グローバルビジネスの新天地に暮らす「虎ノ門」
今、虎ノ門が大きく変わろうとしています。ビジネス街のイメージが強い場所ですが、じっさいは高級住宅街や上質なヴィンテージマンションも存在するエリア。新しい虎ノ門はこれからどんな街になっていくのか。「虎ノ門ヒルズ」の街づくりに携わってこられた森ビルの伊藤佳菜さんに裏話を伺いました。
虎ノ門は森ビルの創業の地
虎ノ門エリアは国が国際競争力の強化を狙い市街地整備を促進している「特定都市再生緊急整備地域」にあたり、「ホテルオークラ東京」「虎の門病院」の建て替えや「東京虎ノ門グローバルスクエア」「東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー」などの新しい施設が誕生するなど、都市再生事業が一気に進んでいる場所です。
その一角にあるのが「虎ノ門ヒルズ」。このエリアは、かつては日本の高度成長をけん引したものの、老朽化した建物が多く、地盤沈下が進んでいました。そこで、羽田空港からのアクセスもよく、霞ヶ関にも隣接、大使館関係者など外国人が多いという地域特性を生かし、国際的なビジネスの発信拠点にするという計画の一環として、このプロジェクトがスタートしました。
虎ノ門はもともと日本企業のオフィスビルが並ぶサラリーマンの街。またここは森ビル創業の地でもあり「36森ビル」「37森ビル」など通称“ナンバービル”と呼ばれる、森ビルが1960年代以降に建設したオフィスビルがいくつもありました。
森ビルで現在「虎ノ門ヒルズ」の運営を担当されている伊藤佳菜さんは、ご自身も“虎ノ門ワーカー”として街の変化を体験してきた方。
――再開発前の虎ノ門はどんな場所でしたか?
伊藤佳菜さん(以下、伊藤):以前、虎ノ門にある「37森ビル」というビルで働いていたことがあったのですが、当時は周辺の店舗も早く閉まってしまうところが多く、残業した後の真っ暗な街を寂しい気持ちで駅まで歩いていたのを覚えています。夜、虎ノ門で飲むこともほとんどなかったですね。
そんな場所に2014年「虎ノ門ヒルズ森タワー」が完成。タワー内にハイアット系列のラグジュアリーホテル「アンダーズ 東京」も開業し、変化の兆しが見えてきます。
その後、2020年に地下鉄日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」が開業。虎ノ門ヒルズへのアクセスが飛躍的に向上し、同じ年に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が、2022年に「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」が誕生し、人の流れが大きく変化し始めました。
駅ができると街が変わる
さらに今年(2023年)秋には「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が開業予定。「虎ノ門ヒルズ」の4つのタワーが繋がり、ひとつの街として完成をみることに。
――「ステーションタワー」が開業したら、虎ノ門の街にどんな変化が起きると思われますか?
伊藤: “ビジネスの街”の意味合いが、まさにガラッと大きく変わると思います。「ステーションタワー」には新しい文化発信施設や、飲食店、ライフスタイルのショップも入るので、ビジネスだけでなく、もっと幅広いお客様に楽しんでいただけるような街になると思います。
虎ノ門にオフィスや住まいがある人はもちろん、カンファレンスに出席した後にギャラリーを見て帰るというような楽しみ方もできるようになり、街としての魅力が一段と上がることになりそうです。
グローバル水準のハイエンドなレジデンス
グローバルプレイヤーが住み、働き、集う「虎ノ門ヒルズ」には、オフィスエリアへ出入りする人や、さまざまなお店を利用する人が天井の高い広々としたスペースを行き交っています。
気づいたのは、スーツを着た日本人のビジネスマンよりもカジュアルな服装のワーカーが多いこと。英語の会話が聞こえてくることもしばしば。そんな中、バギーを押しているママも見かけました。
――このエリアにお住まいで子育て中のご家族も「虎ノ門ヒルズ」を利用されているということですよね。
伊藤:そうですね、お子さん連れの方も増えていると思います。とくに「オーバル広場」は近隣の幼稚園のお散歩コースになっていますし、家族連れの方々にも多くご利用いただいています。ビジネスのイメージが強い虎ノ門ですが、じつはこのあたりに古くから住まわれている方もたくさんいらっしゃいます。さらに最近はマンションも増えてきているので、この街は居住エリアとしても発達しています。
「虎ノ門ヒルズ」の居住施設としては、地下4階・地上54階建ての「レジデンシャルタワー」が2022年に誕生。
低層階にはコンビニや名門パティスリー、ミシュラン三ツ星レストランが入っているほか、居住者専用ダイニング、ゲストルーム、25mプールを備えたスパ、インターナショナルプリスクール、24時間バイリンガル対応の「健康相談室」を併設。
グローバルプレイヤーの多様なニーズに応える住居に加えて、施設が大変充実しているのも大きな魅力です。
緑が多くゆったりした空気が流れる街
街の景観で印象的なのは各タワーが緑に包まれていること。高層建築のふもとにある公園やガーデンと建物が一体化したデザインになっています。
――街全体にグリーンがふんだんに配されているせいか、ゆったりリラックスした気持ちになりすね。
伊藤:森ビルが大切にしている街づくりのテーマとして「安心安全」「文化」「環境・緑」の3つがあり、緑はとても重要な要素です。「ステーションタワー」の北側に公園が整備されており、「森タワー」の前に広がる芝生のオーバル広場などに加えて、緑を感じられる空間が増えることになります。しかも都心なのにも関わらず静かなんですよね。
「レジデンシャルタワー」全戸と「森タワー」中高層階にあるレジデンス部分を合わせると、虎ノ門エリアで最大規模となる約730戸。活気と安らぎの両方がある「虎ノ門ヒルズ」を自分の家とし、都市に生きることの豊かさを余すことなく享受できる“ヒルズライフ”が提供されています。
都心の豊かな暮らしにはぴったりの場所として、富裕層の間で虎ノ門に関心が高まっているのにはこうした理由がありました。
地上250mに誕生する“天空のプール”
そして、虎ノ門ライフがもっと楽しくなるのがアートやカルチャー、今までにない食の体験ができる複合施設の誕生。
――今秋の「ステーションタワー」の開業が待ち遠しいですね。どんなビルになるのでしょうか。
伊藤:今までの地下鉄の駅にはないような場所になるはずです。最上階3フロアを含む4フロアには「TOKYO NODE(トーキョーノード)」という名称の10,000㎡の規模のまったく新しい情報発信拠点が誕生します。「六本木ヒルズ」の「森美術館」のように、ここは「虎ノ門ヒルズ」を象徴するような施設になると思います。
そしてなんと地上49階高さ250mにある屋上にはインフィニティプールが誕生! パーティやファッションショーにも活用可能という“天空のプール”が今からとても楽しみになってきました。
一方地下2階、地下鉄の改札を出てすぐのところには駅前広場「ステーションアトリウム」がお目見え。
伊藤:「ステーションアトリウム」は駅と街が一体になっていてシームレスにつながっていく場所。駅街一体開発のシンボルとなるこの場所では、年間を通じてさまざまなイベントを仕掛けていく予定です。
新しい食体験を提供する空間「T-マーケット」も見逃せません。
伊藤:「ステーションアトリウム」に直結した空間は“今熱い”若手シェフたちが手掛ける多様な飲食店舗やショップが集合したマーケットゾーンになります。飲食だけにとどまらずアートや音楽と融合したカルチャーイベントを開催するなど、この場所でしかできない新しいことに挑戦していきたいと思っています。
虎ノ門の夜がどんどん楽しくなる
夜ならではの様々な活動を通じて、地域の魅力や文化を発信して消費拡大につなげる「ナイトタイムエコノミー」を国として推進している今、夜への注目が社会的にも高まっています。
伊藤さんは個人的に夜に対する思いがあって『東京の夜を変えたい』という強い気持ちがあるそう。きっかけは、仕事で思い悩んだ時期に夜が逃げ場だったという体験をしたこと。
――伊藤さんにとって“夜の魅力”はどんなところですか?
伊藤:昼間の窮屈さから解放されるのが夜のいいところですね。日本人の一般的な夜の過ごし方は飲みにいくとか、繁華街に出かける、カラオケをするなどいくつかのパターンがあると思います。虎ノ門では、もっと選択肢を提案して、いろいろな人が夜の街を楽しめるような風景を作りたいなと思っています。
たとえば「ビジネスタワー」3階にある「虎ノ門横丁」。ここは“道”をイメージした回廊のようなスペースに東京の個性豊かな名店26店舗が一堂に集まった場所。初対面でも会話がはずむような立ち飲みスペースや「寄合席」があります。
伊藤:昼間の会議室で名刺交換から入る出会い方と、夜に「虎ノ門横丁」で出会うのとでは、人と人の距離が縮まるスピードがぜんぜん違う。そういった“交流の場としての夜”というのも「虎ノ門ヒルズ」らしいのかなと思います。海外からのお客様を「虎ノ門横丁」にお連れすることも多いですね。みなさん、とても喜んでくださいます。
――これからの“虎ノ門の夜”はどんなイメージでしょうか。
伊藤:休みの日に美術館やコンサートに行ったりする人が多いと思ういますが、もっと日常的にアートに触れられたり、食事をしながら音楽が聴けたり、そういうシームレスな文化体験が、仕事と遊びの境界線なしに、日常の刺激としてあるような夜の過ごし方が提案できたら最高です。
経済は文化のパトロンである
最後に、伊藤さんにとって豊かな暮らしはどんなものか、お聞きしてみました。
伊藤:森ビルの元会長である森稔の著書の中に「経済は文化のパトロンであり、文化は都市の魅力や磁力を測るバロメーターだ」という言葉があります。経済だけの街ではなく文化がある街こそ人を惹きつけるというような意味ですが、私はその言葉に強く共感をしておりまして。
――東京の街やライフスタイルがそういう方向に行くと理想的ですよね。
伊藤:そうですね。街にただ人が集まればいいという訳ではなく、そこで新しいイノベーションが起きるとか、人の絆が強まっていく、コミュニティが育っていく。そういったソフト面がどんどん発展していくような魅力的な街に暮らすことが、これからの豊かさなのではないかと思います。
世界的なビジネスの新拠点に住まう。
虎ノ門エリアの“暮らす場所としての魅力”。
それはまず世界水準の多様な都市機能が集まっていること。そこで日常的にさまざまなカルチャーに触れることで、住む人の創造性や心の豊かさが育まれていくことにありました。
活気あふれるエネルギーと、緑豊かな安らぎの空間が作り出すバランスの取れた生活が可能になるこれからの虎ノ門。今後の展開がとても楽しみな都心の新天地です。
伊藤 佳菜|Kana Ito
森ビル株式会社タウンマネジメント事業部
虎ノ門ヒルズエリア運営グループ
https://www.mori.co.jp/
2013年に森ビルに入社。建物環境開発事業部、森記念財団都市戦略研究所出向、都市政策企画室を経て、タウンマネジメント事業部にて虎ノ門ヒルズステーションタワーのタウンマネジメント計画を担当。2023年4月より虎ノ門ヒルズエリア運営グループにて、同エリアのイベント企画や環境演出、エリアマネジメントなど街の運営を担当している。