暮らしのストーリーから空間を描く「リブラスタイル」

2022.10.01

リノベーションで生まれ変わったスペースをより魅力的にするのが、インテリアの力。これまでも、新しい視点で独創的な部屋づくりをしてきたBEARSですが、2022年6月より、インテリアデザイン、コーディネートやコンサルタントを幅広く手掛ける「株式会社リブラスタイル」とパートナーシップを締結。2社のタッグで、さらなる上質なリノベーションの実現を目指します。

ラグジュアリーな物件のインテリアを多数手がけている「リブラスタイル」の代表取締役・手塚由美さんに、会社のこれまでやインテリアへの想い、空間づくりの楽しさについて伺いました。

©LIBERO CREATIVE

南麻布に建つ新築マンションのモデルルーム。基本プラン監修、プランニング、カラースキーム、インテリアデザイン、コーディネートを担当。


マンションの変遷を見てきたことが、いまの仕事に結びついた

日本にマンションブームが到来したのが1960年代。それから半世紀を超え、都市型のライフスタイルとして、マンションでの暮らしはすっかりお馴染みになりました。80年代にはファミリータイプの物件が増え、同時にバブル経済下で地価が高騰したことにより超高級物件も誕生。90年代には分譲戸数が千単位という物件も現れ、その後はタワーマンションの時代に突入。

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「京都の骨董の店で購入した屏風とアメリカのホワイトハウスなどで使われているベーカー社の家具をあわせるなど、和洋を超えたクールでエレガントなスタイルを目指しました」(手塚さん)

「リブラスタイル」の代表を務める手塚さんは、インテリアコーディネートに興味を持ったことから、店舗設計事務所、高級イタリア家具メーカー「カッシーナ・イクスシー」勤務を経て、現在の仕事をスタート。住空間のコーディネートやスタイリングに加え、現在はインテリアデザインも手掛けています。

この職業に就いたときからずっと、長く使え、そして本質的に素敵な空間をつくる、ということに魅力を感じてきました。私にとってその理想が実現できるのは “住まい” です。スタートは、ハウスメーカーの戸建て物件のコーディネートの仕事でした。その後マンションの建設が増え、それに伴いインテリアに力を入れるデベロッパーさんも増加。結果、30代前半頃からは新築マンションのインテリアに関する仕事が多くなっていきました。

ちなみに今では当たり前のことですが、当時はフローリングの木材の種類や色を選べるということが、とても画期的だったのです。 日本のマンション市場が拡大したあの頃、クライアントとともに手探りの中、新しいことを提案しながらキャリアが積めたことは、ものすごく良い経験になりました。

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「国際色豊かな土地柄なので、ペルソナとしてフランス人と日本人の夫婦、小学生の息子という3人家族を設定しました」(手塚さん)

時代が進むにつれ、マンションのグレードもさまざまに。そんな中で、長い間インテリア業界の中心で活躍している手塚さん率いる「リブラスタイル」は、デベロッパーと顧客、両方のニーズを融合しながら、“さらなる上の提案” ができる会社として高評価を得ており、話題のプロジェクトの多くから引く手あまたというのも、納得です。

空間をひとつの世界に見立て、ストーリーを紡いでいく

小さなファミリーマンションから始まり、1,000所帯の物件、2,000所帯の物件、そしてタワーマンションと、手掛ける物件の規模も変化。それに従って、2008年に個人事業から法人化。仕事の内容も、家具のコーディネートや内装材の色味を考えるようなインテリアコーディネートだけでなく、部屋の間取りの提案、キッチンなどのデザインといった、インテリアデザインにまで拡大。数年前からはリノベーション物件のインテリアデザインの依頼も増え、仕事のやりがいもますます大きく膨らんだそう。

業務内容はその都度異なりますが、間取りから内装の素材選び、家具やアートなどのコーディネート、そして小物のスタイリングとしてスプーンの1本まで選ばせていただけるという、トータルでインテリアをプロデュースできる仕事に関しては、ハードルが高いからこそ、ものすごく引き込まれます。気がついたら寝ている間も考えているのでは……というくらい、楽しいです。

©Nacasa&Partners

One Dojima Project 2021:カラースキーム(3グレード)、プランニング、インテリアデザイン、コーディネートを担当。 

空間を考えるとき、手塚さんはまず、その部屋で繰り広げられるストーリーを設定し、そこから想像を膨らませていく。たとえば大阪の堂島に2024年に誕生する、超高層ホテルと住宅の複合タワー「One Dojima Project」内の「Brillia Tower 堂島(事業主:東京建物株式会社)」のモデルルームでは、東京に住む若手事業家とそのパートナーが大阪に持つ別邸でパーティーをする……というシーンをイメージし、インテリアを作り上げた。その手腕、まるで演劇の劇作家のよう!

©Nacasa&Partners

One Dojima Project 2021:ホテルも入る高層ビルの上層階に位置する居住空間。大阪の空が広がるリビングでの、パーティーをイメージしたコーディネート。「ここでパーティーを開いたら、どんな人を招くのか、どんな雰囲気になるのか……。そんな想像を巡らせるときは本当に楽しいです」(手塚さん)  


設計のテーマや建築のコンセプトを先にご提示いただけるときは、それをベースに、どんな人が住みたいと思う物件なのかを考え、細かく紐解いていきます。この「Brillia Tower 堂島」は “旅とアート” というコンセプト、そして多様性のある人たちが居住する物件というテーマがありました。大阪に滞在しているときにパーティーを開くなら……と、想像がどんどん膨らんでいきました。

向き合い吟味することが、普遍的な上質さを作り出す

「リブラスタイル」のスタッフは、手塚さんを入れて4名、すべて女性です。「リブラスタイル」のような小規模の会社はまだまだ少数派。でもだからこそ、独自のテイストや個性が打ち出せること、そして間取りの計画から、家具や小物の選定まで一貫して担当できることが強みになる、と手塚さん。

©Hiroyuki Sato

Mita Renovation 2020:都内にある個人邸のリノベーションは、カラースキーム、インテリアデザイン、そしてコーディネートを手掛けた。凛とした和の空気が漂いながらも、居心地の良さも感じられる、絶妙な空間。


スタッフが多い会社の場合、担当するコーディネーターやデザイナーによってクオリティに差が出ることも無きにしもあらずですし、またデザイン事務所によってはインテリアコーディネートを外注するところもあります。でも私たちの会社は、すべてトータルで手掛けられる。空間は、ひとつの要素だけではなく、すべての要素が絶妙なバランスで調和して成り立つもの。一気貫通だからこそ、ブレのない完成度の高い空間を作ることが可能なんです。

©Hiroyuki Sato

Mita Renovation 2020:「こちらは、外国人のクライアントが剣道のレッスンのために来日した際、泊まる別邸。日本文化がとてもお好きな方のイメージを具現化しました」(手塚さん)

時代が変われば、マンションや住空間に対する人々のニーズも変化します。そんな中でリブラスタイルが大切にしているのは、住む人にとって機能的であり、上質で、心地よい空間であること。そして、普遍的であること。

本質的な意味での “心地よい空間” を作りたいと思っています。そのために、ひとつひとつのものを、時間をかけて吟味していきたい。私がこの仕事を始めたばかりの頃、先輩たちに教えていただき印象的だったのが、似たような色の壁紙でも、光の当たり方でまったく印象が変わるということ。どんな小さなことでも “いろんな角度からしっかり吟味する” ということを学ばせてもらいました。

かつてに比べると今は、ニーズが多様化しているにもかかわらずスピード感も求められます。でもだからこそ、何事にも丁寧にしっかり向き合うという姿勢はなくしたくないですね。

DATA

手塚 由美

リブラスタイル 代表取締役
二級建築士・インテリアコーディネーター
https://librastyle.com

株式会社リブラスタイル
リブラスタイルは、新築マンションや個人邸など主に住宅のインテリアデザインを手掛けています。
それぞれの住まいの魅力と暮らしのストーリーをコンセプトからディティールに至るまでデザインし、様々なスタイルのインテリアを創造します。多くの要素をバランス良く繊細にデザインすることで、暮らす喜びを感じる普遍的なインテリアを目指しています。

Text by Yuki Kono
Edit by Ayako Isetani
Photos by LIBERO CREATIVE, Nacasa&Partners, Hiroyuki Sato
         

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