国際色豊かな“食”を支える「ヒルサイドパントリー代官山」

2025.12.19

都心の高級住宅街に根ざすスーパーマーケットをご紹介しながら、そのエリアの魅力を探る新企画がスタート。初回は知る人ぞ知る国際色豊かな「ヒルサイドパントリー代官山」を訪ねました。

ベーカリーとカフェが併設された輸入スーパー

お話を伺ったのは「ヒルサイドパントリー代官山」(以下 ヒルサイドパントリー)を運営する株式会社朝倉商会の朝倉万理さん。朝倉家は代々、代官山一帯の土地を所有してきた大地主。一族が運営する朝倉不動産が、建築家の槇文彦氏とともにヒルサイドテラスをつくり上げました。

そんな朝倉不動産の役員も兼務されている万理さんがヒルサイドパントリーに携わるようになったのは2011年から。現在はオーナー兼代表という立場でありながら、日々店頭にも立っていらっしゃるそう。

お店が入るヒルサイドテラスG棟。通り沿いに小さな看板が出ている。

――「ヒルサイドパントリー代官山」はいつできたのですか?

朝倉万理さん(以下、朝倉):1993年です。ヒルサイドテラスは1969年にA・B棟が完成し、そこから30年以上かけて建物を増設していきました。1992年頃、このG棟ができた時に父がヒルサイドパントリーを立ち上げたのが始まりです。

――当初はどのようなお店だったのでしょうか。

朝倉:“パンとコーヒーとスパイスという食の三本柱を扱う店としてスタートし、それは今も変わりません。オープン時から焼きたてパンを提供していたので、ベーカリー色が強いですね。

旬の鎌倉野菜、空輸のフランス・イタリア野菜、南アルプス産のオーガニック野菜が並ぶ。秋には生ポルチーニや最高級白トリュフも。
淹れたての美味しいコーヒーを店内のスタンドで。エスプレッソはイタリアの最高級マシン、ドリップは自家焙煎の豆を使用。

――輸入スーパーというイメージがありました。

朝倉:出店当時は珍しかったオリーブオイルや変わった形のパスタなど、日本ではなかなか見かけないものを扱ってきました。ポップアップ的に日本の食材を置くことはありますが、基本的に海外製品ばかりです。

(上)種類豊富なオリーブオイルとパスタ。(下)カラフルなパッケージのオイルサーディンはポルトガルからの輸入品。

常連客もスタッフも国際色豊か

――どんなお客様が多いですか?

朝倉:平日はこの界隈で働いている方、近隣のお子様連れの方、国際結婚をされているご夫婦も多いです。それと大使館の方ですね。お向かいのデンマーク大使館をはじめ、エジプトやマレーシアの大使館もあるので、デリで提供するお料理にはそこで働く方々に教えていただいた、少しエスニックな味付けのものもあります。

――ヒルサイドパントリーならではのレシピですね。

朝倉:現在はパンのコーナーにフランス人スタッフがいるので、カヌレやマドレーヌ、フィナンシェなど焼き菓子も販売しています。働くメンバーの出身地は日本だけではなく、台湾、香港、バングラデッシュと国際色豊かです。

お昼時の店内は焼きたてパンの香りに包まれる。
テーブル席ではデリのランチやサンドイッチをはじめ、購入したワインを飲むことも可能。

――ホームパーティーなどにもご対応いただけるのでしょうか?

朝倉:お持ち帰りいただけるものであれば、お客様のご要望をその都度伺い、対応しております。これまでにはサンドイッチやデリの盛り合わせや、ラザニアをドーンと1台丸ごとというオーダーもありました。また、ヒルサイドテラス内のスペースで個展やイベントが開催された際のレセプションに、フィンガーフードを提供する事もあります。

毎年11月に開催される「猿楽祭」

――地域のイベントに参加されることもありますか?

朝倉:ヒルサイドテラスが主催している「猿楽祭」が毎年11月にあり、当店からはポルトガルの缶詰、イタリアのお皿、フランスの食品など、インポーターさんたちが出店します。広場にたくさんブースが並んで活気がありますよ。

普段はヒルサイド内にあるショップが路面に出店する年に一度のイベント。

朝倉:町内会による奉納祭では、お神輿の最後の休憩所がヒルサイドテラスになっているので、あんぱんとクリームパンを提供しています。120個くらい焼きますが、あっという間になくなりますね(笑)。それ以外では、毎年夏に代官山蔦屋書店さんが主催される「爽涼祭」に景品を出すなど、地域のイベントには積極的に参加するようにしています。

豊かな緑が街を守ってくれているよう

ご実家がヒルサイドテラスの中にあるという万理さん。現在は代官山と鎌倉の二拠点生活をされています。代官山で長年暮らしているからこそわかる街の魅力についてお伺いしました。

――代官山が住民に愛される理由はどんなところにあると思われますか?

朝倉:渋谷から一駅ですが、すごく静かなところです。お店がたくさんある “奥渋” ともちょっと違って、落ち着いているんですよね。夜は20時位から静かで、車の音もそれほどしないし、大声を上げる人もいないです。そういう意味で生活はしやすいと思います。

朝倉:それに、代官山は都会の真ん中でありながら緑が多い。とくにヒルサイドテラスの敷地内にある「猿楽神社」のあたりは大木が多くて、真夏でもひんやりするんです。同じ炎天下でも、体感として2℃ほど涼しい気がして、それがすごいなと思います。

――街路樹が多くて、通りの景観が美しいです。

朝倉:旧山手通りは建物が低層で空が高く見えるので、他の都心の街とはまた違った景観が味わえますよね。開発後数年をかけて、電柱も地中埋設にしたんです。

――街並みが美しいのも朝倉家が一帯の開発に携わってこられたからなのでしょうか。

朝倉:『電柱をなくそう』という計画については、ここ10年の間にさまざまな集まりで論議されてきました。私の父も朝倉不動産として発言をしていますが、その計画の一環として、代官山交番前の交差点にあった歩道橋も3年ほど前に撤去したんです。だいぶすっきりしました。

ヒルサイドパントリーのあるG棟のあたりは電柱がない。

――今後の展望について教えてください。

朝倉:もっとお客様が降りてきてくださると良いなと思っています。ヒルサイドテラスには『街の美観を第一に、商業性を抑える』というコンセプトがあって、街の景観に配慮する朝倉不動産と、お客様を迎えたいヒルサイドパントリー…私は双方に関わっているからこそどう両立させるか…悩ましいです。

――道行く人に、こんな素敵なスーパーが地下にあるのを教えてあげたいですね。

「ヒルサイドパントリー」からみた代官山の魅力。いかがでしたか。

街の佇まいから感じられる品格とセンスの良さは、代官山に根付いた名家がヒルサイドテラスを中心とした街づくりに長年関わってきたからこそ成し得たもの。あえて商業性を抑えているため、外観では目に付きにくいですが、一歩中に入るとバラエティに富んだショップ、レストランのほかライブラリーなどもあり、地元の人たちに愛されています。この街の国際色豊かな “食” を支え続ける「ヒルサイドパントリー」の、今後の展開からも目が離せません。

Text by Kyoko Hiraku
Edit by Saori Maekawa
DATA

朝倉万理 Mari Asakura

ヒルサイドパントリーオーナー兼代表
日々店頭に立ちながら代官山の食を支えている。代官山と鎌倉で二拠点生活を満喫中。

ヒルサイドパントリー代官山

1993年創業。ベーカリー、デリカテッセン、カフェ、グロサリーを併設した輸入食料品店。パンやデリカッセンは店内で飲食可能。上質で多国籍なレシピは代官山に住む人、働く人の胃袋を掴んでいる。
住所:〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町18-12 ヒルサイドテラスG棟 B1
電話:03-3496-6620
営業時間:10:00〜19:00
定休日:水曜日 (※祝日の場合は営業)
HP:hillsidepantry.jp
Instagram:hillsidepantrydaikanyama

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