神社のお祭りが地域とつながる場に

――毎年9月の例大祭も、穏田神社と地域の方々がつながる良い機会になっていますね。

船田：当社の3つの町会の神輿の連合渡御［＊］や4年に1度お出しする宮神輿ともうひとつ、例大祭の中で大切にしているのが境内で行う子ども向けの演芸大会です。カラオケ大会、じゃんけん大会、紙飛行機大会など、父が氏子の皆さんと協力して長年続けてきた行事を、私の代でも継続しています。

_{＊渡御（とぎょ）。神様が神輿や船に乗って、神社から地域を巡幸すること}

船田：子どもたちが楽しそうに参加してくれて、親御さんたちも地域のつながりを楽しみにしてくれています。将来その子たちが大人になった時に『穏田神社のお祭り、楽しかったな』と思い出して、今度はご自身の子どもを連れて参加してくれたら嬉しいですね。

――世代を越えてつながれる、素敵な取り組みですね。

船田：人のつながりというのは本当に重要で、地域の行事などを通して若い世代に『人とのつながりやコミュニティはこうやってつくっていくんだ』と実感してもらうことが、人の出入りが多い表参道や原宿という街を育てるためには非常に大切だと思うんです。穏田神社のお祭りがそのきっかけになっているという自負がありますし、これからもこのつながりを守っていきたいと思っています。

――地域にも船田さんと同じ志を持った方が、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

船田：毎年例大祭を無事に執り行えるのも、地域の皆さんのご協力があってこそ。氏子さんや総代（氏子の代表者）さん、総代のお子さんやお孫さんの代まで、お祭りや行事を積極的に手伝ってくださいます。皆さん『自分たちの街をより良くしたい』という想いがあって、町会が行うさまざまな取り組みの一環として神社の行事にも協力してくれているんです。本当にありがたいことだと思っています。

変化を受容しながら続いていく街

――代々、この街を見守ってきた穏田神社の宮司として、10年後、20年後の表参道はどのような街であってほしいと思われますか。

船田：表参道は日々変化を受容しながら、文化が生まれていく街だと思っています。2024年には「オモカド」「ハラカド」が開業しましたが、「ハラカド」には高円寺の有名な銭湯「小杉湯」の新店舗が入るなど、新たなコミュニティを生み出しています。これからも時代の波を作っていく場であり続けるだろうし、それがどういう形になったとしても『表参道らしいな』と受け入れられるのではないでしょうか。

船田：ここは夢や希望を持って出て来た若者に、『やってみなよ』『協力するよ』と地域の方が手を貸してくれる、人情に溢れた街だと思うんです。かつての自分を受け入れてくださったように、私も年代など関係なく関わる全ての方々に対してリスペクトを持って、一緒にこの街をつくっていきたいです。表参道は、そういう優しい街であり続けてほしいと思います。

――最後に、船田さんにとって豊かな暮らしとはどんなものでしょうか。

船田：些細な日常の中にちりばめられている “幸せだと思える瞬間” に気付けることだと思います。その瞬間をつくり、感じることは一人では難しくて、誰かと一緒に生きたり、一緒に何かを作ったりするその延長線上にあるのではないでしょうか。そういった人や心のつながりを大切にしながら、これからも暮らしていきたいです。

表参道で幼少期や学生時代を過ごし、今では街を見守り、つくる立場になった船田さん。移り変わる街の中で、『つながりを大切にしたい』という変わらぬ想いを抱えながら、今日も参拝者を笑顔で迎え入れます。心穏やかに過ごせる穏田神社のような場所があることが、ここでの暮らしをさらに魅力あるものにしてくれているのでしょう。