完成したクレストコート砂土原。こだわりのディティール

2023.02.03

市ヶ谷駅からほど近い山の手、 “市谷砂土原” に佇む瀟洒(しょうしゃ)なマンション「クレストコート砂土原」の一室をBEARSがリノベーションしました。

連載の第1回目では物件のある “市谷砂土原” の歴史や街並み、第2回目ではマンション共有部や解体工事前の居室の様子、そして第3回目ではリノベーションのコンセプトや内装デザインのこだわりについてご紹介してきました。今回は各部屋の詳細や素材に迫り、物件のさらなる魅力をお届けしていきます。

設計、デザイン、インテリアコーディネートを手がけた株式会社リブラスタイル代表取締役・手塚由美(てづか ゆみ)さんを中心に、照明デザインを担当した大好照明の大好真人(おおよし まさと)さんにお話を伺いました。

──印象的な玄関ホールについて教えてください。

左:玄関ホールの床に配した天然石は、各パーツの配置まで考えて切り出したもの。/右:玄関ホールの照明の演出や、リビングに向かうアプローチも印象的だ。

手塚由美さん(以下 手塚):豊かさを感じる玄関ホールは、元の広さを活かしたものです。デザインするにあたって、部屋に入ったときに、自分の家に帰ってきたという気持ちやうれしさが込み上げてくるようなホールになるよう意識しました。

最大のこだわりは、天然石を使った床のデザイン。本物の石をこれだけの大きさで使用するのは本当に贅沢なことなのですが、さらにグレーはなるべく青みのあるもの、白はなるべく無地に近いものとイメージを伝えて、石の塊から切り出してもらっています。ドアを開けて最初に目にする玄関は、家の象徴ともいえる場所です。ほかにはないものにこそ価値があると考えているので、この家だけのためにデザインしました。その家にふさわしいリノベーションをするBEARSだからこそ、実現できたことだと思います。

大好真人さん(以下 大好):玄関の照明は、「おかえりなさい」の光と称してデザインしました。帰宅して玄関扉を開けた際、玄関正面にディスプレイされたアートや絵画だけがふわっと浮かび上がるように灯る工夫をしています。家に帰ってきたときの気分を、心豊かに高めてほしいと思います。

──リビングダイニングは約75平米もあるとか。広がりを感じるリビングは、どのような点にこだわりましたか?

左:中央部分を周囲より一段高くとった折り上げ天井内部のゆるやかなカーブは、照明が点灯しない昼間でも空間を美しく演出。/右:バイオエタノール暖炉とローボードの意匠は、広い壁のアクセントとしての役割も果たしている。

手塚:リビングは、都内の集合住宅では珍しい広さと、窓から見える樹木の借景の素晴らしさを活かしました。この広大なスペースにあわせたボリューム感のある家具をコーディネートすることで、家の主役ともいえるリビングらしい風格を意識しています。

実はこの物件は、窓のセンター位置と壁のセンター位置、折り上げ天井の位置が異なり、設計上リノベーションで変更するのが困難でした。それをテレビやアートを掛けられる壁と、バイオエタノール暖炉の部分に視点が分断されるように配置して微妙なずれをうまく活かしたデザインにし、さらに大きなラグを敷くことで違和感のない空間としてまとめ上げています。また暖炉は、部屋の中で自然と視線が向かうフォーカルポイントとしての役割も果たしています。

大好:大きなゆったりとしたソファでくつろぐ際、リラックスした光で過ごせるように天井には大きな間接照明を配しています。ここは元々天井が高くなっていましたが、解体工事でさらに大きくとれることが分かったので、折り上げ天井を最大限大きくしてもらいました。間接照明が仕込まれた天井の内部は角に丸みをつけていて、天井をより高く感じ、光がよりきれいに広がるような工夫をしています。

──ダイニングスペースのこだわりを教えてください。

左:おもてなしにふさわしい大理石カウンターは、天然石ならではの表情が豊か。天然のローズウッドの収納扉と相まって空間に深みをもたらす。/右:天井に映るペンダントライトの光も、空間にさりげないアクセントを添える。

手塚:収納扉は、希少な天然ローズウッドの突板を使って、ウレタンの鏡面仕上げを施しました。実はこの収納は、梁の出っ張りを隠すための設えでもあり、部屋の形状をデザインで処理した結果なのです。変えることが難しい形状の解決策を、収納という用途や空間としての美しさに落とし込みました。ガラス扉の飾り棚には蝶番が見えないような金具を使うなど、細かい部分にも工夫を凝らしています。

また、この空間の主役になっているダイニングテーブルは、既製品だとなかなかなマッチするサイズがないので特注で作ってもらったものです。中央にテーブルランナーやサービングプレートなどを置ける幅のあるサイズで、欧米感覚で使える仕上がりになっています。

そして、もうひとつのこだわりが工事の初期に仕入れた大理石のおもてなしカウンターです。BEARSの宅間社長と一緒に岐阜まで石を見に行き、大理石の白と茶色のバランスや柄を見ながら選びました。そして一枚板のように見えるよう、接合部を考えて柄を合わせて切り出しています。ホームパーティの際にはウェイティングスペースになったりと、さまざまなシーンをイメージして設置しました。

大好:ダイニングには、華やかに食卓を彩るペンダント照明を配しました。天井を強く照らすペンダント照明は、空間全体を明るく、家族の表情を豊かに見せてくれます。また、テーブルに用意された料理を美味しく見せる工夫として、スポットライトのようにテーブルを照らせるようにました。間接照明とスポットライトの光で、レストランのような光も演出できるようになっています。

──プライベートスペースである主寝室とバスルームについてはどうでしょうか?

主寝室の隠れた主役ともいえる広い窓からは、やわらかな光が降り注ぐ。
左:ダブルボウルの洗面化粧台は、細かなものを収納できる引き出しなど使い勝手も考えたオリジナルデザイン。/右:主寝室とカラーパレットを統一したバスルームは、ホテルライクな雰囲気に。

手塚:この物件は、主寝室の窓越しに見える木々や光も素晴らしく、とても印象的でした。その窓の真正面にベッドを配して、開放感のある気持ちよいベッドルームとしてデザインしました。ベッドのヘッドボード部分の壁を少しだけ窪ませ、ここだけアクセントウォールにすることで寝室ならではのあたたかみと高級感を備えた空間に仕上がっています。

隣接するパウダールームとバスルームにもこだわりました。まずパウダールームは、洗面化粧台もオリジナルでデザインしたものです。上下の間接照明や、柱に乗っているような洗面ボウルのデザインで、高級感とリラックスできる雰囲気を意識しました。そして広いバスルームは、イタリア製のタイルを貼って、オーバーヘッドシャワーを設置するなど、5つ星ホテルと遜色ない水回りに仕上げています。

──それ以外の居室についても、ポイントがあれば教えてください。

それぞれ充分な広さを備えた個室。各部屋に窓があるため明るくて過ごしやすく、収納量を増やしたことでさまざまな用途に対応できる空間に仕上げた。

3つの個室は、どの部屋もリノベーション前より収納量を増やして、時代にあわせた住みやすさにアップデートしました。リモートワークできるワークスペースとして、書斎や趣味の部屋として、お子様がいれば子供部屋として……、などライフスタイルにあわせてフレキシブルな使い方ができるよう意識しています。

いかがでしたか。

今回は、「クレストコート砂土原」の細部にわたるこだわりについてお伝えしました。

各部屋の材質選びから家具、照明に至るまで一切の妥協なく考え抜かれ、上質感のある佇まいと格式を備えた本物件。時代にマッチした感性やライフスタイルにあわせたアップデートなど、リノベーションの魅力を最大限に活かした仕上がりを感じていただけのではないかと思います。

上質な素材をふんだんに使用し、高級物件を数多く手掛ける専門家が連携してトータルな世界観を作り上げていく。それは新築の集合住宅では叶わない、この一軒だからこそ可能になる最高峰のインテリアデザインです。

都心の一等地では希少な約260平米という広さ。築後36年の年月を経て熟成された気品ある存在感。その魅力をさらに高める究極のリノベーション。それらすべての相乗効果が生むプライスレスな価値こそが「クレストコート砂土原」の真価なのです。

DATA

手塚 由美

リブラスタイル 代表取締役
二級建築士・インテリアコーディネーター
https://librastyle.com

株式会社リブラスタイル
リブラスタイルは、新築マンションや個人邸など主に住宅のインテリアデザインを手掛けています。
それぞれの住まいの魅力と暮らしのストーリーをコンセプトからディティールに至るまでデザインし、様々なスタイルのインテリアを創造します。多くの要素をバランス良く繊細にデザインすることで、暮らす喜びを感じる普遍的なインテリアを目指しています。




大好 真人

照明デザイナー
https://daisukilight.com/

1983 / 茨城県生まれ
2008 / 東京理科大学大学院修士課程修了
2008 / LIGHTDESIGN INC.

大規模再開発事業、空港、音楽ホール美術館、ホテル、住宅など国内外の100をこえるプロジェクトに携わる。病院や葬祭場など、張り詰める場の照明設計を通して人の心に作用する光を見つめなおす。

2020 / DAISUKI LIGHT inc.設立

「Light Up Our Lives」─光はわたしたちを明るく生き生きとさせてくれるもの─を信念に、人の心に寄り添う光のデザインを提案している。



Text by Hitomi Miyao
Edit by Misaki Matsumoto
Photos by Mitsuo Yamamoto, Fumiko Nakayama
         

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