伝統を受け継ぎ、いまへと紡ぐ——グランフォルム白金日吉坂vol.2

2026.06.19
東京・白金台の駅至近で、八芳園の緑を望むヴィンテージマンション「グランフォルム白金日吉坂」。その1住戸をBEARSが約1年かけてリノベーションしました。

マンションの魅力やリノベーションの過程をお届けした第1回に引き続き、今回はこの空間全体に込めた想いやこだわりについてご紹介します。

コンセプトは『伝統を紡ぐ』

専有面積約182㎡、北東と南西の角住戸。間取りは既存の3LDKから、現代の暮らしに合わせ2LDK+DEN(*)へと変更しました。玄関を中心に、住まいのパブリックゾーンとプライベートゾーンを緩やかに分けています。

設計・デザイン・インテリアコーディネートを手がけたのは、ラグジュアリー空間のデザインを数多く手がける「リブラスタイル」。代表取締役の手塚 由美さんにプランや内装デザインのこだわりを伺いました。

(*)デン:書斎や収納、趣味のスペースなどさまざまな用途で使用できるコンパクトな部屋

完成後の間取り図。寝室と隣接するパウダールームやユーティリティ・ストレージルームを設けるなど、海外風の構成に。

——リノベーション前のこの物件の印象について教えてください。

手塚:マンションの竣工から37年が経過していながら、外観が非常に綺麗かつ重厚で、それだけの年月が経っているようには見えませんでした。室内でも天然石を始めとするバブル期の立派な建材や住宅設備を贅沢に使用し、都心で駅近にありながら緑を望む立地と、現在の都心マンション市場においてこれほどのスペックを持つ住戸は極めて希少だと感じました。

(左)グランフォルム白金日吉坂の外観。角部に穏やかなアールを施し、重厚な石材で包み込んだデザインは巨大な岩のよう。
(右)エントランスホールには「mobilia(モビリア)」のスネークソファが。御影石の壁に深いブラウンレザーがマッチする。

——リノベーションのコンセプトを教えてください。

手塚:コンセプトは “伝統を紡ぐ” です。古き良き時代のものに現代のエッセンスを加えながら再構築し、未来へと継承していくことを目指しました。

ここ数年は『白を基調としたシンプルで明るい空間にしたい』というニーズが多くありましたが、昨年のミラノ・サローネに足を運んだ際、古き良き時代の憧れをエッセンスとして取り入れたデザインがトレンドとなっていくのを感じていました。

建てられた当時の “良いもの” を現代へ継承していく在り方は、まさにそのトレンドとぴったりマッチしています。時代性への感度が高い方々に響く空間をつくりたいという思いから、今回のコンセプトが生まれました。

玄関ホールには「バロビエール&トーゾ」のペンダントライトと「GiGi(ジジ)」の収納を配し、明るく華やかな空間に。

——どんな方に住んでもらうことをイメージしましたか?

手塚:この “立地” と “本物” に価値を感じてくださる方に選んでいただけたら嬉しいです。近年、都心のマンション価格が高騰し、新築ともなると投資目的で購入される方が増えています。中古マンションの市場にも同様の潮流が来ている中、この住戸は『資産としてではなく “住む場所” として選んでいただきたい』という想いがあります。だからこそデザインの美しさはもちろん、細かいところまで “暮らしやすさ” を意識して設計しました。

温かな色調の光が心地よい時間を演出

古き良き意匠と現代の機能性の両立

——空間作りで意識した部分について教えてください。

手塚:全体として暗くならぬよう床と壁は明るい色でまとめつつ、リビング壁の一部や扉などの建具にダークカラーを取り入れることで、コントラストのある空間を意識しました。リビングダイニングの壁と天井には珪藻土を用いて、職人による左官仕上げにしています。

天井も全て左官仕上げ。ラウンドフォルムの家具と調和するアールを取り入れたデザインは職人の手仕事だからこそなせる業。

手塚:ライティングは “くつろぎ” をテーマに電球色で統一し、ダウンライトにもグレアレスのものを採用し、直接光が目に届かぬよう工夫を凝らしました。リビングの照明は調光機能によって5つのシーンを用意しており、時間帯や過ごし方に応じて使い分けていただけます。

アフター画像
ビフォー画像

手塚:居住性という観点では、収納力と住宅設備を現代の暮らしに合わせてアップデートしています。昔のマンションでは不足しがちな収納量を確保するために、主寝室の隣にあった居室をウォークインクローゼットと、さまざまな用途で使用できるDENに分けました。そのほかにも玄関にシューズインクローゼット、リビングダイニングに共用の収納を追加するなど、暮らしの動線に合わせて収納を配置しています。

(左)右側をウォークインクローゼット、左側をDENに。クリアグレーのガラス引き戸で主寝室と柔らかく空間を仕切っている。(右)ウォークインクローゼットに使用されている部材は全てヨーロッパで作られたもの。

手塚:キッチンも元々壁に囲まれたクローズドでしたが、現代で人気のオープンスタイルへと変更し、料理をしている間も家族や客人との談話を楽しめるようにしています。

また新たにユーティリティ兼ストレージスペースとして玄関ホールとキッチンを繋ぐ空間を設けました。パントリーとしてはもちろん、ホームパーティーの出張シェフやお手伝いさんがリビングを介さず行き来ができる裏導線としてもお使いいただけます。

開放的なキッチン。右手奥がユーティリティスペースへと繋がっている。

かつてのデザインへ回帰しつつ、現代のライフスタイルに合わせてアップデートを遂げた「グランフォルム白金日吉坂」。 “本物” の価値を大切にしているBEARSは細部にまでこだわりを散りばめています。次回は各居室ごとのディテールやインテリアについてご紹介します。

DATA

手塚 由美 Yumi Tezuka

株式会社リブラスタイル 代表取締役

新築分譲マンションやリノベーションなど、住空間を中心にインテリアデザインを手掛ける。それぞれの住まいの魅力と暮らしのストーリーを、コンセプトからディテールに至るまで丁寧に描き出し、多様な要素を繊細なバランスで取り入れることで、暮らす喜びを感じられる普遍的なインテリアを追求。これまでに「三田ガーデンヒルズ」、「Brillia Tower 堂島」、「ジオグランデ芦屋船戸町」など、国内を代表するレジデンスプロジェクトの空間デザインを手掛けている。
https://librastyle.com

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