「真価」に込められた3つの意味。本物が調和する、時代にふさわしい空間へ。

2023.01.20

市ヶ谷駅からほど近い山の手にありながら、閑静な邸宅が建ち並ぶ “市谷砂土原” の一角に佇む瀟洒(しょうしゃ)なマンション「クレストコート砂土原」。その一室にある、BEARSがリノベーションを手がけた物件が遂に完成しました。

第1回目では物件のある “市谷砂土原” の歴史や街並み、第2回目ではマンション共有部や解体工事前の居室の様子を紹介しましたが、第3回目となる今回はリノベーションのコンセプトや内装デザインのこだわりに迫ります。

設計・デザイン・インテリアコーディネートを手がけた株式会社リブラスタイル代表取締役・手塚由美さんにお話を伺いました。



――リノベーションのコンセプトについて教えてください。

この物件に初めて伺った際に印象的だったのが、立地のよさと、建物が持つ風格の素晴らしさでした。まずは、広くて管理が行き届いていて、時の流れを感じさせない共用部。そして、室内は約260平米と都市部では珍しい広さと天井の高さなどが申し分なく、窓からは豊かに茂った樹木の存在を感じることができる――リノベーションにおいて変えることが難しい建物固有のデメリットがほとんど見当たらず、やりがいのある物件だと感じました。

左:中庭に生い茂る常緑樹を借景として楽しむことができるリビングの大窓。ヴィンテージ物件ならではの持ち味を活かした贅沢な空間設計が魅力。/右:リビングの壁にはバイオエタノール暖炉を配し、くつろぎの空間を演出。思い思いのひとときを楽しむことができる。

リノベーションの際に意識したのは、この物件が持つポテンシャルを活かしながらアップデートし、今の時代にふさわしい価値のあるものにすることです。コンセプトは『真価』ですが、真の価値ということだけでなく、アップデートを意味する『進化』でもあり、価値を深めていくという『深化』でもあります。いろいろな意味を込めて、物件の価値を高め、希少価値のあるものにしたいという想いで進めていきました。

「真価」というコンセプトにふさわしい空間にするべく、特注のダイニングテーブルや造作棚など、住み心地のよさとさりげない高級感にこだわりが。

――リノベーションにあたり、具体的にイメージしたことは?

設計を始める際に作成するコンセプトシートでは、BEARSの宅間社長から共有いただいたイメージも参考にしています。広い廊下や間仕切りの少ない空間の贅沢な使い方であったり、アートがふんだんに飾られている海外の高級物件の資料を見て、リノベーションのイメージを膨らませていきました。そうやって物件にふさわしい高級感を備えながらも、感度の高い方にも刺さるようなセンスのよさを多方面から掘り下げたのがこの物件です。

入った瞬間に広がりを感じる玄関スペース。リノベーション前の間取りを活かしながらも、天然石で床をデザインして物件にふさわしい高級感や解放感を演出している。

今回のような高級物件だと、ペルソナを設定するのが難しいのですが、感性がグローバルであり、世界で活躍する方が住まわれるであろうと想定しました。『廊下のベンチソファは、帰宅時にちょっと荷物を置いたり、ご夫婦で出かける際に旦那様が奥様の身支度を待つスペースとして』ダイニング横のカウンターは、来客時にウェルカムシャンパンを振る舞うウェイティングスペースや、ホームパーティーの際の談話スペースとして』など、部屋の一角ごとに細かなライフスタイルやシーンを設定しています。そうやってイメージを膨らませながら、心地よい暮らしが送れるような空間を随所で追求していきました。

玄関からリビングダイニングへのアプローチとなる広い廊下は、海外の高級物件を参考にしたもの。さまざまな使用シーンをイメージしたベンチソファや、壁のアートが空間のアクセントになっている。

――間取りについて意識したことは?

約260平米という物件の広さを活かし、玄関を境にPUBLICとPRIVATEの空間を分離して配置するPP分離という間取りを採用しました。

ゲストを招くなど人の目に触れる機会が多いリビングとダイニングは、パブリックスペースとして。ウォールナット材の床に淡いグレーの壁を組み合わせて、高級感がありながらもモダンでクールなイメージを演出しています。また、お手伝いさんがいらっしゃるケースも多いと思うので、来客時などゲストに気を遣わせることなくおもてなしができるよう、玄関から直接キッチンやランドリールームにアクセスできる裏導線も確保しました。

一方のプライベートスペースは、各部屋のドアを明るい色の木目調とし、カーペット敷きにすることでより安らげる雰囲気を演出しています。

左:ベッドのヘッドボード部分に「一番糸」と呼ばれる絹を使ったアクセントクロスを配した主寝室。やわらかい色調に統一することで、リラックスできる雰囲気に。/右:主寝室と隣室をつなぐウォークスルークローゼットは、たっぷりの収納力も魅力。


――「クレストコート砂土原」のこだわりについて教えてください。

ヴィンテージマンションのよさは無二のものなので、「クレストコート砂土原」ならではの個性を活かしてリノベーションしたことです。それと同時に、時代にふさわしい高級感というのも意識しました。グレード感のある佇まいを随所に感じさせながらも圧迫感がなく、住む方が居心地よく過ごせるような空間を追求しています。

この完成度の高さを実現できたのは、間取りの計画から、住宅設備を含めたインテリアデザイン、内装材のカラースキーム、家具のコーディネート、アートや小物を飾るところまでワンストップで手がけることができたからに他なりません。ドイツの巨匠建築家、「ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ」が残した “Less is more(神は細部に宿る)” という名言がありますが、ディティールまで考えて一貫してリノベーションしたことで、調和がとれた住み心地のよい空間を実現できたのだと思います。



いかがでしたか。

品格を備えた物件本来の個性を活かしながら、現代にふさわしいセンスやライフスタイルにあわせてアップデートすることで生まれ変わった「クレストコート砂土原」の一室。

次回は、本物件の各部屋の詳細や素材など、随所にわたるこだわりについてお届けします。

DATA

手塚 由美

リブラスタイル 代表取締役
二級建築士・インテリアコーディネーター
https://librastyle.com

株式会社リブラスタイル
リブラスタイルは、新築マンションや個人邸など主に住宅のインテリアデザインを手掛けています。
それぞれの住まいの魅力と暮らしのストーリーをコンセプトからディティールに至るまでデザインし、様々なスタイルのインテリアを創造します。多くの要素をバランス良く繊細にデザインすることで、暮らす喜びを感じる普遍的なインテリアを目指しています。

Text by Hitomi Miyao
Edit by Misaki Matsumoto
Photos by Mitsuo Yamamoto, Fumiko Nakayama
         

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