別荘地から“東京24区”へ変貌する「軽井沢」

2023.12.01

都心の富裕層の間で軽井沢に移住を考える人が増えています。特に多いのが30〜40代の子育て世代。自然に恵まれた環境に加え “東京24区” と言われるほど暮らしに必要な施設が揃っているのも大きな理由。では、別荘地から変貌を遂げつつある軽井沢で、今どんな事が起こっているのでしょうか。

コロナ禍をきっかけに子育て移住が増加

今回の軽井沢移住ブームのきっかけになったのはコロナ禍でリモートワークが一般化した事でした。都心から新幹線で1時間という距離は通勤さえも可能です。

そこで、若い世代の目から見た最近の街の変化を、軽井沢を専門に扱う不動産会社の代表である牧内建二郎(まきうち けんじろう)さん、地元で生まれ育ち、軽井沢の歴史やお住まいの方々の暮らしをよく知るKさんのお二方に伺いました。

軽井沢最初の教会である「ショー記念礼拝堂」

――軽井沢に家を持とうと思ったら、まず土地の入手が必須ですよね。また、一軒家だけでなく、マンションも増えているのでしょうか。

牧内建二郎さん(以下、牧内):もともとの別荘需要に加えて移住希望者が増えたために急に物件がなくなってしまったというのが、ここ数年の状況です。マンションについては条例による規制があるのでたくさん建てられないという事情がありまして、年に1、2棟くらいができているような感覚です。

Kさん(以下、K):軽井沢と呼ぶエリアは、軽井沢駅がある場所が一番東なんですよ。そこからだーっと西に長い街なんです。もともと旧軽(旧軽井沢)、南ケ丘など、新幹線の前にあった在来線の駅周辺で別荘地が発展していった歴史があります。やはり、その辺りの土地には限りがあるので、開発が少しずつ西に伸びているような印象は受けますね。

©株式会社軽井沢ランドスケープリサーチ

“今”の空気が流れる中軽井沢

そんな “新しい軽井沢” を象徴するのが、中軽井沢「星野エリア」に2009年オープンした「ハルニレテラス」。木立に囲まれたウッドデッキを歩きながらショッピングや食事が楽しめる小さな街なような空間は、今や大人気の観光スポットです。

さらに今年(2023年)3月には蔦屋書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が同じく中軽井沢に「軽井沢コモングラウンズ」をオープン。ここは約3500坪の敷地にインターナショナルスクールや、ワインショップ、雑貨、デリなどが点在する複合施設です。

その中心となる「軽井沢書店 中軽井沢店」は、青山学院女子短期大学の中軽井沢寮をリノベーションした建物。敷地内の軽井沢らしい木々はなるべく切らずに残し、まるで森のなかにいるような悠々閑々とした時間を味わう事ができるのが魅力。

木立の向こうに建つのが「軽井沢書店 中軽井沢店」。1階はLIFETIME LEARNING(生涯学習)をテーマに選書された本が揃う。2階はワーキングスペースになっている

地元の食材を使うオーナーシェフ

軽井沢の”食”も進化しています。近年、オーナーシェフのレストランが続々オープン。食通の間では世界的に、その土地の食材を最大限に利用した料理が人気を集めていますが、軽井沢も例外ではありません。

たとえば地元出身の若き実力派、鈴木夏暉シェフの「NAZ」。北欧の有名店「NOMA」などで修行後、2020年にオープンしたレストランは、1年半〜2年先まで予約が取れない人気店となっています。
 

K:軽井沢は野菜がすごく美味しいんです。それに加えて、長野県の良い食材が集まってきます。近いところでは御代田町、小諸市。佐久市は日本酒が有名ですし、お米どころでもあります。そんな軽井沢の食材に魅力を感じ、都内の高級店で修行したシェフが軽井沢に移住してレストランを開くケースも増えています。


都内から移転、軽井沢の農場の中にレストランを今年(2023年)開業したのは「軽井沢リストランテ小林」。地元の無農薬農家と提携したこだわりの野菜やハーブを使い、独創性のある料理を提供するシェフもたくさんいます。

新鮮な地元野菜を取り揃えた軽井沢町農産物等直売施設「軽井沢発地市庭」(ほっちいちば)」。軽井沢特有の気候が生んだ「霧下野菜」は、柔らかくて甘みがあるのが特徴。残留農薬の検査も定期的に実施。写真は8月中旬ごろ

舌の肥えた別荘族が訪れる軽井沢に美味しいお店が増えていくことはある意味、必然と言えるかもしれません。

世界から注目を集める小諸蒸留所

軽井沢近郊エリアの魅力ある食材の中でも、特筆しておきたいのが小諸のお酒。水はけの良い土壌はブドウの栽培に適している事もあり、小諸産ワインが国内外のワインコンクールで注目を集めています。

K:この10年で小諸峠のワイン生産が本当に盛んになってきて、『有名なフランス物より地元のワインを楽しみたい』という方も多いんです。新しいところでは、小諸発のグローバルブランドを目指しウイスキーを製造する「小諸蒸留所」。私も行きましたがすごく楽しかったです。


今年(2023年)6月に誕生した「小諸蒸留所」は、イギリスの大手専門誌の「世界で最も訪れたい蒸留所3選」の一つに早くも選出されている話題のスポットです。
創業者は元バンカーの起業家、島岡高志氏と、世界的なブレンダーであるイアン・チャン氏。運命に引き寄せられたかのように出会ったお二方はすぐに協業を決意しました。スコットランドにも似た小諸の地で、最高品質のウイスキー作りにそれぞれの残りの生涯を賭けるストーリーには、胸を打たれるもがあります。

牧内:お酒にしろ、食材にしろ、このあたりはポテンシャルが非常に高いという事に、多くの方が気づかれているように思います。軽井沢だけにとどまらず、長野県全体に範囲を広げて魅力を発信していこうという動きが、30〜40代の移住者の方を中心にかなり出てきていますね。


軽井沢の開発が西へ広がると同時に、近郊の土地に魅力を感じる若い世代が増え、結果的にこのエリア全体が活性化。今、軽井沢にどんどん人の目が向いている背景には、自分の視点で良いものを発信していく、ソーシャルメディアの存在も一役買っていました。

旧軽井沢に新しい息吹を吹き込む美術館

外国人宣教師の別荘地として始まり、文化人にも愛されてきた軽井沢は、文化の香り高い街。美術館も数多くある中、Kさんのおすすめは旧軽井沢エリアの泉の里に新しくできた「リヒター・ラウム」です。

「ドイツ最高峰の画家」とも呼ばれる現代アーティスト、ゲルハルト・リヒター。その作品を常設展示するこの美術館は、リヒター氏の協力のもと、ドイツ・ケルンの郊外の森にあるアトリエを再現しています。

©︎ 2023 Gerhard Richter / Wako Works of Art、Photo: Ken Ishimaki
「リヒター・ラウム」のために制作された初めての野外彫刻
《Strip Sculpture Karuizawa》(2023)©︎ 2023 Gerhard Richter / Wako Works of Art、Photo: ToLoLo studio
Richter Raum展示風景(2023年)より、《Grey Mirror (Reminiscence)》(2015)、《STRIP 927-10》(2012/2023)Exhibition copy, loan of the Gerhard Richter Kunststiftung、《25 Colours》(2007)、《8 Glass Panels》(2012)©︎ 2023 Gerhard Richter / Wako Works of Art、Photo: ToLoLo studio
ここでしか見ることができない貴重な作品もある(要予約)

K:「リヒター・ラウム」は、すごくコンパクトにまとまっている美術館。作品の見応えは充分あり、建築の佇まいもとても素敵です。これからも、このような小型で存在感のある美術館が少しずつ、点々と増えて行けば面白いですね。

軽井沢らしい品格のある再開発

西側エリアの開発と同時に、軽井沢駅周辺の再開発が始まったのも最近の大きなニュースです。さらに、海外からも熱い視線が。

牧内:現在、軽井沢駅の南口には軽井沢プリンスショッピングプラザ(通称 アウトレット)がありますが、これからは北口側に大手のデベロッパーによる商業施設や文化施設が増えていきます。また、来年は新幹線が福井まで伸びるので、すでに福井や京都からのお問い合わせをかなりいただいている状況です。アジア諸国を筆頭に、海外の方が物件をご購入されるケースも多いですね。

国際色豊かな教育の街へ

外国人に避暑地として見出され、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻にも愛された軽井沢。海外からの移住者が増えつつある今、避暑地、観光地としてだけではなく、定住の地としての国際化が始まっています。

豊かな自然に囲まれつつ “東京24区” と言われるほど暮らしに必要な施設が揃っている軽井沢は、子育てには最高の環境。近年はインターナショナルスクールが増え、グローバルな人材が育っていくことが新たな軽井沢の魅力となりそうです。

牧内:教育機関では、3歳から15歳までの12年間のユニークな一貫教育を謳う「軽井沢風越学園」が注目を集めています。また、生徒の約7割が留学生という日本初の全寮制国際高校「アイザックジャパン(ISAK)」など、世界基準のインターナショナルスクールが軽井沢の地に根づきつつあります。

「軽井沢コモングラウンズ」の敷地内にある「イートンハウスインターナショナルプリスクール軽井沢(EtonHouse International Pre-School Karuizawa)」。2歳から6歳までの子どもたちが、自然の中で遊びながら学んでいく

いかがでしたか?

クラシックな別荘地・観光地から自然の中で家族が暮らせる街へ。さらには、国際色豊かな教育の街へ。大きく変貌を遂げようとしている軽井沢には注目のスポットが次々と誕生しています。その新しい魅力を体験しに、軽井沢へ足を運んでみてはいかがでしょうか。



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DATA

牧内建二郎|Kenjiro Makiuchi

株式会社 軽井沢ランドスケープリサーチ 代表取締役
https://karuizawalr.com/

Text by Kyoko Hiraku
         

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