自分だけの一点に出会える場所「KAMADA」

2022.12.02

北欧ヴィンテージ家具の輸入販売、買取・委託販売、撮影・展示会用レンタル(リース)、インテリアコーディネートの事業を手掛けていらっしゃる「株式会社KAMADA」。

前編ではその事業内容や、代表・鎌田 剛さんご自身の経歴、オーナー様との絆を感じさせるエピソード、北欧ヴィンテージ家具の楽しみ方など、様々なお話を伺いました。今回の後編では家具の持つ魅力や空間の仕立て方、実際に販売されている商品に触れられるショールームの紹介をしていきたいと思います。

株式会社KAMADA代表の鎌田剛社長(左)と、弊社代表の宅間(右)。

デザインを楽しむためのルールを守る

宅間:鎌田さんは北欧ヴィンテージ家具のどういった点に魅力を感じていらっしゃるのでしょうか。

鎌田:広く使用される量産品の家具は短いスパンで買い替えたり、壊れたら処分してしまいますが、ヴィンテージ家具は一度所有したものを長く使います。そのため、量産品とヴィンテージ家具では、良い物を持っているという所有感、使い心地、手触りの全てに違いがあります。

宅間:KAMADAのお客様は50代以上の方が多いと聞きますが、やはりそういった一流品の魅力に気が付くのは、ある程度年齢を重ねてからなのでしょうか。

鎌田:実際に『北欧ヴィンテージ家具を所有したい』と考えられるのは50代~60代のお客様が多いです。30代~40代は仕事や家庭のことで忙しく、自分のライフスタイルを充実させる余裕がありません。50~60代になって子供が巣立ってからようやく『自分のためにお金を使おう』、『良い物を使おう』と思って北欧ヴィンテージ家具に出会う方が多いですね。

しかし、それまでにも北欧ヴィンテージ家具との出会いがまったく無いわけではないでしょう。たとえば幼い頃、祖父や父親が大事にしていた椅子があった、もしくはたまたま立ち寄ったデザイナーの展示会で印象に残る作品に出会ったりと。様々な経験を重ねる中で、一流品に対する感性を養うことができるでしょう。

宅間:このショールームに置かれている家具はどれも繊細で、一目で普通の家具と違うと分かります。

鎌田:私達が日常で使用する量産型の多くは壊れにくいように作られています。家具は壊れては駄目。それは正しいのですが、皆が同じように壊れにくい家具を作っているのでは面白みに欠けてしまうのではないでしょうか。

私は人を選んでも良いと思っています。たとえばフィン・ユールの「NV45番」。建築家から家具デザイナーに転向した経歴から、彼の作る家具はマイスター達がチャレンジしようとしなかった大胆さを備えています。

ショールームにある「NV45番」は50年以上使われていますが、この繊細なデザインは強度の面では必ずしも万全とは言えません。何代ものオーナーさんが大事に使ってきたからこそ、今ここに残っているんです。デザインを楽しむためのルールを守る。そういう家具の楽しみ方があっても良いと思っています。

デザインを楽しむためのルールを守る。「NV45番」は粗末な使い方をすると壊れてしまう。そのためこの椅子を所有する人は、造形を理解した上でひじ掛けにしっかり手を置いて座るのだそう。

家具だけでなく、それを置くスペースにも配慮する

宅間:鎌田さんは北欧家具が似合う空間をどう仕立てていらっしゃるのですか。

鎌田:事業のお話しをしたときにも触れましたが、私は “インテリアアクセサリーの重要性” に注目しています。照明の当たり方ひとつでも家具の印象はぐっと変わりますし、どこに置くのかも重要です。

『家を新築する際に室内を丸ごとコーディネートして欲しい』というある個人のお客様のケースですが、家の一角にぴったり収まるサイズのチェストを見付けました。『これはここに置くためにある』と確信して『ぜひ置いてみてはいかがでしょう』とご提案しました。

北欧ヴィンテージ家具は一点一点が素晴らしい物ですが、それをどこに置くかでさらにその魅力を引き出すことができます。

宅間:どんなに良い家具でも、そぐわない空間に置いてしまうと魅力が半減してしまいますからね。

鎌田:お客様とお話をする中で、家具を置くスペースが問題となっていることは多々あります。中には家具をコレクションするためのストックヤードを持っているコレクターさんもいらっしゃいますが、ごく稀です。空間に対してサービスを提供することがヴィンテージ家具業界の課題であり、私の使命でもあると思っています。

宅間:北欧ヴィンテージ家具の購入はやはりオークションが主流でしょうか。どのような流れで購入を進められるのですか。

鎌田:競争や入札形式での売買を仲介する会社を「オークションハウス」と呼びます。事前にカタログを入手して商品の状態を問い合わせることもできますし、多くの場合 “プレビューデー” というものを設けています。5日程のこの期間では全ての商品を実際に見て触れることもできます。

実際のプレビューデーの写真。一点一点、商品を見て触ることができる。

下調べが終わったらいよいよオークションです。現地以外にも電話やインターネットを通してオークションに参加することができるので、当日は世界中から入札者(ビッター)が集まります。

現在はコロナ禍のためインターネットでの入札が主ですが、私も以前は年4回、コペンハーゲンのオークションに足を運んでいました。ビッター同士の読み合いや入札のタイミング、全てが駆け引きで、無事に落札できることも、できないこともあります。そのぎりぎりのせめぎ合いは結果だけ見ても分からないですね。

デンマークのオークション「Bruun Rasmussen(ブルーンラスムッセン)」の会場とプレビューデーの様子。日本ではまだ馴染みが薄いが、海外では様々なオークションが開かれている。

北欧ヴィンテージ家具との出会いを育む場

宅間:こちらのショールームでは実際に家具に触ることができますね。完全予約制と伺いましたが、一日に何組といったような制限を設けていらっしゃるのでしょうか。

鎌田:何組といった制限は設けておりません。北欧ヴィンテージ家具を所有したいと思った方にはまずショールームにお越しいただき、購入の方法や予算などの計画を立てていきます。海外のファニチャーオークションから購入する場合は下調べからオークション、日本への配送まで4~5ヵ月と長い時間がかかります。

商品が日本に到着したら、またショールームに足を運んでいただいて、張替えやメンテナンスの打ち合わせを行います。

宅間:以前「ベアチェア」を購入した時、驚きました。痛んだ椅子を世界中の人が高値で欲しがるなんて、知らない人が聞いたら信じられないと思います。

鎌田:50年以上も前に作られているので、どうしてもクッション材や生地に傷みが出てしまうんです。そこで専門の職人が全て分解し、新しい物に張り替える作業が必要になります。せっかくご自宅に迎え入れていただくわけですから、好みやどこに置くのかを考えて、生地見本を触りながら決めていただいております。

張り替えやメンテナンスが一通り終わったら、状態をチェックしていただいて納品。KAMADAではここまで行います。

「ベアチェア」のメンテナンスの様子。爪と呼ばれるアーム部の木部は汚れを気にせず使用でき、座った際に手に木の温もりを感じることができます。

宅間:ひとつの買い物にこれだけの時間をかけてじっくり向き合っていくわけですから、その時間も含めて贅沢な体験になりますね。せっかくですから六本木ショールームに置かれている商品をご紹介いただければと思います。

鎌田:まずは「NV45」。1945年に発表されたフィン・ユールの代表作です。“世界で最も美しい肘を持つ椅子” と称されるその繊細なカーブは、世界中にファンがいます。現行のモデルより背もたれが深くデザインされているのも、オリジナルならではの特徴です。

一目で美しさに囚われてしまいそうなエレガントなデザイン。この「NV45」は東京都美術館に展示されたこともあるそう。

続いては「NV46」。こちらもフィン・ユール作で1946年に発表されましたが、コストがかかりすぎたため即生産中止となってしまった稀少品です。ファンの間では『まず45番を持ち、次は46番を持つ』とも言われていますね。

最高級レザーで張り直され、経年変化したチーク材との相性は抜群。

宅間:KAMADAのショールームはこのような一流品に触れることが出来る特別な場所ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

———時代を超え、多くのオーナー様に愛されてきた名品の数々。KAMADAさんのショールームは、それらを身近に感じながら購入を検討できるラグジュアリーな空間。そこには世界中で永く愛されている北欧ヴィンテージ家具に自分の手で触れ、感銘を受けてきた鎌田さんの想いが込められています。

一流の北欧ヴィンテージ家具はネットでも見る事が出来ますし、展示会に出品されることもあります。ぜひご自身の目で見て、それが身近にある暮らしに想いを馳せてみてください。そして、ふと『自分のために本当に良い物を一つ手に入れたい』と思い立った時、KAMADAさんのショールームを訪れてみてはいかがでしょうか。北欧ヴィンテージ家具の “受け継がれていく価値” が、豊かな日々をもたらしてくれるかもしれません。

DATA

鎌田 剛

株式会社KAMADA 代表取締役
https://kamada-japan.com/

古き良き時代に誕生した北欧ヴィンテージ家具の輸入販売を行う。
定期的に海外で開催されるオークションに参加して希少ヴィンテージ家具の買付けを行い、木部メンテナンスから生地の張替えを含めたサービスの提供と行う。
また、家具コンシェルジェとしてヴィンテージ家具の査定やお客様のコレクションの管理を行い、後世によりよい形で継承していくためにサポートを行う。

Text by Mana Yasuda
Edit by Ayako Isetani , Misaki Matsumoto
Photos by Mitsuo Yamamoto , Fumiko Nakayama
         

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