そこに住むことでポジティブな力が湧いてくる、「南麻布」の暮らし

2023.12.15

世界各国の大使館が集まるインターナショナルな街「南麻布」。広尾、白金、三田に囲まれた町内は、都内でも指折りの高級住宅地として知られています。著名人や実業家も多く住むこのエリアは、都心でありながらゆったりとした街並みが魅力。中でも、広大な敷地を誇る都立有栖川宮記念公園は近隣に住む人の憩いの場となっています。
今回は、南麻布にお住まいのファッションディレクター・森岡弘(もりおか ひろし)さんにお話を伺いました。

広大な武家屋敷が現在の落ち着いた街並みの礎に

港区の麻布地区の南に位置する「南麻布」は、江戸時代に大名屋敷が多く置かれていた場所。今も、地名にその名残が見られます。仙台坂、南部坂、北条坂、青木坂などの坂の名前は、それぞれ、大名屋敷の藩名に由来。歴史に思いを馳せながら、坂の多い南麻布をめぐるのも楽しいかもしれません。

現在、南麻布に大使館が多いのは、大名屋敷の名残。明治から大正時代にかけて、かつての屋敷跡が各国の大使館へと生まれ変わりました。

フランス大使館は出羽新庄藩下屋敷跡に、韓国大使館は松平陸奥守下屋敷跡に建っている

また、都内屈指の美しい公園として知られる有栖川宮記念公園は、もとは忠臣蔵で有名な浅野家の下屋敷でした。その後、陸奥盛岡藩南部家の下屋敷となり、明治時代には有栖川宮家・高松宮家の御用地に。昭和初期に東京市(当時)に賜与されて公園となりました。約67,000平方メートルもの面積を誇る同園は、日本庭園や野球場、テニスコートなどを擁し、四季折々の自然が楽しめます。そんな有栖川宮記念公園が徒歩圏にある、南麻布の暮らし。大使館が多いことから、治安が良く安心して住まうことができそうです。

今回は、南麻布にお住まいのファッションディレクター、森岡弘さんにお話を伺いました。森岡さんは、ファッション雑誌『メンズクラブ』の編集に長く携わった後、スタイリストとして独立され、現在はファッションディレクターとして第一線で活躍されています。

著名人やアスリート、政治家、企業家など多数の顧客のスタイリングやイメージプロデュースを手掛ける森岡弘さん

便利で緑豊かな南麻布の魅力の虜に

――はじめに、南麻布に住み始めたきっかけについて、教えてください。

森岡弘さん(以下、森岡):今から24年前、独立して麻布十番に事務所を構えたことがきっかけです。その時は住居は別にあったのですが、『感じの良い飲食店も多いし、交通の便もよく、何より街の雰囲気が落ち着いている。ここは良い街だな』と思って、麻布十番に近い南麻布に引っ越しました。南麻布に住み始めてから、約13年になります。麻布十番と南麻布は隣り合っているのですが、麻布十番にはにぎやかな楽しさがあり、南麻布は落ち着いた雰囲気。どちらも、それぞれの良さがありますね。外食するときは麻布十番の方まででかけることが多いです。

――街の印象を教えてください。

森岡:住みやすくて、とても良い街です。もし何かの理由でここを離れることになったら、とても寂しくなるだろうなぁ…。いつも『ここより良い街は、どこにあるだろう』と思っていますから。それくらい、気に入っています。

まず、交通の便がよくて、どこにでもすぐに出られるのがいいですね。かつては『陸の孤島』なんて言われていたようですが、今はそんなこともないですよ。大江戸線・南北線の麻布十番駅、日比谷線の広尾駅の3駅使えますし、車の移動もとても楽ですね。

それから、都会でありながら、ある種の田舎っぽさもあるんですよ。ご近所さんともよく会話していますし、人の温かさを感じます。また、有栖川宮記念公園があるからか野鳥もよく飛んでいて、先日は散歩中に珍しい蝶々を見ましたよ! 南麻布では“都会の冷たさ”というのは、まったく感じませんね。

――森岡さんはどんなお宅にお住まいですか。

森岡:いわゆるヴィンテージマンションです。もとは外国人用に建てられたマンションで、かつては住人全員が海外の方だったと聞いています。南麻布は大使館が多いので外国人向けのマンションが多いようですね。私の家も造りが外国風で、天井が高いところが気に入っています。というのも、私は仕事柄、モノがとても多いのですが、天井が高ければ圧迫感がないんですよ。また、マンションの前に大きな木があって、身近に自然を感じられるのもうれしいですね。また、坂道沿いなので、窓からの眺めに抜け感があって気持ちいいんです。南麻布は坂道が多いので、見晴らしのよい場所が多いんですよ。

起伏に富んだ土地のため、見晴らしの良い場所が多い。仙台坂からは東京タワーが見える

――ファッションディレクターとしてお仕事をされている中で、『この街に住んでいてよかった』と感じることはありますか?

森岡:たくさんありますよ!私は仕事でテレビ局に行くことが多いのですが、テレビ朝日なら10分くらいで着きますし、他の局もそれほど時間はかかりません。出張で新幹線に乗る時は、東京駅や品川駅へのアクセスもいいんです。仕事で人とお会いするときには、交通の便が良いので来ていただきやすいですし、家の近くに打ち合わせにちょうどいいお店もたくさんあります。また、近くに大使館や芸能関係の方もたくさん住んでいるからか、散歩ですれ違う方がおしゃれなんですよ。洗練されている方が住んでいる場所というのは、ファッションディレクターの私にとって心地よいものです。新しいお店も次々できているので、刺激ももらえます。

自分が幸せになるための住まいを選ぶ

――ファッションと住まいは、何か共通項があるような気がします。ファッションディレクターという視点から、住まいに対する思いをお聞かせください。

森岡:まず、ファッションについてですが、誤解されている方も多いのですが、いまの時代は“ファッション=服”ではないんですね。ファッションとは、ライフスタイル、生き方です。その点では、住まいも似ているのではないでしょうか。住まいというのは「建物」を指すのではなく、住空間を含めた「生活」ですよね。『この服を着るとワクワクする』とか『この服を着るとリラックスする』というのと同じように、住まいにおいても、『この部屋に住むと毎日が楽しくなる、落ち着く』ということもありますね。自分が居心地が良いと感じる家、住むだけで気分が上がるような家を選ぶことはとても大切だと思います。

――住まいもファッションも、ライフスタイルという点では似ているかもしれませんね。逆に、異なる点については、どうお考えですか?

森岡:そうですね、装いを考える場合、ファッションというものは自由であるべきです。一方でスタイルとして考える場合は “場に合った装い” を選択することはマナーとして必要です。つまり、『周りからどう見えるか、見られるか』を気にするということです。たとえば社長さんであれば、『どんな格好をした社長なら社員やクライアントが安心しついてきてくれるのか』を考えなければいけません。時に自分がどうしたいかよりも、様々な場において意識高く求められた服装をすることが大事なのです。その点、住まいは、人からどう見られるかを気にする必要はそんなになくて、自分の好み、自分の居心地の良さを第一に選べますね。お客様をお招きするときは、お客様が居心地よく過ごせるような客間が必要だとは思いますが、基本的には、自分と家族が安心して心地よく暮らせる空間を選ぶことが何より大事ですね。

――最後に、これからのお仕事について、お聞かせください。

森岡:最近はファッションディレクターとしての活動のほかに、バッグのコラボデザインなどもしています。私はゴルフが大好きなのですが、ゴルフにも使えるおしゃれなバッグというのがなかなかないんですね。他の方を見ていても、なんとなくありきたりのバッグを持っている方が多いのです。服装にこだわっている方であれば、もっとゴルフや旅行用のバッグにもこだわってほしいと感じてデザインをしました。このように、これからも新しいことにはどんどん挑戦していきたいですね。

南麻布は閑静で住みやすいだけでなく良い刺激ももらえる街なので、ここに住むことで自然と『もっとがんばろう』という力が湧いてきます。今は休みなく全国を飛び回る日々ですが、これからもエネルギッシュに仕事をしていきたいと思っています。

南麻布の街を拠点に、国内外を飛び回って第一線で活躍する森岡さん。インタビュー後に、『実は、がむしゃらに働いていた駆け出しの頃は、家なんて屋根があって寝れればそれでいいと思っていたんですよ。若い頃は家の大切さに気づきませんでしたが、家族と南麻布に住むようになって、安心できる居心地のよい家があるということの意味をかみしめるようになりました』と語られていました。『街が人を育てると言いますが、私も南麻布に育ててもらいましたね』とのこと。

住む人をやさしく包み込み、その人が自分らしく活躍するための力をくれる―そんな街に住むことで、人生はより豊かなものになっていきます。着心地が良く、着るだけで良い気分になる洋服を選ぶのと同じように、住まう場所も、自分がより良く充実感を持って生きられる街を選びたいものです。

DATA

森岡 弘 | Hiroshi Morioka

株式会社グローブ  ファッションディレクター/ スタイリスト
https://glove-style.com

婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社し、「メンズクラブ」編集部にてファッションエディターに。同社退社後、独立し、株式会社グローブを設立。芸能人、ミュージシャン、スポーツ選手、アーティスト、政治家、企業家等のスタイリング、出版やトークショー、広告制作、衣装製作を手掛けている。

Text by Sayoko Murakushi
Photos by Eiji Miyaji
         

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