわかった気がします。

Text by Kyoko Chikama
Edit by Sotaro Oka
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