世界が注目する「ブラジリアン・モダニズム」家具の魅力とは?

2025.06.20

高温多湿な風土から生まれた独特な家具

ブラジルは年間を通して高温多湿な気候で雨の日も多い国。伝統的な家具である「ハンモック」は暑さと湿気を避け、空中で寝るために作られたものでした。ブラジリアン・モダンのハイエンドな家具も、発想の原点はこの特徴的な自然環境にあります。

――初めて見たときは衝撃的でした。インテリアデザイナーの片山正通さんもご自身のSNSの投稿で『全く違ったデザインDNA』と、感想を述べられています。

中里:おっしゃる通り、こういったデザインは他の国ではほとんど見られません。例えば一般的なソファですとフレームがあって、その上にクッションを置く形になっているのが通常です。一方ブラジルのソファは、フレームにレザーベルトを渡して、木との接地面を小さくすることで、通気性を持たせているんです。

――レザーが多用されていることにも何か理由があるのでしょうか?

中里:あります。もし布地だったら、カビが生えるとシミになってしまったり、除去できなかったり素材の劣化スピードが早いです。その点、レザーはカビが生えても拭き取ることができるので、ブラジルの気候には適しているんです。

――使用されているのは牛革ですか?

中里:そうですね。ブラジルは牛肉を食べる国なので、皮をなめす技術が発達しています。中身を食べて外側は家具に使う。地産地消ですね。

飛び抜けた木材の加工技術

――モダンでありながら、野趣溢れるデザインからは、どこか先住民族の文化が感じられます。

中里:ロドリゲスの椅子に用いられている球体のモチーフは、まさに先住民族の道具からインスピレーションを得たものです。また、初期の代表作「モチョ・スツール」は、農村部に普及する乳絞り用のスツールをモダンに解釈しています。このデザインは商業的にも大きな注目を集めました。

(左)「トニコソファ」©Sergio️ Rodrigues Atelier (右)「モチョ・スツール」©Lin️ Brasil

――木の表情にも特色がありますね。

中里:ブラジルの木は聞いたことがない名前のものばかりなんですよ。堅牢な「ジャカランダ」を始め、どれも独特です。ブラジルはもともとカヌー作りの伝統があるので、木材の加工技術はかなり飛び抜けていて、このテーブルに使われている木材は切り出して加工をしています。

「バートンテーブル」

日本の住空間に取り入れるには?

――日本の住空間に取り入れるとしたらどうしたらいいでしょうか?

中里:おすすめはソファですね。自分でもブラジル家具のソファを使っています。とても座りやすいのと、他の人が持っていないのでかぶらないのが魅力です。

――日本のラグジュアリー邸宅で “内外の一体化” を意識するという話をよく聞きます。

中里:ブラジル家具は、例えばリビングとテラスの間の掃き出し窓を開け放って、外から湿気が入り込んできても問題ないです。屋外での使用にも耐える塗装で作られたテーブルセットもありますので、バルコニーで食事を楽しむこともできると思います。

サイズ感がダイナミック!

中里:実はブラジルも富裕層の住宅は、外と中が区切られていない、庭から室内まで繋がった広い空間が多かったんです。土地が広くスペースの余裕があるので、家具のサイズ感がダイナミックな点も特徴です。

©Atelier Ricardo Fasanello

ちなみに弊社BEARSの代表は身長180㎝のアスリート体型ですが、リカルド・ファザネロの「アネル アームチェア」に興味を引かれたよう。この椅子は座面が空いた抜け感のあるデザイン。ところが実際に座ってみると、見た目の印象以上に包み込まれるような安定感がありました。

©Atelier Ricardo Fasanello
リング状の背もたれが特徴の「アネル アームチェア」。BEARSのオフィスにこの椅子がお目見えする日も近そう。©Atelier Ricardo Fasanello

知られざるブラジル家具の世界、いかがでしたか?

一つひとつはアート性の高いオブジェとして目にも楽しく、“使えるアート” としての魅力が際立ちます。インテリアとして生活空間に置かれると、ゆったりとした雰囲気を醸し出すのも、さらなる魅力。部屋の中が多少乱雑でも許容してくれるような包容力を感じました。

©Atelier Ricardo Fasanello

「ブラジリアン・モダニズム」の家具は、ヴィンテージだけでなく現行品も製作されています。気になった方は、ギャラリー「CASA DE」をぜひチェックしてみてください!

Text by Kyoko Hiraku
Edit by Saori Maekawa
DATA

中里恭宏 Mitsuhiro Nakazato

2008年に英国にてアンティークのバイイングコーディネーターとして活動を始める。2010年に東京でビンテージ家具を扱うATELIERを設立。2014年に家具だけでなくアートや美術品を取扱う「Objet d’art」を立ち上げる。その後「CASA DE」などいくつかのギャラリーのディレクションを行い、国内外の店舗やイベントスペースにてインテリアのスタイリングや設計・デザインを手がけている。また、著名建築の保全活動なども行っている。

CASA DE

Art Modern Japan 株式会社が運営するギャラリー「CASA DE」はミッドセンチュリー期のデザイナーズ家具を現在も引き継ぐアトリエの現行品を取り揃えるギャラリー。家具の輸入販売をメインに、空間スタイリング・内装設計などを行っている。
gallerycasade.com ※ショールーム:ご予約制
〒173-0037 東京都板橋区小茂根2-13-10

家具は以下の企業で取り扱いがあります。
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BlumoLaboratoryy | Fern | Barntopso

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