夫婦のこだわりと美意識が生み出した、理想の住空間

2023.11.02

私たちが長い時間を過ごす住まい。家での時間を心地よく過ごせることは、人生を豊かにする大切な要素のひとつです。

シリーズ “Private View” では、住まい手の理想が反映された無二の邸宅など、魅力ある住まいに暮らす方たちを訪ね、本当に心豊かな暮らしについて考えます。

今回お邪魔したのは、都心にある森と隣り合うコーポラティブハウス[*]。物件との出会いや家選びの際に重視したポイントについて伺った前編に続き、後編は木々の緑と融け合うようなお部屋の数々をご紹介。物件購入後に取り組んだ理想の住空間づくり、そしてこの家に暮らすようになってからの変化や気づきなど、さらにお話を伺います。

*コーポラティブハウスとは、入居を希望する数世帯が集まり、建築家とともに共同でつくる集合住宅のこと。入居者から成る組合を結成し、土地の取得や建物の設計依頼、施工会社への発注など、すべての建設行為を主体的に行う。

夫婦の理想を叶える家

──住空間をカスタマイズするにあたって、建築家の方と対話を重ねられたとのこと。具体的にどのような希望を伝えられたのですか?

この家は森に面した北側に窓を設けていて、1階に寝室と子ども部屋とバスルーム、テラスへと開かれた2階にLDK、3階に書斎、そして屋上という設計になっています。

夫が出した最大の要望は『1階の寝室と子ども部屋とバスルームのすべてから緑を眺めたい』というもの。すでに森に面する間口の幅が決まっていたため、当初は無理難題にも思われたのですが、1階を掘り下げるという大胆なアイデアによって希望を叶えていただきました。どういうことかというと、バスルームの上部に子ども部屋のロフトを設けることで、3部屋のすべてに大きな窓を設けることができたんです。

──3つの部屋からの眺め、どれも素晴らしいですね。目の前の森に包まれるようで。これが当初からの設計ではなく、ディスカッションから生まれたものだったとは。

ええ、建築家の方と一緒に住空間をつくる醍醐味ですよね。私たちの希望に応えてくださった解決策の鮮やかさに驚きました!

一方、私の要望は主にダイニングキッチンについて。雑味の少ないシックな空間が好みなので、さまざまな要素を壁面に収め、スッキリとした空間に仕上げていただきました。ここで過ごすことの多い私から顔が見えるように、子どもたちの勉強スペースもこちらに設けています。また、ダイニングとキッチンをフラットにつなぐカウンターテーブルもお気に入りです。週末にはこのテーブルに友人たちが集い、出張シェフを呼ぶことも。

──ご夫婦の美意識が随所に反映されていて、どのお部屋もすごく素敵ですね。

ありがとうございます。全体のインテリアは夫婦が好きなグレーを基調にしました。子どもには定番の白や明るい色の方が良いかとも思ったのですが、長く暮らすことを考えて妥協せず、夫と私の好みを優先しました。親の機嫌が良いことは、子どもにも嬉しいはずですから。

当時、好きなインテリアのイメージを共有するために、夫婦で大量の雑誌を見て気に入ったものにひたすら付箋をつける作業を行いました。理想の家のスタイルを夫婦で話し合えて、さらに建築家の方にイメージを伝えるためにもやってよかったと思います。

──このお家で一番気に入っていらっしゃる場所は?

私は寝室が特にお気に入りです。暗すぎず明るすぎず、一日を通して美しい光に満ちていて。朝はやわらかな光で目覚められます。一番好きなのは、ベッドに寝転がって見上げる景色。低い目線から眺めると、木々の緑をより大きく感じます。

5.5mの天井高を実現した寝室。豊かな枝を伸ばす木々が緑のカーテンとなり、夏でも涼しいのだとか

──お気に入りの過ごし方についても教えてください。

ひとつ挙げるなら、照明を消してお風呂に入ることですね。早起きした朝など、子どもたちとのにぎやかな日常から離れて、束の間の一人時間を楽しんでいます。バスタブから見上げる森の眺めが素晴らしく、心をリセットする大切なひとときです。

森に面したバスルーム。外からの視線が気にならないため、窓を開放して露天風呂気分を味わえる

夫はリビングのソファでくつろぐ時間が好きだそうです。週末は軽井沢の別荘や旅行に出かけることも多いのですが、夫は『ここにいると、聞こえるのは鳥のさえずりだけ。別荘よりこちらの方が自然豊かかも』なんて言っています。

自分たちで暮らしをつくっていく面白さ

──このお家に暮らして3年ほど。ご感想はいかがですか?

とにかく日々のストレスが少なく、満足している時間が増えました。自分たちが心から好きだと感じられる空間で過ごせて、またフロアの使い分けや収納などを工夫したおかげで、目に見えるスペースがいつも整った状態で暮らせているのも大きいと思います。

この家は1階から3階の部屋、さらに屋上テラスまで、いろいろな場所に家族の居場所があります。子どもはお互いが近くにいると喧嘩しがちなので、その点でも良いですね(笑)。

もともと引っ越し好きな夫婦ですが、この家には飽きることがありません。以前は住まいに何か気に入らない点があると、次の引っ越しに思いを巡らせていたのですが、すっかり変わりました。『この家をより良くしていきたい』という愛着が生まれ、『自分たちに合うように暮らしをつくっていこう』と考えるように。子どもの成長など家族の変化に合わせて、さらに手を入れ、この家をアップデートしていきたいですね。

──最後に、ご自身が考える “理想の住まい” とは?

一番は『ストレスを感じず、心穏やかに過ごせる家』でしょうか。私は雑然とした空間が苦手なので、特に自分が長い時間を過ごす空間は、なるべくスッキリした状態を保ちたくて。その点、この家は理想的です。

また、私にとっては、四季折々の緑と都市の刺激、その両方に触れられることが大切。私自身は都内の大きな公園の近くで育ち、また蓼科で夏を過ごすなど、幼少期から自然に親しんできました。そのためか、美しい緑が大好きなのですが、一方で自然豊かなだけだと飽きてしまうタイプ。昔から友人との集まりや人が集える場所をつくることが好きで、人の活気や新しいことが常にある都心ならではの環境も自分には重要なので、その両方を兼ね備えた今の住まいに出会えて、心から満たされています。

都市の森とつながり、住空間をカスタマイズできる家。そんな無二の住宅とめぐり会い、自分たちの理想の暮らしを見つけたご家族。『次はここに手を入れたいんです』『最近はモノの選び方や使い方まで変化して──』そう語る奥様の瞳がやわらかな森の光に輝いて見えました。

私たちの生活の礎となる衣食住。日々を支え彩る衣食と同じように、住についても自分の美意識やこだわり、喜びを求めること。そこにはきっと、本当に心豊かな暮らしへのヒントがあるはずです。

Text by Jun Harada
Photos by Eiji Miyaji
         

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