「ミラノ・サローネ2026」訪問記— ベスト・プレゼンテーション編

2026.07.17
3回にわたってお届けしている「ミラノ・サローネ2026」訪問記。会期中は、インテリアブランドだけでなく様々なギャラリーやデザインスタジオもプレゼンテーションを行います。Vol.3では特に印象的だった2つの展示と、番外編として高感度なレストランをご紹介します。

■ NILUFAR DEPOT GRAND HOTEL

ひとつ目は「NILUFAR DEPOT GRAND HOTEL(ニルファー・デポ・グランド・ホテル)」。ミラノ郊外にある倉庫を会場に “The Grand Hotel” という架空のホテルを構想したプレゼンテーションです。

この展示を主催した「Nilufar Gallery(ニルファーギャラリー)」は、ミラノに拠点を置く世界的なデザインギャラリー。歴史的な名作家具と新進気鋭のデザイナーによる現代アートをミックスした、独特のキュレーションで知られています。

今回の展示では3フロアを使い、ヴィンテージアイテムとアルチザンピースをコーディネート。ホテルのレセプションエリアからラウンジ、客室という想定で再現された空間を見て回る趣向も楽しく、次の空間に進むたびに新鮮な驚きがありました。

ギャラリー創設者のニナ・ヤシャーはペルシャ絨毯のディーラーをルーツに持ち、東西双方の文化を受け継ぐ美意識の持ち主。時代もテイストも多様なピースを組み合わせ、濃厚な空間演出へと昇華する力強さに圧倒されました。

■ Dimore studio

「Dimore studio(ディモーレスタジオ)」は、イタリアの歴史的ディテールと意表を突くコンテンポラリーなエレメンツの融合を得意とする建築・インテリア事務所。

今回は1947年築の歴史的な邸宅「Palazzo Olivazzi(パラッツォ・オリヴァッツィ)」を舞台に、同スタジオの新ブランド「Interni Venosta(インテルニ・ヴェノスタ)」の展示会を開催しました。

昨年のミラノ・サローネで話題を呼んだロロピアーナのインスタレーションを担当した事務所が、これまで公開したことのないアパートメントで開催する展示とあって、前評判が非常に高く、最終日に2時間並びようやく入場することができました。

建物や既存の家具と調和するように、直線的なソファや漆塗りのテーブル、磨かれたスチールのオブジェなどを配置し、ディモーレスタジオの持ち味である70年代のニュアンスを取り入れたキュレーションに心をぐっと掴まれます。

歴史を感じさせるキャビネットの傍らには、古い木枠を残して座面をアクリルに変えた椅子が。

貴重な “ハウスミュージアム” を探訪するような没入感のある体験は、2時間並んだ価値のあるもの。現代の家具やオブジェが歴史あるインテリアと対話するかのように設置され、空間の中で繊細に響き合っていたことに感動を覚えました。

■ SOGNI

最後に番外編として、インテリアが素晴らしかったレストラン「SOGNI(ソーニ)」をご紹介します。

イタリア語で “夢” を意味する「SOGNI(ソーニ)」は、20世紀初頭の建物で営業する地中海料理のレストラン。ミラノを代表するセレクトショップ「ANTONIOLI(アントニオーリ)」のオーナーが手がけているだけあって、センスの良さには定評があります。

一歩足を踏み入れると、そこはミラノ中心部とは思えない隠れ家的な世界。かつて幼稚園として使われていたというフロアは、ムードの異なる複数のエリアに分かれていました。

歴史ある重厚な建築と現代の家具、アートをキュレーションした空間づくりは、ハイエンドなインテリアトレンドにも通じるもの。そうした潮流が商業空間でも体験できるのは、さすがデザイン都市・ミラノならではの醍醐味といえます。

鈍く光るモールディングを施した壁に、ソファの布地が美しく調和する。

ベスト・プレゼンテーション編、いかがでしたか?

『A Matter of Salone(ア・マター・オブ・サローネ)』をテーマに掲げていた今回のミラノ・サローネ。 表面的な仕上げではなく、背景にある記憶や時間、技術、未来への可能性を読み解き、空間や暮らしに新たな意味を与えるという思いが込められていました。デジタルやAIが浸透し、あらゆるものが情報化されていく現代だからこそ “実際に触れられるもの” や “時間の記憶を宿す素材” には、どのような価値があるのかをもう一度問い直す試みでもあります。

今回の滞在で、趣ある古いものと最新の家具、そしてアートが絶妙に調和した空間に強く心惹かれたのも、そのテーマに導かれたからかもしれません。BEARSはここで得たインスピレーションを、これからのプロジェクトの羅針盤にしていきたいと思います。

Text by Kyoko Hiraku
Edit by Saori Maekawa
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