カリモク家具のものづくりを伝える “共有地”
「Karimoku Commons Tokyo」
ショールームの枠を超えた、ものづくりの発信地
――「Karimoku Commons Tokyo」(以下、コモンズ トウキョウ)はどのような施設でしょうか。
金子栞さん(以下、金子):全国にショールームを展開してきましたが、家具そのものを“見るための場所” ではなく、家具とともに過ごす時間や空間そのものを体感していただける場をつくりたいと考え、2021年2月に「Karimoku Commons Tokyo」、2023年に「Karimoku Commons Kyoto」をオープンしました。
コモンズには “共有地” という意味があり、お客様とコミュニケーションを重ねて、ものづくりの背景やストーリーをお伝えしていくための複合施設です。

――3階建ての建物ですが、それぞれのフロアの役割を教えてください。
金子:1階がギャラリースペース、2・3階が家具のフロア、そして屋上スペースという構成で、カリモク家具の “いま” を発信しています。私たちは『暮らし、ものづくり、木』など、それらに対してとても真摯に向き合いながら家具作りを行っています。1階のギャラリースペースでは、そんな価値観に共感してくださるさまざまなクリエイターさんや企業さんなどと共に、個展や企画展を開催しています。

金子:家具フロアについては、2階は「Karimoku Case」を中心にレイアウトし、3階は「Karimoku New Standard」・「MAS(マス)」の2ブランドを展示しています。屋上にも家具を配置していますが、ここはホッと一息つける場所でありながら、展示とプロダクトテストなども兼ねた実験的なスペース。まだ展開していない屋外家具の製品化を目指し、雨風にさらされる環境下で耐久性をチェックする場としても活用しています。


五感を研ぎ澄ませる、こだわりの空間づくり
――レイアウトのこだわりを教えてください。
金子:空間づくりにはとてもこだわっていて、約半年に一度、プロのインテリアスタイリストの方々にテーマに沿ったスタイリングを施していただいています。


金子:BGMや香りにもこだわっていて、特に香りはコモンズオリジナルのアロマを炊いています。
――この空間のために、アロマを作られたんですね。
金子:はい。この場所を立ち上げる際に製造や営業部門の社員も集まってワークショップを行い、セッティングデザイナーさんに “コモンズらしい香り” を調合していただきました。家具を見る・触れるだけでなく、音や香りなど他の五感にもこだわることで、訪れる方に暮らしの喜びやヒントを感じていただけたら良いなと思っています。

“いま” を表すレイアウトとプロダクト
――現在のコーディネートのテーマを教えてください。
金子:今季のテーマは『envision(想像する)』。コロナ禍を経て働き方が多様化したと同時に、暮らし方や部屋の使い方、そこに求める要素も増えました。“働く” に紐づけて、想像力が膨らみ、生産性が高まるような家具のセレクトとレイアウトが組まれています。
3階はオフィス空間をイメージし、向かいに座る人と仕事をしながら会話をしたり、集中して仕事に向き合ったりするようなイメージでレイアウトしています。2階は、家族で団欒する場所もあれば、ラウンジチェアと作業のしやすいサイドテーブル、デスク&チェアなど、ホームシーンをイメージできるスポットをいくつかご提案しています。


金子:時代によってニーズが変わるように、この空間自体が弊社の “いま” を見ていただく場だと捉えています。時にはプロトタイプのものを取り入れて、製品化する前にお客様に “生の声 ”を聞くこともあります。

――コモンズの “いま” を表すようなプロダクトはありますか。
金子:最近で言うと、発売前から展示しているカリモクケースのソファでしょうか。麻布の高価格帯マンションのリノベーションプロジェクトのために開発したもので、しっかりとした木部の土台がありながら、コロンとかわいらしいフォルムが特徴です。
こちらは靴を脱いで部屋に上がり、床に直接座る日本の生活様式に合わせてデザインされています。床座の際背もたれになるようシートハイ(床から座面までの高さ)を高めに、座面はあぐらをかいたり寝転がったりしやすいよう奥行きを深く設計されています。

会話とともに空間を楽しんで欲しい
――こちらにはどんな方がいらっしゃいますか。
金子:熱心に質問してくださる方、長時間滞在される方が多いイメージですね。『床はこの色で、壁はこの素材、窓に対してこの向きに置きたくて…』など具体的でパーソナルな話も交えてお話ししてくださることもあるので、私たちも楽しくご案内させていただいています。一方で、“カリモク家具=実家で長く使われるような安心感のある家具” とイメージされていた方が何気なく来られて『カリモクさんって、こんな家具も作っていたんですね!』と嬉しい反応をいただくこともあります。
――どなたでも気軽にお邪魔できる場所なんですね。
金子:もちろんです。身構えずにフラッと来ていただいて、お話がお好きな方は家具を見ながらスタッフとの会話も楽しんでいただければと思います。私たちはコミュニケーションも大切にしていて、ここでは色々な方と話すのを楽しみにしているメンバーが働いています。家具は毎日触れるものなので、座り心地や触り心地、塗装の風合いなど、ぜひ体感しに来ていただきたいです。

木の課題と向き合うカリモク家具のものづくり
――コモンズでは、今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。
金子:“共有地” という意味を持つ場所なので、いろんなタッチポイントとして機能できたらと思っています。ブランドや製品の世界観を伝える発信源となることももちろん大切ですが、私個人としては、ここで過ごす時間そのものを楽しんでいただきたいという思いがあります。スタイリストさんに素敵にコーディネートしてもらったこの空間で、お客様にゆったりと過ごしていただけるようなイベントなども企画していきたいです。


―― “カリモク家具のものづくり” として、目指している理想像はありますか。
金子:私たちは創業当時から、木という素材にずっと向き合い続けてきました。日本にはとても豊かな森林資源があり、全国の森には多種多様な木が生息しています。『長い年月をかけて大きくなった木を、家具をつくるために使わせてもらっている』という感覚が常にあるんです。

金子:国内の林業は持続的な森林保全、従事者の高齢化や人手不足など、さまざまな課題があります。私たちは、木材を扱う家具メーカーとして、森の健やかな循環を途絶えさせない責務があると考え『適正価格で木材を購入する』『未利用・低利用材の積極的な活用』など、さまざまな取り組みを続けてきました。そうやってつくり上げた家具で “お客様の豊かな暮らしに寄与する”、それが私たちの考える理想の姿です。その実現に向けて、これからも真摯にものづくりを続けていきたいと思います。

前後編にわたって、カリモク家具のものづくりの哲学に迫ってきました。ご紹介いただいた家具はどれも洗練されていながら、木ならではの風合いや手に馴染むような質感も心地よく、暮らしに寄り添ってくれそうなものばかり。そんな家具を美しくレイアウトしたコモンズで過ごす時間は、豊かな暮らしを叶えるためのインスピレーションを与えてくれそうです。

Karimoku Commons Tokyo
ショースペースだけではなく、オフィスやギャラリーなどの機能を備えた、幅広い活動を目的としたハイブリッドなスペース。訪れた方々には家具を実際に使用しながらカリモク家具の活動をご覧いただくと共に、様々なもの・ことに触れられる新しいコミュニケーションの場となることを目的としている。 〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目22-5 営業時間:12:00-18:00 HP:commons.karimoku.com

金子栞 Shiori Kaneko
カリモク皆栄株式会社事業開発部プロモーション課。 Karimoku CommonsやKARIMOKU RESEARCH CENTERの運営と共に、両拠点にまつわる企画展や家具ブランドのPRや広報業務を担当。





