成城の街が育んだDNAを全国へ。スーパーマーケット「成城石井」
小田急線「成城学園前」駅に1号店を構え、首都圏を中心に全国展開をしているスーパーマーケット「成城石井」。バイヤーが世界中から見つけ出したワインや菓子などの豊富な輸入商品や国内の名産品、自家製惣菜やスイーツを取り揃え、食通や富裕層の中にも多くのファンを抱えています。
一般的なスーパーマーケットとは一線を画す “成城石井ブランド” はどのように確立されていったのでしょうか。創業の歴史から商品づくりの哲学、これからの展望に至るまで、株式会社成城石井の執行役員の五十嵐隆さんにお話を伺いました。
ゆとりある時間が流れる成城の街
世田谷区成城の街は1925年、東京市牛込(現在の新宿区)にあった成城学校が分離し、現在の場所に移転したことから始まります。1927年には小田急線の開通とともに「成城学園前」駅が開業。
多忙な政財界の人たちが都心に集中する一方、経済的・時間的ゆとりのある世帯は成城に居を構えるようになり、以降は住宅街や商店街も擁する学園都市として発展を遂げていきます。

1932年に東宝の撮影所ができたことで周辺には映画監督や俳優、文化人も集まり、成城はさらに文化的な雰囲気を湛えた街として成長していきました。そうした背景について五十嵐さんは『今でも駅を降りて歩くと、成城ならではの独特な空気を感じます。ゆとりある時間を過ごし、海外文化にも慣れ親しんだ方々が住む街ですよね。』と語ります。
街の人のニーズに応え、独自の品揃えを確立
――成城石井の創業の経緯を教えてください。
五十嵐隆(以下、五十嵐):1927年、小田急「成城学園前」駅開設と時を同じくして、成城石井の原点となる「石井食料品店」が開業しました。2代目社長 石井良明氏の両親が営んでいた小さな店で、当時は果物を中心に、缶詰を主に扱っていたそうです。夜中の12時まで営業していて、お酒を飲んだお父さんたちがご家族へのお土産に果物を買って帰る、そんな時代だったと聞いています。

地方や海外に行く機会が多く、さまざまな食文化を知る方から『地方や海外で出会うような食品は手に入らないのか』と尋ねられることも。そうした声に応えるうちに当時の食料品店では珍しい、独自の品揃えが少しずつ増えていったそうです。
チェーンスーパー黎明期に訪れた転機
――石井食料品店が、スーパーマーケットの成城石井へと変わるきっかけは何だったのでしょうか。
五十嵐:1950年代から60年代にかけて、スーパーマーケットが日本で急速に広がる中、1965年に駅直結の「OdakyuOX」がオープンし、それが大きな転機となりました。品揃えの豊富さや、魅力的な売場環境を選ばれるお客様も多く、店は一気に赤字に追い込まれ、存続の危機に陥ります。1973年に石井氏が両親の事業を継承し、1976年にスーパーマーケット化を決断。店名も「成城石井」に改め、新たなスタートを切りました。

五十嵐:当時チェーン展開をしているスーパーは、どの地域でも同じ商品が並んでいることが当たり前でした。しかし、成城石井はそれと同じことをやっても仕方がない。もともと石井食料品店の時代からお客様のリクエストに応えてきたわけですから、スーパーマーケットという業態になっても『成城のお客様が本当に欲しいものを売る』というスタンスは変わらなかったそうです。
戦略を徹底し、競合店とは一線を画した独自の品揃えにより、成城という街のスーパーとして、共存共栄することに成功しました。これが実現できたのも、目と舌が肥えた成城のお客様に鍛えていただいたからこそ。この経験が成城石井の原点となっています。
高品質な商品を、コストを抑えて提供する
――“目と舌が肥えた方” が成城には多いのでしょうか。
五十嵐:そうですね。文化的な感覚をお持ちで、質の良いものを求める方が多いと思います。しかし単に高級なものをお求めになるわけではなく、品質に見合わないものには手を出さない、それは昔も今も変わらないと思います。

五十嵐:だからこそ石井氏は『高品質な食材をできるだけコストを抑えて、お求めになりやすい価格でお客様に届ける』ことにこだわり続け、それは今でも成城石井のDNAとして残っています。成城石井を “高級スーパー” と捉えている方も多いのですが、よくご利用される方には『こんなに良い商品がこの価格で買えるなんて』と仰っていただくことがよくあります。品質と価格に納得してお買い物をしていただけることは大変ありがたいですね。
――成城店にはどんな世代の方がお買い物に来られますか。
五十嵐:街自体が成熟していることもあり、60〜70代のお客様が多い印象です。ただ最近は、成城周辺に住まわれる若い方も増えていて、来店も20~30代の割合が増えています。

五十嵐:また、成城学園の先生方や学生さんにもご来店いただいています。当社の採用面接に成城大学の学生さんがいらして『卒業までの4年間、成城石井のお弁当を食べていました』『成城石井のファンになったので志望しました』と仰ってくださることもあり、嬉しい限りです。
――現在、成城石井は関東・中部・関西を中心に200店舗以上を展開していらっしゃいます。店づくりではどのような点を意識しているのでしょうか。
五十嵐:品揃えとしては、地域色を強く出すというより、弊社が扱う約12,500アイテムの中から最適な商品を選び取って店舗をつくっています。現在は半数以上が駅ナカ店舗なので、その駅をご利用されるお客様に合う商品構成を練っています。
出店リサーチは万全でも、実際に営業を始めてみないとわからないことがたくさんあり、開店後1週間や1ヶ月で棚割りをがらりと変えることも珍しくありません。

五十嵐:例えば駅ナカ店舗で、朝は通勤客が急いで買い物をしているとわかれば、手に取りやすい商品の配置を考えますし、夕方によく売れる商品なら時間に合わせてボリュームを調整することもあります。現場での商売の感触を大切にしながら、非常にフレキシブルな店舗運営を行っているのが特徴です。
――確かに、立ち寄りやすい駅ナカの店舗をよく見かけますね。出店候補地はどのように選ばれているのでしょうか。
五十嵐:私たちが重視しているのは『おいしくて高品質な食をコストパフォーマンスよく楽しみたい』というニーズがあるかどうかです。それは必ずしも高所得者が多いエリアというわけではありません。例えば “おいしいものを楽しみたい高齢者が多い地域” や ”食への関心が高い若い夫婦が多いマンションエリア” など、こうした場所では成城石井のニーズが高いと感じます。

五十嵐:実際、街づくりにあたってデベロッパーの方が地域住民の方にアンケートを取ると『近隣にできてほしい店舗』の上位に名前を挙げていただくことも多いんです。そうした場所に出店すると反響も大きく “街が活性化する” と喜んでいただけます。

▶次の100年への展望とは?

五十嵐 隆 Igarashi Takashi
株式会社成城石井 執行役員 。 大学卒業後、大手製薬企業で宣伝を担当。続いて大手広告会社グループにてコミュニケーション戦略やイベント企画を学び、世界的アパレル企業で企業理念の浸透、社内外広報を手がける。2013年より成城石井に参画し、社内外への情報発信やブランド強化を牽引。現在に至る。

成城石井 成城店
小田急線「成城学園前駅」北口徒歩1分。1927年に創業した食料品店を発祥とする、直輸入ワイン、チーズ、高品質な自家製惣菜、菓子などを扱うスーパーマーケット。2023年11月に「温故知新」をコンセプトとして旗艦店へ全面リニューアル。約137坪の店内で生鮮食品やワイン・ウイスキーの品揃えを強化し、成城店限定の店内調理惣菜や「成城石井 BAKERY」のパンを東日本で初めて導入するなど、地域の食を支える存在となっている。 住所:〒157-0066 東京都世田谷区成城6-11-4 電話:03-3482-0111 営業時間:9:30~23:00 定休日:なし HP:seijoishii.co.jp





