祭りで感じる東京の温度【前編】
~神楽坂、麻布十番、六本木~

2024.09.20

BEARS MAGAZINEでは都心の高級住宅地を中心に「都心、街の暮らし」と銘打って、暮らしている方の目線からその魅力をお伝えしてきました。今回はこれまでに取り上げてきた街で開催される “祭り” にフォーカス。実際に編集部が現地を訪れ、特別な日だからこそ表に現れる街の魅力を前後編に渡ってご紹介します。

<今回取り上げる街の過去記事>
何気ない生活のワンシーンも楽しめる街「神楽坂」
人のあたたかさに包まれる暮らし「麻布十番」
夢を追う人々が住まう「六本木」の、地に足のついた暮らし

2024年で開催50回を迎えた「神楽坂まつり」

まず訪れたのが、7月24~27日の4日間にわたって新宿区神楽坂通りで開催された「神楽坂まつり」。1972年に始まり、今年で50回目を迎えました。周辺にある3つの商店街が共同で主催しており、前半は「ほおづき市」、後半は「阿波踊り大会」の2部で構成されています。今回は阿波踊り大会を訪問しました。

「神楽坂まつり」

阿波踊り大会は神楽坂下から神楽坂上にかけた通りと、赤城神社前から神楽坂上にかけた通りが舞台。個性豊かな衣装を身にまとった無数の連隊が、踊りながら通りを練り歩きます。歩道からは多くの訪問客がじっくりとその様子を見物していました。

石畳敷きで風情ある通りは多くの人で埋まり、ライブ会場のような熱気あふれる舞台へと変わります。踊り手の汗がこちらまで届くのではないかというほどの近距離で、臨場感あふれる阿波踊りを見られるのがこの祭りの魅力と言えるでしょう。

出場している連隊は地元の「神楽坂かぐら連」や「東京神楽坂連」だけでなく、都内の区役所や企業が結成したものなど街の外からも集結。日本三大阿波踊りに数えられる「東京高円寺阿波踊り」で有名な、高円寺に拠点を置く連隊も複数参加していました。いずれも衣装と踊りはもちろんのこと、メンバー構成も多種多様。小学生ほどの子どもたちも、大人に混ざって逞しく踊りを披露していました。

新宿区役所の職員を中心に結成された「新宿区役所つつじ連」。
連隊の先陣を切る子どもたち。大人に劣らぬ堂々とした踊りを見せる。

坂を登り切って平坦な場所に出ると、各連隊は立ち止まって陣形を変えながら踊りを披露。待ち構える多くの見物客に迎え入れられ、この祭り一番の盛り上がりを見せます。その前に佇む善國寺も普段の厳かな雰囲気とはうって変わって、無数の提灯で彩られていました。

都内有数の規模を誇る「麻布十番納涼まつり」

続いて訪れたのは、8月24・25日に開催された「麻布十番納涼まつり」。麻布十番商店街が主催しており、今年で58回目を迎えました。例年2日間でのべ40万人以上が来場し、都内でも有数の規模を誇ります。

「麻布十番納涼まつり」

麻布十番駅から地上に出ると、祭りの横断幕と大勢の来場客による賑わいが出迎えます。商店街の両脇には、地元の老舗からチェーン店まで幅広いラインナップが屋台を出し、その数は100件以上。普段はひっそりと佇むお店も積極的に祭りに参加している様子が印象的でした。

地元店舗に混ざって屋台を出すスーパー。

期間限定の屋台が多数出ているのも「麻布十番納涼まつり」の魅力です。「おらがくに自慢」という企画では、全国各地の市町村役場が地元のグルメを販売。元麻布にあるリトアニア大使館も屋台を出していました。商店街だけで完結するのではなく、外部からの参加も積極的に受け入れ、共に祭りを盛り上げようという気概を感じます。

過去記事にて麻布十番にお住まいの方へインタビューした際にも登場した、リトアニア大使館の屋台。

商店街のシンボルとも言える「パティオ十番」で開催されるショーも目玉の1つ。広場にはステージが設営され、ダンスやロックバンドの演奏など様々な演目が披露されます。絶えず多くの見物客で賑わい、商店街の中でもとりわけ高揚したムードに包まれていました。

数ある演目の中でも目を引いたのは「ガマの油売り」を再現したショー。日本語と英語を織り交ぜて披露され、多くの外国人が足を止めて楽しんでいました。海外の方が多く住まう麻布十番ならではの特徴と言えるかもしれません。

「ガマの油売り」の演目。日本語と英語のバイリンガルで披露される。

東京の中心地で日本文化を楽しむ「六本木ヒルズ盆踊り」

最後にレポートするのは、8月23〜25日に開催された「六本木ヒルズ盆踊り」。主催は六本木ヒルズ自治会で、そこに住む人と働く人、近隣の町会が一体となって開催する祭りです。ビルがオープンした2003年から始まり、今では六本木の夏の風物詩となっています。

「六本木ヒルズ盆踊り」

会場は六本木ヒルズアリーナと六本木けやき坂通り。アリーナの中心には巨大な櫓が組まれ、それを取り囲むように屋台や縁日が軒を連ねます。屋台は六本木ヒルズ内にある店舗が出しており、和洋中とバリエーションに富んだ料理やお酒を味わえます。

六本木けやき坂通りにも周辺の飲食店によるキッチンカーや、子ども向けのワークショップが出店。祭りの日らしい賑わいはありつつも、木々がさざめく通りの心地よさは普段のままで、気持ちよく外で食事を楽しめました。

六本木ヒルズアリーナの外周に立ち並ぶ屋台。

日が傾くと、アリーナの中心で祭りの目玉である盆踊りが開始。参加は自由で、音頭が流れると周囲から続々と人が出てきて櫓の周りで踊り始めます。その場で寄り集まったにもかかわらず、音楽に合わせて一体感のある踊りを披露する様は見事でした。

浴衣や洋服など、身にまとうものも様々な踊り手たち。

盆踊りの合間に毎年違う日本芸能が披露されるのもこの祭りの魅力です。この日は石川県輪島市に伝わる「御陣乗太鼓(ごじんじょうだいこ)」を見ることができました。鬼の仮面を身に着けた丈夫が太鼓を打ち鳴らす演目で、400年以上の歴史を誇ります。雄たけびを上げながら太鼓を叩く様は迫力があり、来た人はみな食い入るように見つめていました。

石川県の指定無形文化財「御陣乗太鼓」。その迫力は見物していた子どもが泣き出してしまうほど。

「御陣乗太鼓」が終わるといよいよ祭りも終盤です。この祭りのために作られた「六本人音頭」が流れ、櫓の周囲は人が密集して踊れるスペースがなくなるほどに。それでもほとんどの人が手振りや手拍子で踊りに参加し、会場全体がこの日最高の熱気に包まれます。普段の閑静で広々とした空間からは想像もつかないほどインパクトのある光景でした。

特別な日にこそ表出する街の温度

3つに共通して感じたのは『街の外の人々も巻き込んで盛り上げよう』という意識。「祭り」というイベントが内外の接点となり、初めてそこを訪れた人にも魅力が伝わりやすくなっているように感じました。街の温度を感じに、それぞれの祭りへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

Text & Edit by Sotaro Oka
         

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