「KAMADA」が語る究極のくつろぎ

2022.11.11

就寝前の30分、お気に入りの椅子に腰掛けて自分だけの時間を過ごす。

そんな選びぬかれた大人のための上質でラグジュアリーな時間に寄り添うベストパートナーのひとつが、北欧ヴィンテージ家具です。


株式会社KAMADA」とBEARSの関わりは約5年前、代表の宅間が北欧ヴィンテージ家具の名品「ベアチェア」に出会ったことから始まります。その椅子が持つ魅力の虜になった宅間が知人から紹介されたのが鎌田さんでした。

コープオリンピアに納品していただいた椅子。現在はBEARS事務所に置かれている。

──誰かが創り、所有し、維持し、受け継ぎ、それを分かち合う。

BEARSの空間への想いと、北欧ヴィンテージ家具には通じるものがあります。今回の前編ではKAMADA社の事業内容に、後編では実際に取り扱っている北欧家具についてお話を伺っていきます。

建築設計の分野から家具の世界へ

株式会社KAMADA代表の鎌田剛社長(左)と、弊社代表の宅間(右)。今回は六本木ショールームにてインタビューにお答えいただきました。

宅間理了(以下 宅間):KAMADAの事業内容に関してお聞きしたいと思います。北欧ヴィンテージ家具の輸入販売、買取・委託販売が主な事業になるのでしょうか。

鎌田剛さん(以下 鎌田):KAMADAで扱う家具は、少なくとも半世紀以上前に作られたデンマーク産の木製家具がメインです。これらは現在では製造されていない作品が多く、いつ出会えるかは予想できません。明日かもしれないし、一年後かもしれません。ご要望をいただいたお客様に作品が見つかり次第連絡を差し上げ、オークションの下調べから落札、日本への発送手配、傷んだクッション材の交換やファブリックの張替えと、納品までの全てに携わるのが主な事業になります。

「ベアチェア」の爪と呼ばれる部分。実際のメンテナンスの様子。

また、ご使用いただく上で木部の修繕やアフターケアが必要となる場合も多々あります。こちらも専門の職人によってヴィンテージ家具特有の風合い、質感を考慮してご要望に応じたメンテナンスを行うので、安心して末永く使っていただくことが出来ます。もし、ご事情があって大切な家具を手放す場合は、次のオーナー様にお譲りするお手伝いもさせていただいております。

宅間:インテリアコーディネート、撮影・展示会用レンタル(リース)と空間作りにも力を入れていらっしゃいますね。

鎌田:家具は作品単体でも魅力的ですが、陶器やオブジェ、照明など、インテリアアクセサリーを合わせることで、より一層魅力が引き立てられます。私は買い付け時や作品のヒストリーを探るために読む書籍からもその重要性を感じてきました。そこで、北欧ヴィンテージ家具に似合いそうなインテリアアクセサリーも少しずつ集めて、お客様にご提案できるよう目指しています。

照明やインテリアアクセサリーが家具の魅力を引き立て、より魅力ある空間に。

宅間:鎌田さんは北欧ヴィンテージ家具の良さにはいつ頃気付かれましたか? 何かきっかけなどあったのでしょうか?

鎌田:私は若い頃、設計事務所で働いていました。デザインと構造計算を担当する部署に配属され、沢山の図面に触れた事が北欧ヴィンテージ家具に惹かれるきっかけになりました。建物の場合、まず構造にかかる風や地震などの負荷にどう耐えられるかをクリアした上でデザインを考えていきます。家具も同じで、まず負荷に耐えられる構造を持っていることが大前提で、その上でデザイン性が求められます。中でも人の体重という負荷がかかる椅子は、それに耐える構造を持ちながらもデザインを追及した “究極の家具” なのではないか、そう思ったのです。

宅間:そこから家具の世界へ。最初からヴィンテージ家具を扱おうと思っていたのですか?

鎌田:最初は量産品の家具を扱う会社に勤めました。オーナーと一緒にアメリカに買い付けに行くことも多かったのですが、休みの日に訪れたビバリーヒルズのギャラリーでヴィンテージ品の椅子を見せてもらい、自分が扱っている量産品との違いに圧倒されました。

その後知人にシカゴのオークションに連れていってもらい、『こういう家具の買い方があるんだ』と知りました。それまでは家具は何百キロも車を走らせて汗水垂らして買いに行くものだと思っていましたから。シカゴのオークションで大理石のテーブルを一点落札した時、その経験の全てが良かったんです。『自分も世界中の人も欲しがる物の持つポテンシャル、それをもっと深く研究して仕事にしていきたい』と決意が固まりました。思い立ったらまず、とばかりにデンマークに飛び、オークションに参加して、自分に何が出来るのかを模索しました。

宅間:それが今から約12年前ですね。当時はそもそもビジネスとしてやっていけるのか疑問だったということですが……。

鎌田:けして平坦な道ではありませんでした。世界中の何処からかも、何時見つかるかも分からない商品と出会ってから、お客様に連絡をしてオークションに参加する。全て前金になりますし、海外のオークションで家具を購入するという方法自体も敷居が高いと感じる方が多いので、人件費やテナント料のかかるショールームを持つこともリスクになります。

この仕事は度胸がないとやっていけないんです。目の前に崖がある。でも『自分が生きる道はそこにしかない』くらいの気概でやってきました。『オークションの参加からメンテナンスまで全てやるので任せて下さい』そうお客様を説得して回って、1件、また1件と契約に繋がるようになったんです。

北欧ヴィンテージ家具のある暮らしへのイメージを膨らませてくれるショールーム。木の温もりに安らぎます。

一人一人に寄り添う末永いお付き合い

宅間:KAMADAさんには、弊社で企画・販売した「コープオリンピア」に椅子を入れていただきましたね。これまで様々なお客様に北欧ヴィンテージ家具の魅力を伝えていると思いますが、印象的な方はいらっしゃいますか?

鎌田:いまから約9年程前のことです。フィン・ユール作の「NV45番」を含む名作をいくつか手に入れたくて、800万円を貯めたお客様がいらっしゃいました。当時の価格は約130万円。買うなら今しかないというタイミングでしたが、その方は『まだ自分はそんな身分ではないので』と躊躇っていらっしゃいました。

『それなら、私が買って倉庫に保管しておきます。タイミングが来たら納品に上がります』と提案し、話が纏まりました。数年後、そちらのお客様は念願の「NV45番」を迎えることができたのですが、その時の価格は約4倍に跳ね上がっていました。先に買ってもらって良かったと、今でも思い出話に花が咲く事もありますね。

もう一つはハンス・ウェグナー作の「スイヴェルチェア JH502」を遺して亡くなった方の奥様のお話です。遺書に私の名前があったので電話をしてみたものの、その椅子に価値があるか分からないと戸惑ったご様子でした。電話口でお話を伺い、都内のご自宅で現物を確認すると、本物のヴィンテージ家具であることが判明しました。

日本よりアメリカのオークションに出した方が良い値になるかもと出品してみたのですが、その際は残念ながら不落。その後日本国内で欲しいという方が現れたので、旦那様の大切な「JH502」を無事に次のオーナーさんへと引き継ぐことができました。

年代や製造メーカーごとに金属プレートやラベル、焼き印が入っている。「JH502」はヴィンテージモデルの証となるプレートが付属していたためすぐに本物と確認できたそうです。

一点一点を楽しみ、感性を養う

宅間:鎌田さんは北欧ヴィンテージ家具をどうやって暮らしに取り入れて欲しいと思っていらっしゃいますか?

鎌田:椅子でしたら寝室に、できれば明るい配色の物を一脚置いてもらいたいです。そして、寝る前にゆったりと腰かけていただきたい。木の温もりに触れ、ゆっくりと撫でながら『これを作ったマイスターはなぜこのディテールを追求したのか』と思いを馳せてみる。そして『今日も一日お疲れ様』、『明日も頑張ろう』と自分を労わって欲しいのです。

一点一点を楽しみながら使う。これが究極のくつろぎだと思っています。座れれば良いだけの椅子に座る、音楽が聴ければ良いだけのスピーカーで音楽を聴く。それでは感性を刺激することはできません。

私はライフスタイルこそ人生最高のエンターテイメントだと考えています。良い物を長く所有することの豊かさ、そのきっかけを作りたい。KAMADAが目指すヴィジョンはそこにあります。

『北欧ヴィンテージ家具を暮らしに取り入れることで、本当に良い物を所有し、感性を養っていくきっかけにして欲しい』。それが鎌田さんの願いであり目標。

建築の分野から北欧ヴィンテージ家具の輸入販売へ。『平坦ではない』とおっしゃる道を切り拓いてきた鎌田社長のお話からは、熱意とお客様との信頼関係が伝わってきました。

鎌田社長を魅了し続ける北欧ヴィンテージ家具の魅力とは、一体どのようなものなのでしょうか。
次回も引き続き、その魅力やショールームについてお話を伺っていきます。

DATA

鎌田 剛

株式会社KAMADA 代表取締役
https://kamada-japan.com/

古き良き時代に誕生した北欧ヴィンテージ家具の輸入販売を行う。
定期的に海外で開催されるオークションに参加して希少ヴィンテージ家具の買付けを行い、木部メンテナンスから生地の張替えを含めたサービスの提供と行う。
また、家具コンシェルジェとしてヴィンテージ家具の査定やお客様のコレクションの管理を行い、後世によりよい形で継承していくためにサポートを行う。

Text by Mana Yasuda
Edit by Ayako Isetani , Misaki Matsumoto
Photos by Mitsuo Yamamoto , Fumiko Nakayama
         

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