緑に囲まれた理想の未来都市「麻布台ヒルズ」
2023年秋、港区麻布台に誕生する「麻布台ヒルズ」は、これまでの都心のイメージを覆すまったく新しい街。世界的に注目を集めるデザイン集団 ヘザウィック・スタジオ が設計に参加した、日本初のプロジェクトとしても関心が高まっています。では最新の都市機能と豊かな緑が共存したこの街がどんな場所になるのか。森ビルで「麻布台ヒルズ」の運営を担当されている中 裕樹(なかひろき)さんにお話を伺いました。
もとめていたのはこんな豊かさだった!
「Modern Urban Village」をコンセプトとして2023年秋に誕生する「麻布台ヒルズ」。圧倒的な緑に囲まれた環境のもと、この街に住み、働くことの全てが「ウェルネス」につながる多様な都市機能をそなえた、世界に類のない全く新しい街として麻布台が生まれ変わります。
森ビルのウェブサイトで公開中の「麻布台ヒルズ」イメージムービーは2分ほどの長さですが、実際に足を踏み入れたかのようにリアルに街並みを体験することができます。全体像が明らかになるにつれ「もとめていたのはこんな豊さだった」と嬉しい驚きの感情が湧き上がってきました。
ではなぜ、都市の既成概念を塗り替えるようなこの画期的なプロジェクトが生まれたのでしょうか。「グリーン」を軸に、ソフト・ハード両面の街づくりを推進されてきた森ビルの中 裕樹さんに、まずそのあたりのお話を伺いました。
――「麻布台ヒルズ」が“緑の街”を目指すことになった経緯を教えてください。
中 裕樹さん(以下、中):東京の緑は世界の大都市と比較して実は非常に豊かなのですが、実際は、皇居に代表されるような市民に開かれていない場所が多いのが課題でした。そこで森ビルは、コミュニティ活動の場所にもなるような緑を増やす取り組みを1980年代から積み重ねてきました。「麻布台ヒルズ」で“緑”を中心に据えているのは、森ビルが今までの「ヒルズ」で培ったすべてを結集し、都市と緑のあり方の提案を、このプロジェクトで結実させたということだと思います。
これまでの知識や経験を新しい時代につなぐという意味合いを込めて「麻布台ヒルズ」が「ヒルズの未来形」と呼ばれているというのも象徴的なお話でした。
「麻布台」が変わることの意味
では、ここで麻布台エリアについて改めて振り返ってみましょう。
麻布台は東京都港区のちょうど真ん中、虎ノ門と六本木の中間に位置し、東京タワーのふもとにある街。かつては上杉家など大名や旗本の屋敷が多くあった土地です。大通りを一歩入ると古くからのヴィンテージマンションや閑静な住宅街があり、高級感のある落ち着いた街。
――大使館も多いため外国人を多く見かける国際色豊かなエリアでもあります。
中:そうですね。しかし一方で、小規模な木造住宅やビルが密集し、建物の老朽化が進むなど、都市インフラからの整備が必要な敷地が多かったのも事実です。そうした場所で再開発の機運が高まり、30年の年月をかけてプロジェクトが進められてきました。
そして2023年秋、約6,000㎡の広大な中央広場を街の中心に据え、オフィス、住宅、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設、文化施設など、多様な都市機能を融合させた「麻布台ヒルズ」が開業。
――いよいよこの秋開業ですね。実際にプロジェクトに関わってこられて、今どのようなお気持ちですか。
中:「麻布台ヒルズ」は80年代後半から地元の方々の思いを受け止めていっしょに作り上げてきたプロジェクトです。そのスケールとインパクトは「六本木ヒルズ」に匹敵します。この場所が変わって行くのは、東京が変わることのひとつの象徴的な出来事として、非常に価値があることだと思っています。
『ここに住みたい』『遊びに来たい』『ここで働きたい』。多くの人がそう思う注目エリアになるのが、まさにこれからの「麻布台」です。
トーマス・ヘザウィック氏が手がける低層部
「麻布台ヒルズ」の完成図でとくに目を引くのが、イギリスの建築家トーマス・ヘザウィック氏が手がける低層部のランドスケープ・アーキテクチャーです。建物の屋上が緑で覆われ、敷地全体のグリーンと一体化した姿はとても印象的で、この街の目指すものが視覚から伝わってきました。
1994年にロンドンで設立されたヘザウィック・スタジオは、現在、世界が最も注目するデザイン集団のひとつです。自然や土地の記憶を取り込んだ建築で知られ、ロンドン・オリンピックの聖火台をはじめ、シンガポール、上海、香港など世界各地で、数々の独創的なプロジェクトを手がけてきました。
そのヘザウィック・スタジオが日本で初めて参加したのが「麻布台ヒルズ」の低層部のデザインであり、中さんは森ビルのタウンマネジメント事業部パークマネジメント推進部(当時)の立場で、この計画に関わってこられました。
――ヘザウィック氏は、環境はもちろん、そこに暮らす人の気持ちにも配慮した素晴らしい姿勢をお持ちだと思うのですが、実際にやり取りをされていかがでしたか?
中:緑についての考え方が国によって違うため、いい経験になりました。ヘザウィック・スタジオは英国の事務所なので、当初のランドスケープデザインはイングリッシュガーデンを基本に設計していました。それをデザインの意図を変えずに、このエリアに合った日本の植物に置き換えているんです。そのために植栽の担当が関東近郊の山に実際に木を見に行って『この木にしよう』というのを1本ずつ選ぶという地道な作業をしました。
外来種でイングリッシュガーデンを作るのではなく、在来種を中心にしながらもともと東京にあった植物を増やしていこうというのは森ビル独自の街作りの考え方。未来を見据えた街「麻布台ヒルズ」が“里山”の植物に覆われて、日本人にはどこか懐かしい風景になっていくのはとても素晴らしいこと。
四季折々の街の表情がどんなものになるか、想像しただけでワクワクします。
キーワードは「グリーン」と「ウェルネス」
「麻布台ヒルズ」では、商業施設も充実。メインタワーと低層部を中心に、広大なエリア全体で約150店舗を展開。ファッション、フード、ビューティー、カルチャー、アートなど、多彩な店舗が揃います。
――商業施設にはどんな店舗が入るのでしょうか。
中:ヘザウィック・スタジオが手がけた低層部には、「グリーン&ウェルネス」というコンセプトに賛同してくださったラグジュアリーブランドなどの店舗が並ぶ予定です。地下には約4,000平米の大規模なフードマーケットが誕生します。ここではおいしく健康的であることはもちろん、文化やサステナビリティなどについても知ることのできる、これからの時代の“豊かな食”を体験できます。
――今、健康に気を使って食べる物を選ぶ消費者が増えていると思いますが、そうした傾向は意識されていますか?
中:はい。健康に関心が高い方にも満足していただけるように、特色のあるお店に出店していただく予定です。
中:『心身の健康』という意味では、信濃町にあった「慶應義塾大学病院予防医療センター」が移転して来ます。それを核としながら、スパ、フィットネスクラブ、レストランやフードマーケットなどの施設を「ウェルネス」というコンセプトでつないでいく企画も進行しています。さまざまな年代の方々の健康課題を把握し、常に新しい診断・検査方法を追求することで、受診者一人ひとりのニーズやリスクに応じた最適な健診プログラムなどを提供していく予定です。
贅を尽くしたライフスタイルを好む富裕層の間でも、健康が一大関心事になりつつある今。予防医療のエビデンスに基づいたさまざまなサービには大いに期待したいところです。
天空のサンクチュアリ「アマンレジデンス 東京」
もうひとつ大きな話題を呼んでいるのが「アマン」との提携による「アマンレジデンス 東京」の登場です。
「アマンレジデンス 東京」は日本一の超高層ビルとなる高さ約330mの「メインタワー」の最上部、54階から64階の11フロアに約90戸のレジデンスを擁するラグジュアリーな居住空間。「アマン」ならではのホスピタリティが反映され、都心にいながら究極の非日常と穏やかさで満たされる、他に類を見ない贅沢なライフスタイルを送ることができます。
たとえば25mのプライベートプールを含む1,400平米の「アマン・スパ 」。ここは都心のパノラマが一望できる最高のロケーションで、極上のリラックス体験ができる施設。想像しただけでうっとりしてしまいますね。
「麻布台ヒルズ」に暮らす魅力とは?
「麻布台ヒルズ」では「メインタワー」以外にも街区ごとにコンセプトの違う住宅を設け、それぞれにおいて個性豊かなライフスタイルが提案されています。「アマンレジデンス 東京」を含む総戸数は約1,400戸にのぼります。
――暮らす場所としての「麻布台ヒルズ」の魅力はどんなところにあると思われますか?
中:都心を離れた豊かな自然環境の中での暮らしはたしかに魅力的だと思います。一方で『都心の豊かな暮らしとは何だろう』と考えると、自然と、都会的な刺激の両方があるということだと思うんですね。「麻布台ヒルズ」は「六本木ヒルズ」のような、いつ訪れても楽しいワクワク感と、自然の中に身を置くゆったりした感じ、その両方がある街になるのではないかと私は思っています。
たとえば「麻布台ヒルズ」の敷地の中には果物を収穫できる“果樹”が植えられるそう。
――そのような環境であれば、港区の真ん中で自然を感じることができますよね。
中:そうですね。また、様々なコミュニティ活動も予定していますので、そのプログラムに参加することで、自分の部屋だけではない“シームレス”と言われる暮らしが実現できるのも魅力だと思います。仕事にしても、一人だけで考えているより、クリエイターがいてアーティストがいて、植物と向き合っている人がいて、そういう多様な人たちがいっしょにいるからこそ、新しいアイディアが生まれるのではないでしょうか。
「麻布台ヒルズ」ではいっしょに走ったり、ヨガをしたりしている隣の人が、じつはビジネスパートナーだったり、子どもが同じ学校に通う親同士だったり。そうした繋がりがごく自然な日常になる場所。
――これまでの都会暮らしのイメージが大きく変わっていきますね。
中:街のコミュニティ作りはこれからですし、緑は竣工時がスタートです。植物にとっては急に植え替えられて、建物の上で育つわけですから。でも「六本木ヒルズ」にしろ「アークヒルズ」にしろ、都心のすごく難しい環境でも植物はすくすくと力強く育っていくんですよ。それを見守りながら、緑をどう取り入れたら都心の豊かな暮らしが実現できるか。長い目線で企画に携わっていきたいと思っています。
緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街。
それが「麻布台ヒルズ」です。
人々が人間らしく生きるための環境として、都市のあり方を考え直す動きが世界各地で起きている今。「麻布台ヒルズ」はひとつの解答となる画期的な試みであることは間違いありません。この秋の完成が本当に楽しみです。
中 裕樹|Hiroki Naka
森ビル株式会社タウンマネジメント事業部
麻布台ヒルズエリア運営グループ
https://www.mori.co.jp/
1985年5月4日(みどりの日)生まれ。2008年森ビル株式会社入社。オフィス事業部、用地企画部、タウンマネジメント事業部虎ノ門ヒルズエリア運営グループを経て、2019年よりパークマネジメント推進部にて、「グリーン」を軸に、ソフト・ハード両面の街づくりを推進する。
2023年4月より麻布台ヒルズ運営グループにて、同エリアのイベント企画や環境演出など街の運営を担当している。