伝統を紡ぐリノベーション、その完成形。
細部に宿る美意識を紐解く
——グランフォルム白金日吉坂vol.3
連載の第1回ではマンションの魅力やリノベーションの過程を、第2回ではこの空間に込めた想いやこだわりをお届けしました。第3回となる本記事では、さらに踏み込んでインテリアや住宅設備など、細部にまで行き渡るこだわりをご紹介します。前回に引き続き、設計・デザイン・インテリアコーディネートを手がけた「リブラスタイル」代表取締役・手塚 由美さんにお話を伺いました。
大自然が育んだアートをリビングに
——今回、一番こだわったポイントを教えてください。
手塚:テレビ台の背景として配置した天然石「ムーンライトロータス(訳:月明りの蓮)」のアートウォールです。実はこれ、別の物件で使用する石を探すため中国・厦門(アモイ)の石材マーケットを訪れた際、偶然見つけた1点ものなんです。一目見てこの物件にマッチすると思い、BEARSに連絡してその場で買い付けました。

手塚:アンティーク加工による凹凸があるのが特徴で、日光が差し込むと美しい陰影が浮かび上がります。そして名前通りの独特な色合いは、空間のアクセントとなるのはもちろん、どうしても際立ってしまう真っ黒なテレビ画面を目立たせない役割も果たしてくれます。
意匠性と機能性を兼ね備えたキッチン
――キッチンの天板に使われている石も柄が非常に印象的ですね。
手塚:これはカラカッタタイムと呼ばれる柄で、白いベースの中にわずかにグリーンを帯びたグレーのラインが流れるダイナミックな模様が特徴です。「コンフォート」が今年の4月から取り扱いを始めたもので、今回日本の住宅で我々が初めて導入しました。3mある1枚板から作られており、天板からサイドパネル、シンクの小口部分まで柄が繋がっているのが美しさのポイントです。



手塚:冷蔵庫を開いた時に中が見えると生活感が出てしまうので、少し奥まったスペースに配置しているのもこだわりです。デザイン性だけを考えれば海外製のビルトイン冷蔵庫を取り入れるのも良いですが、収納力や使い勝手ではやはり日本の置き型タイプが優れています。取り替えやすさも考慮して、あえて冷蔵庫置き場を設ける形にしました。それ以外にも、キッチンには使い勝手を意識した工夫を凝らしています。


(右)空間全体の静かな美しさを損なわぬよう、引き出しはスライドレールを露出させない端正な意匠に仕上げている
華やかさを演出するライティング
——玄関ホールでこだわったポイントはありますか。
手塚:まずは玄関入ってすぐに見えるブラケット照明ですね。「Barovier & Toso(バロビエール&トーゾ)」というイタリア・ムラーノ島で創業した、世界最古の歴史を持つベネチアガラスの名門ブランドのものを採用しています。ガラスのパーツ一つひとつが職人による手吹きで、中心の白い部分が光って周りに反射することで幻想的な雰囲気を醸し出します。

手塚:玄関ホールとダイニングの間にある「GiGi(ジジ)」の “魅せる収納” もポイントです。ダイニングからの自然光を取り込むことで明るさと開放感を持たせつつ、飾り棚として使っていただくことで華やかさも演出できます。ダイニングの「moooi(モーイ)」の照明をホールから見通せるのも素敵ですよね。


(下)収納に組み込まれた調光照明は、物を収めるための機能を超え、暮らしにやさしい余韻を添える
——その他にこだわっているポイントはありますか?
手塚:主寝室に隣接するプライベートな水まわり空間では、元々シャワーブースがカーテンで仕切られただけになっていました。しかし現代の日本ではドライとウェットをしっかりと分けるのが主流となっているので、独立型へと変更しています。



手塚:デザイン面ではシャワールームをガラス張りにし、ペデスタル型洗面台を採用することで、ホテルライクな空間に仕上げています。トイレの背景にあるアクセントタイルは、同じ模様ながら仕上げの異なるものを互い違いに配置することでデザイン性を増しています。
“温故知新” の豊かさを象徴する家具
——家具はどのように選定されましたか?
手塚:家具は宅間社長と話をしたときに、『コンセプトや時代の潮流を踏まえると、やはり「Molteni & C(モルテーニ)」だよね』と意見が一致したので、迷うことなく決まりました。

手塚:ソファーを壁に寄せず、部屋の中央に配置することで周囲を歩ける “回遊動線” を確保しています。北東側の窓際にはあえて背もたれを設けず、外側を向いて座ることで「八芳園」の緑が望めるようにしました。
また積極的にラウンドフォルムの家具を採用することで、マンション特有のソリッドな印象を消し、豊かな空間を演出しています。それ以外にも1970年代に活躍したジオ・ポンティの復刻チェアや、ラディッシュのアクセントカラーをコーヒーテーブルやクッションに取り入れることで、古き良き時代を思わせるテイストを散りばめています。

リノベーションを終えて――
手塚:近年よく手がけているモダンテイストの空間では、内装にこれほど濃い色や大柄、家具の色数を採用することがほとんどなかったので、今回のデザインは私にとってチャレンジングでした。しかしこの住戸は十分な広さがあったため、うまく引き算しながら上品にまとまったと思います。

37年の時を重ねたヴィンテージマンションの魅力を受け継ぎながら、現代の暮らしに求められる機能性や快適性を丁寧に重ね合わせた「グランフォルム白金日吉坂」。そこにあるのは単に新しく生まれ変わった住まいではなく、時代を超えて受け継がれる素材や意匠に新たな価値を吹き込み、“本物” とともに暮らす豊かさを体現した空間です。
細部まで緻密に計算された設計と、空間全体を貫く “伝統を紡ぐ” というコンセプト。その一つひとつの積み重ねが、この住戸ならではの上質な住まいを形づくっています。
BEARSはこれからも、住まいが持つ本来の価値を見つめ直し、次の時代へと受け継ぐリノベーションに取り組んでいきます。

手塚 由美 Yumi Tezuka
株式会社リブラスタイル 代表取締役
新築分譲マンションやリノベーションなど、住空間を中心にインテリアデザインを手掛ける。それぞれの住まいの魅力と暮らしのストーリーを、コンセプトからディテールに至るまで丁寧に描き出し、多様な要素を繊細なバランスで取り入れることで、暮らす喜びを感じられる普遍的なインテリアを追求。これまでに「三田ガーデンヒルズ」、「Brillia Tower 堂島」、「ジオグランデ芦屋船戸町」など、国内を代表するレジデンスプロジェクトの空間デザインを手掛けている。
https://librastyle.com





