100周年を迎えたデンマーク発の音響ブランド
「バング & オルフセン」

2026.05.22

昨年100周年を迎えたデンマークの音響機器ブランド「バング & オルフセン」。その魅力を前後編に渡ってお伝えしていきます。前編では歴史とものづくりの理念について、「バング &オルフセン 表参道」のストアマネージャー 大和田 伊作さんに伺いました。

自宅の屋根裏部屋が出発点

音楽とデザインを愛する世界中の人たちから支持されるバング & オルフセン。BEARSのオフィスでも2012年に発売され、名品のひとつとなっている円形スピーカー「Beosound A9」を採用。ここから流れるBGMに日々癒されています。

BEARSオフィスで使用している「Beosound A9」。

では、栄えある100年の歴史はどのように始まったのでしょうか。

大和田伊作さん(以下、大和田):バング & オルフセンは1925年にデンマーク西部の小さな町、ストルーアで誕生しました。創業者はピーター・バングとスヴェン・オルフセンの若き2人のエンジニア。オルフセンの自宅の屋根裏部屋でラジオの小規模生産を始めたことが出発点です。

ピーター・バング(右)とスヴェン・オルフセン(左)

大和田:当時のラジオは電池式で、動作には大型のバッテリーが必要でした。バングとオルフセンはラジオを家庭用電源に接続できる一種のアダプターを開発。安定的な電源供給を可能にするこの装置が、最初の量産製品となりました。

最初の量産製品「The Eliminator」(1926年)。オルフセンの自宅から通信販売で商品が発送された。

大和田:1930年には世界初のラジオ蓄音機を発売。当時のデンマーク人の平均年収を上回るほどの高級品でしたが、徐々に市場に受け入れられ、最終的には王室を含む多くの顧客を獲得しました。

ピーター・バング設計のラジオ「Hyperbo 5 RG Steel」(1934年)。先進的なデザインのインスピレーション源は、バングが当時使用していたマルセル・ブロイヤーのデスクチェア。オーディオ製品を家具と調和するように構想した最初期の例。
ベークライト(*)を採用した1938年の製品「Beolit 39」。デザインはピーター・バングの父親が所有していた車からインスパイアされている。*世界初の合成樹脂

最高の音質と、洗練されたデザイン。その両面を追求する姿勢は、後にバング& オルフセンの大きな特徴となっていきます。

受け継がれるクラフツマンシップ

大和田:創業地のストルーアはコペンハーゲンから電車で4時間ほどの場所で、町全体がブランドに関わっています。何世代にも渡って職人を務めている家族も多いです。

バング & オルフセンは100年を経た今も、創業地ストルーアに本社と工場を構え、設計・製造の多くを行っている。

大和田:本社の社員食堂の長い壁には、ピーター・バングを第1号として、25年以上にわたりブランドに貢献したすべての従業員の肖像写真が飾られています。

大和田:『常に最高のものだけを生み出すという不変の意志、そして執念深く新たな道を切り拓くこと』。創業の理念に基づいて “匠の技” ともいえるクラフツマンシップが、現在も受け継がれています。

例えばこのリモコンは人間工学に基づく最高の使い心地を目指し、1本ずつアルミニウムの塊を削って作っています。もうひとつの例はビス穴です。色々な製品がありますが、ビス穴が極力目立たないように設計されています。

Bluetoothと赤外線に対応し、新旧の製品をこれ1つでコントロールできる「Beoremote One」。

音質の素晴らしさはもちろん、製品の佇まいが美しいのは、こうしたものづくりへの真摯な姿勢が貫かれているからこそ。関わってきた方々の自社製品への誇りが感じられます。

才能あるデザイナーたちとの協業

音とデザインの両面を追求し、インテリアとしても高く評価されているバング&オルフセンの製品。その鍵となったのが、才能ある外部デザイナーの起用でした。

大和田:1958年から社外デザイナーとの協業がスタート。1960年代になると、視覚的に訴求力のあるモダンで洗練された製品が次々と発表されました。1978年には「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」で特別展が開催され、世界的に注目を集める企業へと成長していきます。

ブランドを代表する数々の製品を生み出したヤコブ・イェンセン(写真上)とデイビッド・ルイス(写真下)。
ヤコブ・イェンセンが手がけたポータブルラジオ(1970年)

中でもデイビッド・ルイスによる「Beosound 9000」は、長い歴史でも特に象徴的な製品。

CDの盤面をデザインとして捉え、6枚を縦に並べて芸術作品のように見せた「Beosound 9000」(1996年)。

大和田:6枚のCDを連続再生できるプレーヤーで、ランダムボタンを押すとミュージックボックスのように6枚のCDの中から曲が選ばれ流れます。CDの再生が終わるとディスクが常にセット時と同じ向きで止まるなど、エレガントな動きが美しい製品です。

1970年代のブランドスローガン『We think differently(違う考え方をする)』は今でもインスピレーションの根源です。リスクや実験に挑戦する精神が、世界の一流美術館やデザイン博物館で称えられ、多くの製品がコレクションとして収蔵されてきました。

MoMA永久収蔵品のひとつ、ヤコブ・イェンセンがデザインしたレコードプレーヤー「Beogram 4000」(1972年)。

現在MoMAには、家電・オーディオ分野では他に類を見ない18製品が永久収蔵品として保管されているというのもブランドのデザイン性の高さを物語るエピソードのひとつといえます。

カスタマイズで可能性が広がる

100周年の昨年(2025年)は『あなたが夢見たものを形に』というコンセプトのもと、カスタマイズに特化した新サービスがスタート。

大和田:職人技と革新を基盤としたこのビジョンは、Atelier(アトリエ)プロジェクトを始めたことで実現しました。Atelierでは素材や仕上げの組み合わせが50万通り以上あり、また完全なオーダーメイドで一からお客様の夢を叶えることも可能です。

フルオーダーメイドでは、製品の色をコーポレートカラーで作ることもできるそう。バング & オルフセンのプロダクトは思わず視線が止まるアイコニックなデザインが多いので、オフィス空間で特別な存在感を発揮すること間違いありません。

次回の後編では、最新技術でますます進化する現行製品の魅力と、暮らしの中での楽しみ方について詳しくお伝えします。どうぞお楽しみに!

Text by Kyoko Hiraku
Edit by Saori Maekawa
DATA

大和田 伊作 Owada Isaku

1971年生まれ。米・カンザス州立大学卒業後、アメリカ合衆国開拓局での文化財管理業務を経て帰国。30歳でホームシアター専門会社を起業。その後、デザインオフィス「インテンショナリーズ」とのパートナーシップのもと、六本木ヒルズや表参道ヒルズなど数々の著名プロジェクトで音響・映像・オートメーションを担当する。以降、欧州のトップブランドでリテールビジネスに従事。現在は東日本エリアマネージャー兼Bang & Olufsen表参道店店長を務める。同ブランドに携わり通算18年、音と空間のスペシャリストとして活動中。

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