クラシック家具で生活をアートにしつらえる「西村貿易」
“足し算” を楽しむインテリア
——お客様はどのような方が多いのでしょうか。
西村:クラシック家具は、長年の経験やこだわりを大切にされるお客様に特に好まれています。気に入ったものを一つひとつ揃えていく方もいらっしゃれば、新居を構えるにあたって弊社にトータルコーディネートを依頼される方もいらっしゃいます。まずご自宅から手がけて、会社の社長室や経営されている高齢者施設、店舗のサロンなどに取り入れてくださるケースも多いですね。


——少しずつ買い足していくケースもあるのですね。
西村:そうですね。モダンインテリアが “引き算” だとすると、クラシック家具には “足し算” の美学があります。少しずつ家具を買い足して、自分の理想の空間を作り上げていく、そんな楽しみ方ができるのが大きな魅力です。インテリアにこだわりのある方の中には、モダンなインテリアにクラシックのものを取り入れられる方も多くいらっしゃいますよ。

——モダンな空間にクラシック家具を取り入れたいという方に、何かアドバイスはありますか。
西村:まずはご自宅のテイストに合う小さなインテリアアクセサリーから始め、気に入ったらランプやサイドテーブルなど、だんだんと大きなものを増やしていくのが良いと思います。
お客様には家具選びを洋服に例えてお話しすることが多いですね。ソファやダイニングテーブルがスーツのようなベースだとすると、アクセントファニチャーやデコールはネクタイやポケットチーフのように、全体のコーディネートを引き立てる存在です。洋服のコーディネートにも正解がないように、インテリアもご自分の好みに従って楽しんでいただきたいですね。ここに来ていただければ、そのための選択肢が広がると思います。
またモダンなインテリアにおすすめしたいアイテムとして、シノワズリ[*]のプロダクトがあります。インテリア上級者に好まれることが多く、東洋的なテイストを持ちながらも西洋のフィルターを通しているため、日本のモダンな住空間に取り入れると空間をより洗練された印象に仕上げることができます。
[*]ヨーロッパの貴族や富裕層が抱く東洋の神秘的かつエキゾチックなイメージと、西洋の様式美を組み合わせて生まれたデザイン


——最後に、今後の展望をお聞かせください。
西村:大量生産や効率が重視される今の時代において、手間ひまのかかった “良いものづくり” をより多くの方に知っていただくことが、私たちの使命だと考えています。日本の伝統工芸と同じようにクラシック家具も、職人の高齢化に加え、効率優先の生産にシフトすることで技術の継承が危ぶまれているのが現状です。それを身近に感じているからこそ、守っていきたいという想いは強いですね。
また次の世代にも、良いものを長く使う喜びをもっと知っていただきたいです。そのために日本独自のライフスタイルに合ったご提案をするとともに、クラシックのエッセンスをモダンに融合した家具コレクションを入口として、現代の住空間に取り入れやすい家具をご紹介していきたいと考えています。

クラフツマンシップや歴史的・文化的価値、コレクション性と、プロダクトごとにさまざまな魅力を放つクラシック家具。その世界はいかがでしたか?
インタビュー全体を通じて、西村さんの言葉には良いものづくりが失われていくことへの危機感と、 “本物” の魅力を広く発信していきたいという沸々とした情熱が感じられました。大量生産・大量消費が重視される今の時代にこそ、私たちの “見る目” が問われているのかもしれません。

西村 広 Hiroshi Nishimura
西村貿易株式会社 代表取締役
京都出身。カナダ留学から帰国後、世界各国から厳選した家具やインテリアアクセサリーの仕入れやブランドディレクションに携わる。現在は代表として企業理念と美意識を体現するブランドコミュニケーションと空間デザインを手がけ、その世界観を国内外へ発信している。

西村貿易 東京ショールーム
2000年に白金台でオープンした「西村貿易」のショールーム。欧米8ブランドの家具だけでなくランプやデコール、シャンデリア、絵画などを取り揃え、それぞれの世界観を存分に味わえる。また全ブランドに精通したスタッフが常駐しており、家具の説明のみならず空間演出のスタイリングアドバイスまで担っている。
〒108-0071 東京都港区白金台3丁目2-10 白金台ビル1F
TEL:03-5793-3694
営業時間:10:00~18:00(月曜定休)
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