暮らす人たちに愛され、魅力ある街に進化し続ける「前橋」

2023.09.08

「白井屋ホテル」「まえばしガレリア」など、新しいスポットが続々と誕生し、話題を呼んでいる群馬県前橋市。なぜ今、この街が注目されているのでしょうか。そこには、暮らす人々の想いがありました。街の未来を住民がつくる、そんな前橋の魅力を前後編の2回に分けてお届けします。

すべては『めぶく。』から始まった

群馬県のほぼ中心部、赤城山の雄大な自然と利根川の美しい流れに囲まれている「前橋市」。人口約34万人の中核都市で、県庁所在地として群馬県の政治・経済・文化の中心として発展してきました。

前橋市も他の地方都市と違わず、人口減少や地方財政の厳しさなど、さまざまな課題を抱えていました。そんな前橋市が大きく変わるきっかけとなったのが、2016年に発表された前橋ビジョン『めぶく。』です。前橋市が目指す未来が言葉で表現されました。

JR前橋駅前から県庁前まで続くケヤキ並木。訪れたのは夏真っ盛りの7月後半。木陰を歩くと涼しさを感じるとともに、深緑の美しさを楽しめる

この「前橋ビジョン」の誕生において中心的な役割を担ったのが、株式会社ジンズホールディングス・CEOで前橋出身の田中仁さんです。市長と街の活性化について意見交換を重ね、市民が同じ方向を向くためにビジョンをつくることを提案。

市民から構成されるプロジェクトメンバーと共に検討を重ね、『前橋市では、さまざまなこと・ものが芽吹き、未来を作っていくまちである』ということを表現しました。

前橋ビジョンムービー「めぶく。」このコピーは同市出身のコピーライター糸井重里さんが手がけた

前橋ビジョンの発表会には、平日の開催にも関わらず、なんと4000人もの市民が参加したといいます。市民の想いとともに街づくりの取り組みがスタートしたのです。

老舗旅館から生まれ変わった「白井屋ホテル」

並木道を歩いていると、鮮やかな外観がひときわ目をひく「白井屋ホテル」。
前身の白井屋旅館は300年の歴史を誇る老舗旅館でしたが、街の衰退により2008年に廃業してしまいます。取り壊される予定だった旅館を、「前橋ビジョン」を主導した田中さんが引き継ぎ、再生プロジェクトが立ち上げられました。プロジェクトには日本を代表する建築家、藤本壮介さんも参画し、2020年にアートホテルとしてオープン。館内には現代アートが飾られているほか、アーティスト監修の部屋があることも話題を呼んでいます。

もとの旅館をリノベーションした「ヘリテージタワー」。4階までの大きな吹き抜けが開放的。ジャスパー・モリソン氏をはじめとするアーティストたちがプロデュースした客室も設けられている
隣接したエリアに新しく建てられた「グリーンタワー」は、前橋ビジョン「めぶく。」を表現している。


1階にあるラウンジは、「まちのリビング」として作られました。グリーンに囲まれながらランチやディナーを楽しめるほか、ライブなどのイベントも開催されます。 

ラウンジはランチを楽しむ地元の人々で賑わっており、建築やアートを目的にホテルを訪れる若いカップルの姿も見られます。「白井屋ホテル」は市民と観光客が交わる『めぶく。』拠点として、“人が集まる” 場 になっています。

前橋中央商店街側の通りには、白井屋ホテルオリジナルのパンが購入できるブーランジェリーやカフェが並び、市民も気軽に使用できる

市民がアート活動に参加できる「アーツ前橋」

前橋市の文化芸術活動を語る上で欠かせないのが、街の中心部にある公立美術館「アーツ前橋」です。商業施設をリノベーションし、2013年にオープン。市民とアーティストによる文化芸術活動の拠点として、多彩な展覧会やワークショップを開催しています。

2013年の開館以来、前橋市のアート活動を牽引してきた「アーツ前橋」。白いパンチメタルの外壁が印象的

そのひとつが、地元のアーティストや他団体と協力して行う地域プロジェクト「あーつひろば」。アーツ前橋でアートを鑑賞したり、工作を楽しんだり、アーティストと一緒に活動したりと、広場のように様々な体験ができるイベントプログラムです。アートだけでなく、館内のカフェでお茶をしたりミュージアムショップで買い物をすることもでき、子どもから大人まで、市民が気軽に集える場になっています。2023年に10周年を迎える「アーツ前橋」は、特別館長に森美術館特別顧問の南條史生さんが就任しました。10月には10周年特別展覧会も企画されており、アートが街にますます広がっていくことが期待されます。

新しい名所となるアートスポット「まえばしガレリア」

2023年5月には、第3のアートスポットとなる複合施設「まえばしガレリア」がオープンしました。立地するのは、かつて100年以上前から映画館があった場所。そこに、新たな文化の発信源として誕生しました。

「まえばしガレリア」は、中庭を囲むように箱が積み重なった個性的な形。1階は誰でも観覧できる2つのギャラリーと、前橋随一のフレンチレストランがあり、2~4階は大きなテラスが付いた分譲型レジデンスになっています。

設計は、建築家で京都大学教授の平田晃久さん。前橋の人々から街を盛り上げたいという依頼を受け、大きな樹冠をイメージしました。1本の樹の下に人々が集まるように、自由な活動で満ちた場所をつくりたいと考えたと語っています。

取材時、観光客や地元の方々が途切れることなくギャラリーに立ち寄り、アートを鑑賞していました。無料で解放されているため、近くに来たついでなど、気軽にアートを楽しめるのも魅力。『このあたりは少し前まで寂しい雰囲気でしたが、これからが楽しみです』とは、ギャラリーのスタッフの方の声。「まえばしガレリア」の誕生によってり街が活性化することを、人々が期待していることが伝わってきます。

グリーンを効果的に使用したレジデンス。部屋から一歩出るだけで、アートを身近に感じられる

レジデンスの部屋タイプは、ワンルーム、ロフト付き、メゾネットの3種類。全室間取りは異なりますが、大きなテラスが併設されていることが共通する特徴です。テラスに出れば、階下のアートはもちろん街並みも楽しめるという、なんとも贅沢な住居になっています。また、『ゆったりと過ごしつつも、アートから刺激を受けて色々な発想が湧いてくる場所になれば』という想いから、アートを飾れるような壁が設けられているのも、「まえばしガレリア」ならでは。市民がアートや食を楽しみながら生活できる場所として、人気を集めるスポットになりそうです。


「白井屋ホテル」「アーツ前橋」「まえばしガレリア」と、アートと街をつなぐスポットが増えている「前橋」。そこには、前橋を愛する市民と前橋が目指すビジョン前橋ビジョンである『めぶく。』がありました。市民の想いは、街のその他の場所にも変化をもたらしています。

次回は、活気がよみがえってきた「前橋中央商店街」や、前橋にお住まいの方の生の声をご紹介します。お楽しみに!

Text by Miho Sasaki
         

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