建築家が空間を読み解き・創造する「カリモクケース」の家具
日本を代表する木製家具メーカー「カリモク家具株式会社」。同社が手掛けるブランドの一つ「Karimoku Case(カリモクケース)」は、建築家とタッグを組み空間に寄り添うプロダクトを生み出しています。ブランドマネージャーの山室寛基さんに、カリモクケースが目指す未来像やものづくりへの想いを伺います。
“木とつくる幸せな暮らし” を目指す国産家具メーカー
「カリモク家具」は1940年、愛知県刈谷市に創業した、日本を代表する木製家具メーカーです。小さな木工所から始まり、1960年代に本格的に家具事業へ参入しました。基本理念に『品質至上』、グループミッションとして『木とつくる幸せな暮らし』を掲げ、木材の調達から製造まで一貫した国内・自社生産を実現。人間工学に基づいた使い心地や耐久性の高さを誇り、長く愛用できる高品質な家具として国内外で高く評価されています。

カリモク家具のライフスタイルブランドとして2019年にスタートした「カリモクケース」。デザインディレクターにデンマークのデザインスタジオ 「ノーム・アーキテクツ」を迎え、デザイナーに日本の建築家・プロダクトデザイナーの芦沢啓治、また2022年にはイギリスの建築家ノーマン・フォスターが参画しています。
立ち上げから携わり、現在はブランドマネージャーとして全てのプロジェクトの指揮を執る山室さんにお話を伺いました。

1つのプロジェクトから生まれたライフスタイルブランド
――ブランド設立の経緯を教えてください。
山室寛基さん(以下、山室):2018年に、ノーム・アーキテクツと芦沢啓治さんが携わった都内のマンションリノベーションプロジェクトに、カリモク家具が参画したことから端を発しています。空間に対して家具だけではなく建具も含め、木製品として作れるものの幅を広げていこうという取り組みだったのですが、それがプロジェクトの枠を超え、多数あるカリモク家具の1ブランドとして独立することになったんです。

――ブランド名の由来は何でしょうか。
山室:1940年代、アメリカの建築雑誌「アーツ&アーキテクチャー」から始まった「ケース・スタディ・ハウス」という実験的な住宅建築プログラムをオマージュしています。戦後の新しい生活様式を見据えて始まった活動で、著名な建築家に経済的かつ複製しやすいモデル住宅を依頼したとされる試みです。私たちも『建築家とともに将来を見据えたプロダクトを提案し、新しい住まい、暮らし方、豊かな生活に寄与できるブランドにしていきたい』と願い、そんな想いを込めて名付けました。
また、我々が特定のプロジェクトを “ケース” という単位で呼称していることも名付けの理由の一つです。それぞれのケースに紐付く家具を、建築家の方々と一緒に考えながらつくり出しています。

建築家と考える、空間のニーズに応える家具
――カリモクケースの特徴を教えてください。
山室:一番は、空間との親和性の高さです。テーブルやソファなど、家具を単体の “モノ” として機能やデザインを考えるのではなく、空間全体を一つとして捉え、家具を設えています。リアルな空間に対して、建築家の方がその場所での実際の暮らしや過ごし方を想像し、『この空間にはこんな機能、こんなデザインの家具が必要だ』というアイデアがプロダクトに落とし込まれています。
現在はマンションなどの居住空間をはじめ、レストラン、ホテル、店舗など、国内外を問わず様々なプロジェクトに合わせて家具を仕立てています。


ブランドを象徴する一脚のダイニングチェア
――カリモクケースのデザインの特徴を教えてください。
山室:デザインのコンセプトとして、『静謐な美への敬愛』『素材の豊かな表現』『時間に左右されない魅力』という3つの柱を立てています。北欧デザインの特徴であるミニマルな機能美、素材を重んじる日本らしい美的感覚、それらをうまくクロスオーバーさせて、“普遍的なもの” を作っていくことを目指しています。
たとえば、最初のプロダクトであるチェア「N-DC01 | Dining Chair」。これはまだブランド自体が計画段階だったころ、弊社工場でライン生産されていたダイニングチェアにノーム・アーキテクツのメンバーが着目したことがデザインの元となっています。

山室:北欧的なデザインの要素もありながら、接合部の木目の美しさは木にこだわるカリモク家具ならではのもの。一見、細く華奢な印象を受けますが、座ってみるととても安定感のある作りになっています。
――木部の風合いも落ち着きがあり、上品な印象ですね。
山室:この椅子に使用しているケヤキは木目が特徴的で、昔から和家具によく採用されてきました。近年のライフスタイルや嗜好の変化により需要が減ってきているのですが、チークを思わせる明るいブラウンの塗装を施すことでケヤキの木目が美しく映える風合いに仕上げています。

山室:プロジェクトごとに製品が生まれるブランドの特性上、定番や代表作があるわけではありません。ですが「N-DC01」は、流行や時代の変化に囚われず長く愛していただけるような、ブランドを象徴するプロダクトだと思っています。
どんな時代、どの角度から見ても優れたデザインを目指して
――カリモクケースの発足から約6年が経過しました。現在手掛けているプロジェクトや、今後の展望をお聞かせください。
山室:これまで、プロジェクトとしては12ケース、約50製品を開発してきました。現在は、いくつかの新たなプロジェクトについて具体的な検討を進めており、今後も年に3つほどのプロジェクトを手掛けていきたいと考えています。
ブランドとしてはもっと幅広く、国内だけではなく国外に対しても訴求していき、よりグローバルな認知を高めていきたいと思っています。今は主にアメリカや欧州の市場に対して、どの国であっても安心してお使いいただけるように対応を進めているところです。


山室:カリモクケースは数あるカリモク家具のブランドの中の1つですが、活動を通じて、カリモク家具全体の国際的な認知を高めるとともに、私たちが掲げるミッションである “木とつくる幸せな暮らし” を、より広く皆さんに体験していただけるブランドとして成長していきたいですね。使う方の生活に馴染み、どんな時代のどの角度から見てもデザインとして優れている家具を目指しているので、長く愛用していただければ幸いです。
長く使い続けることが一番のサステナビリティ
―― “長く楽しむ” という点で言うと、カリモク家具はサステナビリティの面でもものづくりへのこだわりが深いですね。
山室:そうですね。つくって終わりではなく、アフターサービス体制もしっかり整えています。たとえばソファであれば、木部は木本来の耐久性があるので、丁寧に扱っていただければそれだけ長くお使いいただけます。座面や背面などのクッションや張り地などはお使いいただくうちに徐々にダメージが出てきますが、弊社にお問い合わせいただければ、有償のリペアサービスも承っています。
サステナビリティ(持続可能性)という言葉は色々な捉え方ができると思いますが、私たちが考える一番のサステナビリティは『長く使うこと』です。家具としての耐久性はもちろん、デザインや機能性においても、長く使い続けられるものを提供し続けたいですね。

山室:メーカーとしては、売上や事業継続のためにある程度のサイクルで新製品を発表していかなければいけませんが、それはある意味短いサイクルでデザインを消費しているともいえます。『果たしてそれは本当にサステナブルなのだろうか?』『 “木とつくる幸せな暮らし”が実現できているのだろうか?』そういう自分たちへの問いかけが、カリモクケースの発足にも繋がっています。建築家の方々と協同し、空間に対するリアルなニーズに応えていくこと、それこそが “幸せな暮らし” への一歩になるのではと考えています。

カリモクケースは、目の前にある家具だけではなくその先に広がる空間や経年の美を見つめ、建築家と共に暮らしの本質を形にしています。後編では、カリモク家具の新たな挑戦の場、「Karimoku Commons Tokyo(カリモクコモンズトウキョウ)」を訪ね、木製家具メーカーとしての矜持を深堀りしていきます。

Karimoku Case カリモクケース
カリモク家具のライフスタイルブランドとして2019年にスタート。デザインディレクターに 「ノーム・アーキテクツ」、デザイナーに日本の建築家・プロダクトデザイナーの芦沢啓治、また2022年にはイギリスの建築家ノーマン・フォスターが参画し、カリモク家具が培ってきた木材加工技術と北欧、日本の美意識が融合した家具を世界に展開している。 HP:karimoku-case.com





