都市に新たな “レガシー” を。
みんなでつくる「都立明治公園」

2025.06.13
2024年1月、2020年に開催された東京五輪のメディアセンター跡地に「都立明治公園」(以下、明治公園)が開園しました。新宿区と渋谷区にまたがるこの都市型公園は、広大な樹林地と3つの広場、5つの店舗で構成され、人々が心地よく憩うことのできる場所として親しまれています。今回も前編に引き続き。プロジェクトを手がけた東京建物株式会社 新規事業開発部の黒田敏(さとし)さんに、各施設や公園で開催される多彩なイベントについてご紹介いただきます。
都立明治公園

「TOKYO LEGACY PARKs」に込めた思い

黒田敏さん(以下、黒田):コンセプトとして掲げているのは『TOKYO LEGACY PARKs/世界に誇れる、東京という都市の “レガシー” となる公園』です。レガシーと聞くと過去の遺産を受け継ぐイメージがありますが、私たちの願いはこの公園が将来的に都市にとってのレガシーとなることです。そして『このような公園が東京にさらに増えてほしい』という想いから、複数形の “s” を加えています。

このコンセプトに基づき、園内の樹林地「誇りの杜」はこれから都民の皆さんとともに時間をかけて育てていけるようハーフメイドにしているほか、子どもの遊び場である「インクルーシブ広場」の遊具は柔軟に入れ替えができるなど、次世代を見据えた仕様になっています。

また開発・運営にあたっては5つのフィロソフィーを重視して、自然と人が共存できるサステナブルな公園づくりを目指しました。

明治公園が掲げる5つのフィロソフィー

公園の自然と賑わいが共存する店舗空間

園内にはシンボル的存在である「希望の広場」、円形のデザインが印象的な「インクルーシブ広場」、渋谷川の水景を現代風にアレンジし再現した「みち広場」の 3つの広場と、約7,500㎡を有す樹林地「誇りの杜(もり)」のほか、5棟の店舗が配置されています。

黒田:従来のPark-PFI事業[*]では飲食施設が中心でしたが、明治公園では自然や文化との調和に重きをおいて、訪れる人に豊かな体験を提供できるテナントを選びました。また国立競技場や明治神宮野球場、秩父宮ラグビー場といったスポーツの聖地が近隣に集まっていることから、スポーツ観戦やアクティブなライフスタイルを楽しむ人々のニーズも意識しています。

*公園内に民間事業者が飲食店や商業施設を設置し、そのテナント収益で公園の整備や運営を行う仕組み

「Meiji Park Market」

開放的な空間で公園の景観を楽しめる複合型フードホール。ベーカリーカフェ、コーヒースタンド、フライドチキンサンド専門店の3店舗が集結し、テラス席ではペットの同伴も可能です。


「PLAY EARTH PARK WONDER STORE 都立明治公園」

「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」などのブランドを展開するアパレルメーカー「ゴールドウイン」による、新業態のライフスタイルショップ。園内で使用できるモルックやキャンプチェアのレンタルを行っているほか、キッズラインを含めたアウトドアウェアも充実しています。


「BLUE SIX COFFEE (ブルー シックス コーヒー)」

世界中の農園に足を運び、トップグレードのコーヒー豆だけを自家焙煎し、雑味のない、風味豊かで安全なスペシャリティコーヒーを提供。自家製のティラミスやタルトといったスイーツ、パワーサラダやBLTサンドといったフードメニューも提供しています。一階はペット同伴での入店が可能です。


「TOTOPA(トトパ)」

スーパー銭湯「おふろの王様」を運営する東京建物が、これまでの知見を活かして開発した都市型スパです。女性用フロアには肌や髪のダメージをケアしながらデトックスできる蒸し湯、男性用フロアには3種のユニークなサウナと2種の水風呂を完備。ランニングステーション、フィットネススペースも設けられており、多様なニーズに合わせた運動×リラクゼーション体験を提供しています。

黒田:各施設の外壁は自然に溶け込むアースカラーで揃え、木製のルーバーをあしらっています。それぞれが中央の広場や歩道とシームレスにつながる設計で、事業期間が終わって建物を撤去した際に大きな空白地が生まれないよう、あえて店舗を分棟配置しているのも特徴です。

キャンプチェアやテーブルをレンタルして家族や友人とゆったりした時間を過ごしたり、ランニングの後にサウナでのんびりしたりと、さまざまなシチュエーションで店舗を活用して楽しんでもらいたいですね。

散歩をしたり、食事をしたり、音楽を聴いたりと思い思いの過ごし方をする来園者たち。

地域や企業と共創するイベント

黒田:明治公園では公園内の店舗や協力企業、利用者、地域住民など、あらゆる人々とともにイベントをつくり上げています。なかでも象徴的なのが、年に1度の「みんなでつくる!明治公園祭」です。近隣の学生による吹奏楽の演奏やダンスパフォーマンスのほか、近隣の飲食店がブースを出し、地域住民と訪問者が一体となってとても盛り上がりました。

黒田:また企業が公園でイベントを実施する際にも、ただ場所を貸すのではなく当社や園内のテナントと一緒にイベントを作るスタイルをとっています。2024年のゴールデンウイークにはサントリーと共に「のんある PICNIC FES by SUNTORY」を開催しました。

気持ちの良い新緑の季節にワイヤレスヘッドフォンでDJの音楽を聴きながら、ノンアルコールカクテルを味わうピクニックイベントです。園内の店舗からはイベント用にキャンプギアの貸し出しも行われました。

「のんある PICNIC FES by SUNTORY」の様子。近隣住民への配慮もあり、このようなスタイルになったそう。

データに基づいて生み出される新たな価値

黒田:明治公園は “都市実験の場” としての機能を持ち合わせているのも特徴です。例えば園内に設置された「AI Beacon」は、来園者のスマートフォンから年齢や性別、勤務地、居住地や興味関心などの属性を割り出し、データとして蓄積することができます。この取り組みは国内の公園では珍しく、取得したデータは園内で開催するイベントやテナントの運営などに活かしています。

「AI Beacon」が内蔵されているスマートポール。園内各所に設置されている。

黒田:昨年取得したデータでは、30代の女性を中心に243万人の方にご来場いただいたことがわかりました。来園者数は公園整備当初に立てた目標を上回っており、想定していたターゲット層ともばっちり合っています。

一方で、夏場に入ると来園者数がぐっと減ってしまうという課題も見えてきています。敷地内の杜がまだ育ち切っていないこともあり、大きな日陰をつくり切れていないんです。また店舗の利用者数や購買率もまだまだ上げていきたいので、利用に繋げられるようなイベントを今後実施していこうと考えています。

東京建物と都立明治公園が描く未来

黒田:2025年9月には、新国立競技場で世界陸上が開幕します。こうした催しと連携して公園でもイベントを展開し、さらなる賑わいを創り出していきたいですね。また当社は明治公園の開発とともに秩父宮ラグビー場の建替事業にも参画しており、神宮外苑エリア全体でシナジーを生み出していくのが今後のミッションです。

公園に隣接する新国立競技場

都会の中心にありながら、自然やトレンドの店舗が共存する憩いの場として進化を続ける都立明治公園。そこには地域住民やさまざまな企業とともに作り上げていく、東京の新たな公園のカタチがありました。訪れた際には、その魅力をぜひ体感してみてください。

Text by Natsuki Numao
Edit by Sotaro Oka
DATA

黒田 敏 Satoshi Kuroda

東京建物株式会社 新規事業開発部 課長代理
https://tatemono.com/

1989年北海道生まれ。2012年に東京建物株式会社に入社し、住宅販売業務に従事する。その後マンション開発業務を経て、新たなマンション販売の形を追求したコミュニティ施設併設のモデルルーム「OOOI」を開発する。2020年からはPPP事業の投資検討業務に従事。現在は新規事業開発部 インフラ・PPP推進グループにて、新規事業開発を通して新たな不動産ビジネスの可能性を追求している。

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