東京の玄関口で、自然に囲まれた心地よい暮らしを―「御殿山」

2025.03.28

東京の玄関口の1つである品川駅から徒歩圏内にありながら、自然が豊かな由緒ある高級住宅街『御殿山』。周辺には歴史を感じる建物や大使館なども多く、治安が良くて住みやすいエリアと評判です。そんな御殿山に長年住んでいる「台所漢方」の漢方栄養士である古尾谷(ふるおや)奈美さんに街の魅力を伺ってきました。

三代将軍 徳川家光が愛した街

品川で『御殿山』と聞いて、いまいちピンとこない人も多いかもしれません。それもそのはず、現在品川区に御殿山という地名は残っていないのです。またその範囲にも諸説あり、主に品川区北品川3丁目から6丁目付近の高台を指すとされています。そもそもなぜ “御殿山” という名が使われたのか。歴史を辿っていくと、その由来は江戸時代まで遡ることになります。

地名はない[*]ものの「御殿山トラストシティ」や「御殿山通り」のように、現在でも施設や道の名称に使われている。
*東京都武蔵野市には現在も「御殿山」という地名が存在している。

江戸時代初期、京急本線の北品川駅から青物横丁駅にかけたエリアには、東海道五十三次の第一宿である「品川宿」がありました。それを見下ろす丘陵地に徳川家康が「品川御殿」を建てたことが、地名の由来だと言われています。ちなみに風光明媚な御殿山を大変気に入っていたのが三代将軍 徳川家光。この地で鷹狩りや茶会などを楽しんでいたそうです。

御殿山の成り立ちが記された看板。

八代将軍 徳川吉宗の時代になると桜の植林が進められ、御殿山は庶民にも開放されるようになりました。現在も都内有数の桜の名所となっており “しながわ百景” に認定されている「御殿山庭園」をはじめ、お花見を楽しめるスポットが点在。毎年3月には「御殿山さくらまつり」が開催され、街をあげて盛り上がるそうです。

桜の季節の「御殿山庭園」

今では目黒から品川にかけて広がる高台を指す “城南五山” の1つに数えられる御殿山。江戸時代から大名屋敷や邸宅が建ち並んでいたこともあり、静かで落ち着いた環境が魅力です。それでいてJR山手線や東海道新幹線などが通る品川駅から徒歩10〜15分程度、大崎駅や五反田駅までも徒歩圏内と、交通の便が良い街でもあるのです。

東京の玄関口の1つとして、多くの人々でにぎわう品川駅。

治安が良くて穏やかな街

学生時代に同じ品川区内から御殿山に引っ越したという古尾谷奈美さん。お母様の代から続く「台所漢方」がある中目黒に暮らしたこともあるそうですが、現在は慣れ親しんだ御殿山に戻られたとのこと。長く住んでいるからこそわかる街の変遷や魅力、御殿山が好きな理由について語っていただきました。

中目黒のお店でインタビューにお答えいただいた古尾谷さん。

――御殿山はハイソなエリアというイメージがありますが、実際はどんな方がお住まいなのでしょうか。

古尾谷奈美さん(以下、古尾谷):6年くらい前まで「品川プリンスホテル」のプールにほぼ毎日通っていて、そのときにお会いした方々は皆さんご近所に住まわれていました。旦那さんが大手商社に勤めている奥様やIT企業を経営している女性社長、かつて外務省に勤めていた方の娘さん……。すごく素敵な方々ばかりで、毎朝お会いするのが楽しみだったのを覚えています。最近は新しいマンションがいくつかできて若い方も増えてきていますが、昔から住んでいる方が多い印象ですね。

――品川駅から徒歩10〜15分程度ですが、街の雰囲気はいかがですか?

古尾谷:品川駅周辺はにぎやかですが、御殿山はすごく静かで穏やかです。ただ、自宅までの道のりは街灯が少なくて暗い上、20時くらいになるとほとんど人も歩いていません。近道で公園を通るのですが、そこが都心とは思えないほど暗いのでよく友人に心配されます(笑)。

北品川5丁目付近。人がほとんど歩いておらず、 閑静な住宅街が広がる。

――街灯が少なく人気(ひとけ)がないとなると治安の面が心配になります。

古尾谷:それが暗い道も全然怖くないですし、危ない目にあったことも一度もないんです。最近は物騒な事件をよく耳にしますが、御殿山では一切聞いたことがなくて。すごく平和ですよ。

不便も気にならない。鳥のさえずりで起床する贅沢な環境

――御殿山のどういった点に魅力を感じていますか?

古尾谷:都心なのにすごく緑が多くて静かなので、朝は鳥のさえずりで起きています。それは学生時代から変わらずで、もう何年も目覚まし時計は使っていません(笑)。私は中目黒にも住んだことがあるのですが、そのときは鳥のさえずりが聞こえないだけでなく、夜まですごくにぎやかでした。その経験もあるからか、より魅力を感じています。

冬でも緑豊かな「御殿山庭園」。

古尾谷:低層のマンションが多くて圧迫感がないのも好きですね。大崎のほうに下っていくと背の高い建物が多いので、御殿山に帰ってくるとなんだかホッとします(笑)。

――鳥のさえずりで毎朝起きるなんて素敵ですね。ちなみに不便な面はありますか?

古尾谷:近くに食料品を調達できるところがほとんどないことですかね。しかもリニア中央新幹線の開業に向けて、品川駅の高輪口にあったスーパーも撤退してしまって。ただ近所にそういった施設ができることで街の静けさがなくなってしまうのであれば、私は不便なままでいいです。だって最近はネットスーパーも充実していますし、ちょっと歩いたソニー通り沿いにコンビニもできましたしね!

ソニー通り沿いに建つ「ガーデンシティ品川御殿山」。コンビニが入っており、ちょっとした買い物に便利なんだそう。

――長く住んでいるからこそ感じる、昔と今で変わっている点があれば教えてください。

古尾谷:私の家は品川駅も大崎駅も五反田駅も同じくらいの距離なのですが、特に大崎駅までの道が変わりましたね。あまり利用しない駅だったので、久しぶりに行ったらその変化に驚きました。昔は小さな工場がたくさんあったのですが、現在はマンションやオフィスビルが建って違う街みたいです! 大崎駅までの一本道もすごく綺麗に舗装されているので、歩いていて気持ちが良いですよ。

綺麗に舗装された御殿山から大崎駅までの一本道。

自然と共に暮らす心地良さ

――御殿山で古尾谷さんが好きな場所、よく行く場所はありますか?

古尾谷:東京マリオットホテル」の朝食ブッフェにはたまに行きますね。緑が多くて静かな公園もあって、都会の喧騒をさらに忘れられるんです。職場が常ににぎやかな中目黒なので、御殿山で過ごす休日はのんびりと過ごすることが多いかも。

それから「三菱開東閣」も好きですね。ここは三菱グループの迎賓館として使われているそうで、現在は一般に公開されていないんですが、前を通るたびにクラシックで素敵な建物を思い出します。お庭も広々としていて気持ちが良いので、また入ってみたいですね。

立派な門構えの「三菱開東閣」。

古尾谷:御殿山は在外公館が多いエリアでもあるのですが、パッと目を惹く建物はだいたい大使館だったりします。あと、新しい建物ができたと思ったら高級老人ホームであることが増えていますね。暮らしやすい街なので、ここから離れたくないと願う方が入居されるのかもしれません。

「御殿山トラストシティ」のすぐ隣に建つ有料老人ホーム。新築マンションさながらの洗練された建物が印象的。

――最後に、古尾谷さんにとって豊かな暮らしとはなんでしょうか。

古尾谷: “心地よい住まい” が豊かな暮らしに繋がるのではないでしょうか。それは建物だけでなく環境も関係してくると思います。緑に囲まれ、家にたくさん光が入り、毎朝鳥のさえずりで目を覚ます。心地よく過ごすことによって心が安定して、仕事も頑張れる。昔はこれが当たり前だと思っていましたが、一度ほかの街に住んでみて改めて素晴らしい環境だったと気づきました。御殿山に住んでいると、毎日豊かさを感じられるんです。

名前を聞いたことはあっても、意外と知らなかった御殿山の魅力。古尾谷さんの優雅な雰囲気や穏やかな話し方は、ほかとは一線を画す豊かな環境が生み出したのだと思いました。そして御殿山に魅了されて、長く住まう方が多いのにも納得がいきます。とても素敵な街なので、みなさんも一度足を運んでみてはいかがでしょう。

Text by Kyoko Chikama
Edit by Sotaro Oka
DATA

古尾谷奈美 FURUOYA NAMI

台所漢方 漢方栄養士

お母様が経営していた「台所漢方」を受け継ぎ、漢方栄養士として活躍。現在は未病(病気ではないが放っておくと病気になる可能性が高い状態)段階でのアプローチに力を入れており、さまざまな悩みに合わせた漢方や漢方茶を提案している。




台所漢方

1976年に創業した老舗で、2011年に新しい漢方ライフの提案の拠点としてリニューアル。大きな窓から自然光が燦々と降り注ぐ明るい店内では漢方薬はもちろん、オリジナルブレンドの漢方茶などをラインナップしている。おしゃれなパッケージの漢方茶はギフトにもおすすめ。

東京都目黒区東山1-3-3アルス中目黒2F
TEL:03-3794-4976
daidokorokampo.com

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